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「信じられない! あなた最高よ! 史上最強よ! 無敵よりも強いわ!」
しおりを挟む第四章 「大嫌い……嘘、大好き」~冒険者ギルドで混浴イベント(ポロリもあるかも)~
[自室]
俺は自堕落極まりない生活を送った。
「アルー。膝かして」
「またか? お前ってやつは、しょうがないな」
そう言いつつも、アルは嫌な顔一つせずに、俺に膝枕をしてくれた。
「ふああ。最強で無敵ってのもだんだん退屈になってきたなーそろそろ次のイベントがないかなー」
俺は校長を前校長に返して、ずっと家で妻たちとゴロゴロ遊んで暮らし始めた。最高に楽しい。今までの人生はなんだったんだ? あれはただのおまけだったんじゃないだろうか?
「アリシアー。俺にフルーツ食わしてー」
「またあ? しょうがないわね。はいあーん」
「あーん」
もぐもぐ。うっめぇ。口の中で果実の肉片が快音を立てながら千切れる。中から出てくる黄金色の果汁は、至福の味だ。人噛みするたびに、舌の上を忙しく転がる。味蕾に突き刺さる甘い味が、俺を楽しませてくれる……ことは正直どうでもいい。
女の子が食べさせてくれる。それがいいんだ。他の男どもは自分でフルーツを切って、自分で食べているのか? ぷーだっせー。俺は女の子にフルーツを切ってもらって、あーんしてもらえるんだ。俺の勝ちだ。うれしー。
そんなことを考えながら、だらだらだらだらしていると、
「おはよう!」
と、もえが俺の家に勝手に入ってきた。
「おはよー」
俺はだらけた返事を返した。
「あんたなんかに挨拶したんじゃないんだからねっ!」
「じゃ誰に言ったんだよ?」
「独り言よ!」
「なんだその独り言。というか何の用ー? 俺今、忙しいんだけどー?」
俺は思いっきりだらだらしながら言った。
「あんたなんかに用なんてないん――」
「わかったから。何の用だよ?」
「あんたに用があってきたんだからねっ! 今日は、あんたに冒険者ギルドに行ってもらうんだからね! 勘違いしないでよねっ!」
「冒険者ギルド? この国にあるの?」
「フンッ! なんで私がそんなことあんたに教えないといけないのよっ!」
「ああ! もう埒が明かないからそのツンデレキャラ休み! チート能力発動! 従順になあれっ!」
もえはキャラ崩壊を起こし、従順になった。
「ご主人様。何の御用でしょうか?」
もえは俺に跪き、首を深く垂れる。
「用があるのはもえのはずなんだけど、まあいいや。それで、この国に冒険者ギルドなんてものがあるの?」
「もちろんでございます。なぜならここは“なろうの世界”当然、どんな読者様にも満足いただけるような世界観になっております」
「あ、ほうなんら。んで、ほこでは何がへきるの?」
俺はリンゴをアリシアにあーんしてもらいながら喋る。うめー。
「冒険者ギルドでは、ギルドと呼ばれる同業者組合、つまりは仕事仲間を作ってもらいます。そして、この国にあるダンジョンに冒険に行ってもらいます。そこで、チート能力とレアアイテムをふんだんに使って、無双していただきます」
「お、おおう。結構具体的に言っちゃうんだな。よし!」
俺はアルの膝枕から顔面を離し、立ち上がった。
「ちょうど退屈していたし、今日は冒険者ギルドに行こう! そこでなろうっぽいことをする!」
「ご主人様、冒険者ギルドに行くときに注意点がいくつか――」
もえが何かいう前に、
「わかっている。わかっている。冒険者ギルドに行くと、チンピラ冒険者に絡まれるから速攻ぶっ倒すんだろ!」
「ええ。その通りです。そして、その後、助け――」
「助けた女の子が俺の力を見込んで、いきなり難関クエストに出発することになるんだろ? 常識だろ!」
「おっしゃる通りです。クエストを難なくクリアした後には――」
「全部わかっているって! みんなで温泉に行くイベントが待っているんだろ! その温泉は当然、混浴なんだろ?」
「全てご主人様のおっしゃる通りです。では、行ってら――」
「行ってきまーす」
[冒険者ギルド、“銀狼の牙”]
ギルドに入ると――
「何だ? てめえは? 俺はこのギルドで一番たちが悪い賞金稼ぎの――」
パコーン!
「おめえ、今何したかわかって――」
スパーン!
「あんたねー! いい気になるのも大概に――」
バゴーン!
俺は虐められていた女性冒険者を助けた。
「あの。ありがとうございます。とってもお強いんですね? それだけ強いのなら――」
「行きます!」
「えっ?」
「あなたのクエストに同行します」
「えっ? 私まだ何もいってな――」
「あなたは、シャーリーさん。スリーサイズは上から百二十、六十、百十。趣味は家庭菜園。将来の夢は、素敵なお嫁さんになること。彼氏はいたことがない。片思いもしたことがない。清廉潔白。可憐で華奢。
このギルドではお人好しで、有名。そして、あなたは先日、断りきれずに、クエスト“無敵の抹殺卿討伐(クリア不可能)”別名処刑クエストを引き受けた。
そして、自分一人ではどうすることもできずに困っていたところに俺が現れた。違いますか?」
「い、いいえ! 違いません! でもなん――」
「なんでそんなことがわかるか? それは俺がチート能力を使ったからですよ!」
「だからか! なら納得で――」
「じゃ、今から冒険者ギルドに登録してくるよ。才能がギルドカードにステータス表示されて、歴史上初の最初から全ステ完全マックスを披露して、沸かせてくるから、ちょっと待っていてよ!」
「わか――」
俺は早足でギルドカードの登録をしに行った。
建物が揺れるほど、会場が沸いた。
「す、すごい! こんなにすごいステータス(すごい)を始めてみましたわ! すごいですわ(羨望の眼差しで)!」
「ええっ! 私五千六百年間、ここで受付をやっていますけど、こんなに強い人初めてみました(渇望の眼差しで)!」
「信じられない! あなた最高よ! 史上最強よ! 無敵よりも強いわ!」
「わしも信じられん! こんなことがあってたまるか!」
周囲のモブたちが俺を囃し立てる。気分が良すぎる。っていうか最後じじいいなかったか? 気のせいだよな。
「登録は済んだみたいですね。ケン様のおっしゃった通り、みんな驚いていましたね。じゃあ早速抹殺卿を倒しに行きま――」
「もう倒したよ!」
俺はシャーリーに言い放った。
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