134 / 260
竜王の指パッチン〜パッちん!〜
しおりを挟む
俺たちはガクつく足を気合いで動かす。動悸と目眩が頭を揺らす。口から心臓と肺が飛び出そうだ。竜王は間違いなく俺が戦った相手の中で最も強い。もしかしたらこの大陸で一番強いのかもしれない。
俺は水分を固めた剣を構える。アルは絵の剣を構える。アリシアも炎の剣を構える。
竜王は小さい右手を俺に向ける。
「ここにちゅーーもーーく!」
「何かする気だ! 気を抜くなよ!」
俺たちは攻撃に備える。どこからどんな攻撃が来てもガードしてやる。
竜王は、爬虫類の瞳で俺を見る。彼女の瞳は、冷静に獲物を捕らえている。その瞳に映るのは恐怖で震えているこの俺だ。
竜王は右手の甲を俺に見せてきた。
「あたちの右手をよーく見ろよ!」
何だ? 何の構えだ? 何をする気だ?
竜王は、
「行くよ!」
と可愛らしい声で言った。俺は全身に警戒を貼り付けて、竜王の右手の甲を見た。何の変哲も無い普通の右手の甲だ。
「今から、お前たちを殺す! せーのっ! さんはいっ!」
そして、竜王は力を込めて指パッチンをした。
パッチン!
【乾いた音が沈黙を引き裂く。その瞬間、俺は空に向かって吸い込まれ始めた。
(何だこれ? どうなっている? 何が起きた?)
俺の体がないのだ。魂だけになって空にゆっくりと浮遊していく。ふわふわと魂が天に昇っていく。
そんな映像が頭の中に浮かんだ。俺はこの映像が何なのかわかる。これはパワーワード予知。数ある未来の中から最も起こってほしくないものを見せてくれる。
ということは、今、実際に魂だけになって空を飛んでいるわけではないのだ。
俺は、もう一度映像をよく確かめる。俺の魂はヘリウムでパンパンになった風船のようだ。風に揺られながら空を泳ぐ。下を見ると、俺たちがさっきいた場所には、黒いシミができていた。
(何だあれ?)
間違いなく俺たちがいた箇所の地面に三つの汚らしいシミがある。俺はそのシミをもっとよく見た。
(あれ。俺の体か?)
地面にぶちまけられている汚れは、俺の体の残骸だった。
俺は水分を固めた剣を構える。アルは絵の剣を構える。アリシアも炎の剣を構える。
竜王は小さい右手を俺に向ける。
「ここにちゅーーもーーく!」
「何かする気だ! 気を抜くなよ!」
俺たちは攻撃に備える。どこからどんな攻撃が来てもガードしてやる。
竜王は、爬虫類の瞳で俺を見る。彼女の瞳は、冷静に獲物を捕らえている。その瞳に映るのは恐怖で震えているこの俺だ。
竜王は右手の甲を俺に見せてきた。
「あたちの右手をよーく見ろよ!」
何だ? 何の構えだ? 何をする気だ?
竜王は、
「行くよ!」
と可愛らしい声で言った。俺は全身に警戒を貼り付けて、竜王の右手の甲を見た。何の変哲も無い普通の右手の甲だ。
「今から、お前たちを殺す! せーのっ! さんはいっ!」
そして、竜王は力を込めて指パッチンをした。
パッチン!
【乾いた音が沈黙を引き裂く。その瞬間、俺は空に向かって吸い込まれ始めた。
(何だこれ? どうなっている? 何が起きた?)
俺の体がないのだ。魂だけになって空にゆっくりと浮遊していく。ふわふわと魂が天に昇っていく。
そんな映像が頭の中に浮かんだ。俺はこの映像が何なのかわかる。これはパワーワード予知。数ある未来の中から最も起こってほしくないものを見せてくれる。
ということは、今、実際に魂だけになって空を飛んでいるわけではないのだ。
俺は、もう一度映像をよく確かめる。俺の魂はヘリウムでパンパンになった風船のようだ。風に揺られながら空を泳ぐ。下を見ると、俺たちがさっきいた場所には、黒いシミができていた。
(何だあれ?)
間違いなく俺たちがいた箇所の地面に三つの汚らしいシミがある。俺はそのシミをもっとよく見た。
(あれ。俺の体か?)
地面にぶちまけられている汚れは、俺の体の残骸だった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「話が違う!!」
思わず叫んだオレはがくりと膝をついた。頭を抱えて呻く姿に、周囲はドン引きだ。
「確かに! 確かに『魔法』は使える。でもオレが望んだのと全っ然! 違うじゃないか!!」
全力で世界を否定する異世界人に、誰も口を挟めなかった。
異世界転移―――魔法が使え、皇帝や貴族、魔物、獣人もいる中世ヨーロッパ風の世界。簡易説明とカミサマ曰くのチート能力『魔法』『転生先基準の美形』を授かったオレの新たな人生が始まる!
と思ったが、違う! 説明と違う!!! オレが知ってるファンタジーな世界じゃない!?
放り込まれた戦場を絶叫しながら駆け抜けること数十回。
あれ? この話は詐欺じゃないのか? 絶対にオレ、騙されたよな?
これは、間違った意味で想像を超える『ファンタジーな魔法世界』を生き抜く青年の成長物語―――ではなく、苦労しながら足掻く青年の哀れな戦場記録である。
【注意事項】BLっぽい表現が一部ありますが、BLではありません
(ネタバレになるので詳細は伏せます)
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2019年7月 ※エブリスタ「特集 最強無敵の主人公~どんな逆境もイージーモード!~」掲載
2020年6月 ※ノベルアップ+ 第2回小説大賞「異世界ファンタジー」二次選考通過作品(24作品)
2021年5月 ※ノベルバ 第1回ノベルバノベル登竜門コンテスト、最終選考掲載作品
2021年9月 9/26完結、エブリスタ、ファンタジー4位
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!
異世界日本軍と手を組んでアメリカ相手に奇跡の勝利❕
naosi
歴史・時代
大日本帝国海軍のほぼすべての戦力を出撃させ、挑んだレイテ沖海戦、それは日本最後の空母機動部隊を囮にアメリカ軍の輸送部隊を攻撃するというものだった。この海戦で主力艦艇のほぼすべてを失った。これにより、日本軍首脳部は本土決戦へと移っていく。日本艦隊を敗北させたアメリカ軍は本土攻撃の中継地点の為に硫黄島を攻略を開始した。しかし、アメリカ海兵隊が上陸を始めた時、支援と輸送船を護衛していたアメリカ第五艦隊が攻撃を受けった。それをしたのは、アメリカ軍が沈めたはずの艦艇ばかりの日本の連合艦隊だった。
この作品は個人的に日本がアメリカ軍に負けなかったらどうなっていたか、はたまた、別の世界から来た日本が敗北寸前の日本を救うと言う架空の戦記です。
いずれ最強の錬金術師?
小狐丸
ファンタジー
テンプレのごとく勇者召喚に巻き込まれたアラフォーサラリーマン入間 巧。何の因果か、女神様に勇者とは別口で異世界へと送られる事になる。
女神様の過保護なサポートで若返り、外見も日本人とはかけ離れたイケメンとなって異世界へと降り立つ。
けれど男の希望は生産職を営みながらのスローライフ。それを許さない女神特性の身体と能力。
はたして巧は異世界で平穏な生活を送れるのか。
**************
本編終了しました。
只今、暇つぶしに蛇足をツラツラ書き殴っています。
お暇でしたらどうぞ。
書籍版一巻〜七巻発売中です。
コミック版一巻〜二巻発売中です。
よろしくお願いします。
**************
転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~
HIROTOYUKI
ファンタジー
目覚めたら前世で姉に無理やりやらされていた乙女ゲームの世界だった!これは異世界転生っていうやつ?なんと気づけば俺は姉に全クリさせられた乙女ゲームのキャラに転生していた。それも、身分だけはピカイチの通称チュートリアル殿下に⁉必ず攻略されセカンドではキープ君扱い、さらにどんなエンドでも絶対振られて辺境に!(バッドエンドはその地で変死)巻き込まれて不幸になる悪役令嬢。それよりも何よりもあんな尻軽な聖女?にキープされ捨てられる、そんな人生絶対嫌だ‼
乙女ゲーム初心者のためというコンセプトのもと制作された乙女ゲーム。攻略対象はただ一人。基本操作(チュートリアル)を習得するためだけに、ベタ中のベタを体験するためだけに存在する、王道俺様王子。そんな王太子殿下に転生してしまった、前世はごく普通、だけど乙女ゲームの達人(不本意)だった男子高校生が、知ってた王子と随分と違う今の自分に戸惑いながらも、神とも言える強制力から逸脱するため、いろんなものを流しながら頑張る、5歳児から始まる物語。 ※話の視線はタイトル名の人物です
(感想についてはネタバレも含まれます)
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
勇者をかばって死ぬ当て馬キャラだったけど、物語の進みがおかしい
エイ
ファンタジー
俺はどうやら風邪をこじらせて死んだらしい。と思ったら不思議な声の人に『神様のお手伝いをしてくれない?』と勧誘された! まあいいかと軽い気持ちで引き受けたら、俺は異世界に赤子として転生していた。
だが神様のお手伝いってのが、神様の作った脚本による『勇者を庇って死ぬ役』をやってくれというとんでもないものだった!
勇者の真の力を解放するための大切なイベント?
その後のハーレムエンドに至るために必要? 知るかそんなもん。
ヤダヤダそんな当て馬になって死ぬなんてお断りだー! ……と思っていたけど、結局勇者を庇って俺は死んでしまった。しょうがない、あいつは親友だしな。
不本意だったけど、神様の脚本どおりに俺が死んだおかげで世界は平和になり、めでたしめでたし……となるわけだ。
まあそんなわけで、死んでしまった俺だけど、ご褒美に大家族の幸せな家の子に生まれ変わらせてくれることになった。よーし、今度の人生は可愛い嫁さんもらって子だくさんの家族を作るぞー! と思っていたけれど……あれ??? 俺女の子……?
※以前、別サイトで公開していたお話を修正した作品になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる