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竜王の指パッチン〜パッちん!〜

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俺たちはガクつく足を気合いで動かす。動悸と目眩が頭を揺らす。口から心臓と肺が飛び出そうだ。竜王は間違いなく俺が戦った相手の中で最も強い。もしかしたらこの大陸で一番強いのかもしれない。

俺は水分を固めた剣を構える。アルは絵の剣を構える。アリシアも炎の剣を構える。

竜王は小さい右手を俺に向ける。
「ここにちゅーーもーーく!」

「何かする気だ! 気を抜くなよ!」
俺たちは攻撃に備える。どこからどんな攻撃が来てもガードしてやる。

竜王は、爬虫類の瞳で俺を見る。彼女の瞳は、冷静に獲物を捕らえている。その瞳に映るのは恐怖で震えているこの俺だ。

竜王は右手の甲を俺に見せてきた。
「あたちの右手をよーく見ろよ!」
何だ? 何の構えだ? 何をする気だ?

竜王は、
「行くよ!」
と可愛らしい声で言った。俺は全身に警戒を貼り付けて、竜王の右手の甲を見た。何の変哲も無い普通の右手の甲だ。
「今から、お前たちを殺す! せーのっ! さんはいっ!」

そして、竜王は力を込めて指パッチンをした。


パッチン!



【乾いた音が沈黙を引き裂く。その瞬間、俺は空に向かって吸い込まれ始めた。
(何だこれ? どうなっている? 何が起きた?)
俺の体がないのだ。魂だけになって空にゆっくりと浮遊していく。ふわふわと魂が天に昇っていく。

そんな映像が頭の中に浮かんだ。俺はこの映像が何なのかわかる。これはパワーワード予知。数ある未来の中から最も起こってほしくないものを見せてくれる。

ということは、今、実際に魂だけになって空を飛んでいるわけではないのだ。

俺は、もう一度映像をよく確かめる。俺の魂はヘリウムでパンパンになった風船のようだ。風に揺られながら空を泳ぐ。下を見ると、俺たちがさっきいた場所には、黒いシミができていた。

(何だあれ?)
間違いなく俺たちがいた箇所の地面に三つの汚らしいシミがある。俺はそのシミをもっとよく見た。

(あれ。俺の体か?)

地面にぶちまけられている汚れは、俺の体の残骸だった。
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