ショタっ娘のいる生活

松剣楼(マッケンロー)

文字の大きさ
上 下
842 / 848

62.お魚さん尽くし(4)

しおりを挟む
 今日、届けられた弁当のおかずには、カニかまのフライが二つ入っていた。「カニかま」と言うくらいだから、もちろんカニのむき身ではなく、練り物の一種である。

 一般的なカニかまは、スケトウダラのような白身魚を〝すり身〟にして、カニのエキスと各種調味料、紅色着色料、その他諸々で作った加工品である。お手頃価格で見た目や風味を再現しようと頑張る、企業の努力には頭の下がる思いだ。

 いかに子供とは言え、ミオだって本物のカニを衣に包んで揚げたとは思っていないようだが、箸を使って器用に身を割いては、カニかまの再現性を楽しんでいる。

「カニかまおいしいねー、お兄ちゃん!」

「うん、おいしい。揚げたてだからか、衣もウマイじゃん」

「そだね。ボク、アジフライが好きだから、色んなお魚さんのフライを食べられて、幸せだよぉー」

 そう言って、ニコニコしながらカニかまのフライを頬張っているミオを見ていると、微笑ましい反面、ある意味気の毒にも思えてくる。

 なぜならこの子は、生まれてこのかた、タラバガニや伊勢エビといった、高級な甲殻類を食べる機会に恵まれなかったからだ。

 これは体質が云々という問題ではなく、ミオが保護されていた児童養護施設側の提案と計上した予算が、ことごとく認められなかったものによるらしい。そりゃ確かに高級食材だけどさぁ、年に一度くらいは許可してあげても、というのは部外者による身勝手な意見なのだろうか。

 ……まぁ。今のミオは俺の保護下にある里子ちゃんだし、何より将来を約束した恋人なんだから、俺が食べさせてあげればいいだけの話さ。越前ガニだろうがクルマエビだろうが、イトヨリダイだろうが――おっと危ない!

 そうそう、いよいよ明日に迫った外食デートの予定を、今のうちに話し合っておかなくちゃ。

「なぁミオ。明日行くデートの話だけどさ」

「うんうん。イトヨリダイのご飯を食べに連れてってくれる、デートのことだよね」

「そ。で、実はさ、お店の候補が結構あるんだよ。朝なら刺し身か煮付けの定食、昼ならムニエルかフライって感じで、各々お店が分かれててね。ミオならどれを食べたい?」

「へぇー、そんなにいっぱいあるんだ! 白ご飯と一緒に、煮付けを乗っけて食べるのおいしそうー」

 ミオはお弁当を食べ進めつつ、時折目をつむっては、箸を止めて考え事をし始めた。どうやら、煮付けにしたイトヨリダイのオン・ザ・ライスに思いを馳せているらしい。

 甘辛く煮たホクホクの白身を、これまたホクホクの白飯に乗せて食うんだから、そりゃオイシイに決まってる。煮汁が染み込んだ白飯は、それ単体でも箸が進むだろうし。

「でも、イトヨリダイの朝ご飯って、何時くらいからお店に行けばいいの?」

「え? そうだなぁ。俺が聞いた話だと、開店は早朝の四時らしいから、いつも朝ご飯を食べる時間までに、煮付け定食が残っていれば……」

 って、あんまり悠長にしてちゃダメなのかな? 敏腕秘書の京堂さんがオススメしてくれた人気店だから、早々に売り切れちまうリスクを考えないといけないような気がする。

 さりとて開店直後に食べに行くとしても、ここからお店までは、クルマで約三十分かかる。となると、最低でも明朝三時には起きて、タクシーを拾わなきゃ間に合わないのか。あんまり現実的じゃないなぁ。

 さすがに三時起きじゃあ、まだまだミオもおねむだろうし。どうしたものかな。
しおりを挟む
作者名:松剣楼(マッケンロー)
作者Twitter:@mackenlaw
お話が気に入ったら❤をポチッとお願いします(*´ー`*人)
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

処理中です...