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46.花火で遊ぼう!(8)

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「遊び方を間違えなきゃ、楽しいおもちゃではあるんだけどな。ピーッて音を立てながら、さながらロケットのごとく派手に飛んでいくのは、見ていて楽しいからね」

「お祖父ちゃんが子供のころは、一升瓶を寝かせて、その中へ飛ぶように花火を置いて遊んだもんなんだが、よく考えるとまともな楽しみ方じゃないよな」

「え。お祖父ちゃんが子供の時からロケット花火があったの? すごく長生きさんだねー」

 というミオの反応を見るに、どちらかと言うと、この子はロケット花火を遊ぶことよりも、その歴史の方へ興味が移ったようだ。

「歴史をさかのぼると、埼玉県のどこかで、四百年くらい前から特大のロケット花火を打ち上げる祭りが催されているらしいんだが、はて、どこだったかなぁ」

「親父、それって狼煙のろしの事じゃないか?」

「ノロシ?」

 聞いたことのないフレーズが次々と出てきて、ミオの頭の中でぐるぐる回っているようだ。

 幼い子でも理解できるよう、いつものように噛み砕いて説明してあげれば、また、ミオの知的探究心を満たすことができるかも知れない。

「そう。いくさ……要するに、日本国内での戦争をやっていた時代なんだけど、伝令とか合図のために打ち上げられていた花火らしきものが、狼煙って呼ばれていたんだよ」

「それがおもちゃのロケット花火になったの?」

「うーん、どうだろ? さっき親父が言ってた、どでかいロケット花火を打つ祭りの元になった可能性はあるけど、おもちゃにまで発展したかどうかは……」

「ミオくんが一番知りたいのはそこなんだろうが、昔の、殊更ことさら大衆的な玩具については、文献に残さない事がままあるからなぁ」

 はるか昔の出来事に思いを馳せ、俺と親父が横並びで、視線を斜め上に向けながら顎をさすっていると、ミオがクスクスと笑い出した。

「あはは、お兄ちゃんとお祖父ちゃん、同じ動きしてるー」

「え!? あ、ついつい考え込む時のクセが出ちまった」

「義弘、お前、そういうところまでおれに似てしまったのか。やっぱり血は争えないな」

「『チワワ添えない』って何? ワンちゃんの事?」

 無理もない話なんだが、ミオが聞き慣れない言葉を耳にすると、大体はこういう空耳に変換されてくるから面白い。

 チワワといいゴールデン・レトリバーの時といい、予測の外から飛び出してくる、ミオの空耳や覚え間違いのセンスは、一般人に比べて図抜けているような気がするんだよな。
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