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21.魚釣りと温泉(7)
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「……ん! これはうまいぞ?」
「え、ほんと?」
「うん。好みが分かれるかも知れないけど、かぼすがいいアクセントになっててうまい」
もし普通の塩焼きのままだったら、たぶん皮と内臓があった部分の臭いが少しは残っていたかも知れない。
でもかぼすのおかげで、その臭いもすっかりと消えていて、今じゃ爽やかな香りがする。
そして、塩とかぼすの果汁がまたよく合う!
少しパサつく白身にしっかりと塩味が付いているのだが、その塩味を若干中和してくれるのが果汁の持つ甘みと酸味で、これがよくマッチしていてなかなかうまい。
一見ベタ褒めしているように見えるかも知れないが、ここまでしてようやく食べられるようになった、という解釈もできる。
管理施設の従業員さんに毒のあるヒレを全部取ってもらい、おまけに神経締めと内臓の処理までもやってもらった。
さらに厨房の調理人さんが、ぬめりと臭みのある皮や内臓のあった場所を綺麗に洗い、塩を振って臭み消しをしてくれたからこうして食べられるのであって、まず自分じゃここまでして食おうとは思わないだろう。
そういう意味では、今回の〝アイゴの塩焼き、かぼす添え〟を食べられた経験は、今後の人生においていい話のタネになるかも知れない。
またとない機会なので、さっきの感想でアイゴに興味を持ったミオにも食べさせてみる事にした。
「どう?」
「あっ。パサってしてるけど、かぼすのおかげかなぁ。さっぱりしてておいしいよ」
「だろ? さすがにイワシほどうまくはないけど、こんだけ臭みがなくて爽やかな味になるんだもんな。やっぱりかぼすの力は偉大なんだね」
「うんうん」
アイゴの塩焼きをおいしいと言って食べたミオは、そのお返しにと、自分が釣った良型イワシの塩焼きを食べさせてくれた。
やっぱりイワシは間違いない。このくらいの大きさになると脂の乗りが違うな。
箸で取り分けたイワシの身に、アイゴに添えられていたかぼすをちょっとだけ搾ってみると、脂のこってり具合が酸味のおかげでマイルドになり、また違う食味が楽しめる。
いやー、うまかった。やった事は普通の堤防釣りではあるが、これも立派なアクティビティだし、何より、観光地で地のものを食べた気分はやはり格別なのだ。
「ごちそうさまでした!」
イワシを食べ終わり、小腹を満たしたミオが、笑顔で手を合わせる。
さすがはお魚大好き子猫ちゃんだ、そこそこ大きなサイズだったにもかかわらず、しっかり骨だけ残してペロリといっちゃうんだもんな。
「じゃ、ホテルに帰ろっか」
「うん。お兄ちゃんと一緒に温泉に入るー」
ミオはもう、俺と温泉に浸かるのが楽しみで仕方ないのか、ものすごくウキウキしている。
魚の下処理から釣り道具の片付けまで全部やってくれた、管理施設の従業員さんと厨房の調理人さんにお礼を言い、俺たちはホテルの客室に戻った。
時刻は夜の七時を少し回ったくらいで、日没して明かりを失った空は、まばたく星が見えるほどに暗くなってきている。
俺たちはベッドに置かれていたルームウェアへと着替え、バスタオルや汗をかいた服などをバッグに詰め込み、温泉へと向かった。
「え、ほんと?」
「うん。好みが分かれるかも知れないけど、かぼすがいいアクセントになっててうまい」
もし普通の塩焼きのままだったら、たぶん皮と内臓があった部分の臭いが少しは残っていたかも知れない。
でもかぼすのおかげで、その臭いもすっかりと消えていて、今じゃ爽やかな香りがする。
そして、塩とかぼすの果汁がまたよく合う!
少しパサつく白身にしっかりと塩味が付いているのだが、その塩味を若干中和してくれるのが果汁の持つ甘みと酸味で、これがよくマッチしていてなかなかうまい。
一見ベタ褒めしているように見えるかも知れないが、ここまでしてようやく食べられるようになった、という解釈もできる。
管理施設の従業員さんに毒のあるヒレを全部取ってもらい、おまけに神経締めと内臓の処理までもやってもらった。
さらに厨房の調理人さんが、ぬめりと臭みのある皮や内臓のあった場所を綺麗に洗い、塩を振って臭み消しをしてくれたからこうして食べられるのであって、まず自分じゃここまでして食おうとは思わないだろう。
そういう意味では、今回の〝アイゴの塩焼き、かぼす添え〟を食べられた経験は、今後の人生においていい話のタネになるかも知れない。
またとない機会なので、さっきの感想でアイゴに興味を持ったミオにも食べさせてみる事にした。
「どう?」
「あっ。パサってしてるけど、かぼすのおかげかなぁ。さっぱりしてておいしいよ」
「だろ? さすがにイワシほどうまくはないけど、こんだけ臭みがなくて爽やかな味になるんだもんな。やっぱりかぼすの力は偉大なんだね」
「うんうん」
アイゴの塩焼きをおいしいと言って食べたミオは、そのお返しにと、自分が釣った良型イワシの塩焼きを食べさせてくれた。
やっぱりイワシは間違いない。このくらいの大きさになると脂の乗りが違うな。
箸で取り分けたイワシの身に、アイゴに添えられていたかぼすをちょっとだけ搾ってみると、脂のこってり具合が酸味のおかげでマイルドになり、また違う食味が楽しめる。
いやー、うまかった。やった事は普通の堤防釣りではあるが、これも立派なアクティビティだし、何より、観光地で地のものを食べた気分はやはり格別なのだ。
「ごちそうさまでした!」
イワシを食べ終わり、小腹を満たしたミオが、笑顔で手を合わせる。
さすがはお魚大好き子猫ちゃんだ、そこそこ大きなサイズだったにもかかわらず、しっかり骨だけ残してペロリといっちゃうんだもんな。
「じゃ、ホテルに帰ろっか」
「うん。お兄ちゃんと一緒に温泉に入るー」
ミオはもう、俺と温泉に浸かるのが楽しみで仕方ないのか、ものすごくウキウキしている。
魚の下処理から釣り道具の片付けまで全部やってくれた、管理施設の従業員さんと厨房の調理人さんにお礼を言い、俺たちはホテルの客室に戻った。
時刻は夜の七時を少し回ったくらいで、日没して明かりを失った空は、まばたく星が見えるほどに暗くなってきている。
俺たちはベッドに置かれていたルームウェアへと着替え、バスタオルや汗をかいた服などをバッグに詰め込み、温泉へと向かった。
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