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ご褒美

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「あ、あぁ……ッ!」
 念入りに身体を現れ、全身を弄られたあと、ガーネットはジルフォードに抱きかかえられるようにして粗末な寝台へと横たえられ、再び身体を弄られていた。
「ぃや……っ」
「何を待てというんだ。これ以上お預けは御免だぞ」
 これから訪れるであろう、情事の予定を聞かされ、ガーネットは目を剥いた。
「なっ……! するんですか!?」
「しない、という選択肢があるのか?」
「だって、まだ外では……!」
 多くの同胞や王国軍の人間たちによって事後処理が行われているはずだ。
「俺たちはステラ誘拐を阻止した功労者だ。もう仕事はこのくらいで良いだろう」
 騎士長であり王太子であるジルフォードが言うのであればそうなのだろうが、ガーネットは非難の瞳を向け続けた。
「そうだったとしても、こんな不謹慎な……!」
「狂気的なまでに怒り狂ってあの男に斬りかかろうとした婚約者を宥めるのは、俺の役目だろう」
 あのときのガーネットは常軌を逸していた。
 銀色の髪は逆立ち、ただでさえ怯えていた招待客たちは身を竦ませ、初めて見たお気に入りの女騎士の狂乱にステラは固まってしまっていたのだ。
 ジルフォードに抱えられるようにして連れ出されたとき、ホール中からホッと安堵の吐息が零れ聞こえたことに、ガーネットは気づいていないだろう。
「あ、あれは……、記憶が一気に蘇って、それで……、きゃぅん!」
 言い訳じみたことをいう婚約者の胸の粒をギュッ、と摘まみ上げると、甘い声が零れ落ちた。
 その瞬間、ぐちゅん、と彼女の蜜壺が快楽を拾って蜜を溢れさせる。
「お前は本当に濡れやすい……」
 艶を帯びた熱い吐息で恥ずかしがるガーネットの耳元でそう囁いたジルフォードは、蜜を溢れさせる場所を指で触れるか触れないかという、曖昧な触れ方をして更に煽った。
「あ……ぁ……」
 確実な刺激が欲しくて細腰が揺れるが、ジルフォードはそれに気づかないフリをして肉付きのいい太ももを撫でた。
「や……、なん、で……」
「嫌なのだろう?」
「っ……!」
 きゅっ、と下唇を噛みしめた彼女のその唇は、怒り狂ったときに切れたままだ。やっと血が止まっていたのに、じんわりと血が滲んでいる。
「それに、また自分で傷をつけたな。ガーネット」
 その唇に舌を這わせると、鉄の味がした。
 だがそれすらも甘く感じる。
 腕の中でぷるぷると愛らしく震える様に、ジルフォードが満足していると、ガーネットが手を伸ばして、形を変え始めている彼のモノを掴んだ。
 拙い手付きで、彼女がそこを上下させる。
「くっ……」
 小さく声を上げてしまったジルフォードに、ガーネットの頬が赤く染まっていく。じっと見上げてくる紅い瞳は艶っぽく、わずかに涙で潤んでいる。
「もう……、欲しい……」
 強弱をつけて熱棒を手のひらで擦れば、そこは徐々にその形を変えていった。
「……不謹慎なんじゃないのか?」
「ジル……が、悪い……」
 挿れて、とせがむガーネットに、ジルフォードの我慢は限界だった。
 ジルフォードの下から這い置き、ガーネットは自分の性器に彼のモノを押し当て、腕を伸ばして抱き着く。
「――もっと、慣らさなくても大丈夫なのか」
「……ん」
「痛いかもしれないぞ」
「いいの……」
 痛くしてほしい、と、か細い声がジルフォードの鼓膜を犯していく。
 その願いを叶えるべく、ジルフォードは甘く濡れた蜜壺の入り口を抉るようにして押し開いていく。
 深く浅く、すっかり快楽を覚えさせた内壁を牡の笠で激しく擦ると、びくん、とガーネットの肩が震えた。
「あぁあああ!」
 ぷしゃっ、と彼女と繋がった場所から透明の飛沫が迸る。
「潮を吹いたか。お前が潮吹きをしたのは、これが初めてだな」
 ジルフォード自身で感じさせ、絶頂を迎えさせたことは度々ある。だが今日はそれ以上のものが見られた。
 それほどまでに、ガーネットの気持ちも身体も高揚していたのだろう。
 それに気をよくし、今度は彼女の奥を一気に貫いた。
「ああああぁぁぁぁぁっ!」
 悲鳴にも似た嬌声が、ガーネットの唇から零れ、背がのけ反る。
「……さすがに、キツイ」
 ギュウギュウと伸縮して押し返そうとする力に、ジルフォードの息も詰まった。
 何度も抱いているのに、そこはいつまでも処女のようだ。
 最初より遙かに濡れやすくはなったが、ここは慣らさないと固く閉ざされていて、いつも以上にジルフォードを締め付けてくる。
「はぁ……、あ……」
 息を吐いて力を抜こうとするガーネットの背を撫で、自分たちの間で潰れていた豊満な胸を片手で揉みしだく。
「もっと力を抜け。ガーネット」
 このまま動いたら彼女を傷つけてしまう。
 ぷっくりと熟れた唇も奪って、ガーネットの意識をそちらへと移させる。
「ん、ふぅ……」
 ガーネットは深いキスが好きだ。
 こうしただけで、すでにガーネットの身体は蕩けかけているほどに。
 蜜壺の締め付けが徐々に弱まり、そこでやっと、ジルフォードはその痩躯を下から突き上げた。
「あぁん!」
 甘い嬌声が上がる。
 痛くしてほしい、とは言われたが、本当にそうしてやるつもりはなく、ジルフォードは緩くゆっくり腰を揺らした。
「あ……、あぁ……」
 キスの合間に、甘い声が上がる。
 上からも下からも、淫猥な水音がして、二人の鼓膜を犯していく。
 ガーネットの体重を借りて、その中にジルフォードのものが呑み込まれていき、今までで一番深く繋がった。
 子供を抱っこしているような体勢になっていることに、彼女はまだ気づいていない。
「あぁぁ……!」
 彼女の腕程の太さのものが、そこを押し開いて根本まで呑み込んでいる。一番奥の、彼女が最も喜ぶ入り口をコンコン、とついてやると、ガーネットは全身で歓んだ。
「あ、あぁ! 奥……、挿って……」
 今まで届かなかった場所が暴かれ、強靭な牡の切っ先の笠が出ようとする度に内壁で引っかかる。そんな新たな感覚に、ジルフォードの息も上がっていく。
「お前の子袋に、このまま直接注ごうか」
 初めてそこに到達したとき、あのときは入り口をこじ開けただけで、ここまで深くは挿らなかった。
「あ、あぁ……っ!」
 ガーネットは何を尋ねられているのか、もうわからないのだろう。
 それでもうんうんと頷き、もっと欲しいと首筋に噛みついてくる。
 チリッとした痛みにジルフォードは奥歯を噛みしめ、そして激しくガーネットを揺さぶった。
「あぁぁ! あぁあ!」
 ゴリゴリと内壁を擦られ、身体の奥の入り口を出ては挿ってくる。
 ガーネットは長い足をジルフォードの腰に巻き付け、足の指をギュッと丸めてその律動に、堕とされそうなまでの快楽にその身すべてを捧げた。
「あぁっ!」
「くっ」
 ふたりの声が重なり、同時に絶頂を迎える。
「あ、熱い……、中……」
 大量の子種が注がれる感覚に、目の前がチカチカと光る。ガーネットの身体を上下させて、一滴も残さないよう中へと注ぎ込んだ。
 抱き上げていた身体を寝台に横たえ、ジルフォードを見上げる形で寝かされたガーネットは、身体の横で折られた彼の膝に手を這わせる。
「……あ……ここ……」
「どうした?」
 ふっ、と微笑む雄の顔をしたジルフォードが、徐々に重なってくる。
 その重みを全身で受け止めたガーネットは、しばらく彼の下でその愛おしい身体を抱きしめた。
「ここ、壁が、薄い、から……。あま……り、激しい、ことは……」
「どうせ誰もいない。それに、あんなに啼いておきながら、今更だろ」
 騎士の宿舎とはいえ、あまり防音設備は整っていない。
 隣の物音も、夜になれば聞こえてくるくらい、壁は薄かった。
 今は全員出払っているとはいえ、住人がいつ戻ってくるとも知れない。
 そう口にすると、ジルフォードは意地悪く笑った。
「声を我慢すればいい」
「む、無理……、きゃん!」
 ギシッ、と寝台が鳴り、ジルフォードがまた突き上げてくる。
「ほら、誰かに聞かれてしまうぞ」
 ギシギシ、と寝台が悲鳴を上げる。
 声が漏れないように自分の手の親指の付け根を噛んだのに、ジルフォードはそれを良しとはしなかった。
 半ば無理矢理、手を退けさせられ、代わりにジルフォードの指が歯列を割って入ってくる。
「な、んん! やぁ!」
「俺の指でも噛んでいろ」
 王族の身に傷はつけられない。
 そう目で訴えると、ジルフォードは顔を近づけてきて、額に口づけを落とした。
「お前のその身体にお前であっても傷を作ることは許さないと言っただろう。それに、お前の身体も、もうすぐ王族のものとなる」
「でも……」
「噛むなら俺にしておけ」
 そうはいっても、快楽に堕とされてしまえば力加減などできるはずもない。噛みちぎってしまうのでは、という不安に瞳を潤ませるガーネットに、ジルフォードは小さく笑った。
「なら、指ではなく肩にしておくか? 別に食いちぎられたところでどうということもない」
 それに、とジルフォードは甘く囁いた。
「お前につけられた傷なら、これ以上の褒美はないだろうな」
「…………」
 本気で言っているのか。
 常軌を逸しているのでは、とガーネットは目を見開いた。
 だが同時に、似た者同士なんだな、と内心納得した。
 ガーネットも、彼に負わされる傷ならば名誉だし、嬉しいと思う。
 この身に刻まれた彼の刻印が身体に残れば、どんなに遠く離れていても自身は彼のモノだと安心できるし、胸を張ることができる、と。
 ――でも……
「だめ……。声、我慢、するから……」
 愛しい人が痛い思いをするのは嫌だ。
 そんなもの、自分だけでいい。
 どんなにジルフォードが望んだとしても、今はまだ、王太子と騎士、上司と部下の関係だ。
 そんな不敬はできない、と思ってしまうのは、ガーネットが根っからの騎士だからなのだろう。
 騎士は主を護り、上官の命令に従って動くものだ。
 その上官に「俺を傷つけろ」と命じられたとしても、騎士にはひとりひとり、自分で考えて判断をし、主や上官の身に危険が迫ったときそれを拒否できる権限が与えられている。
 かつてこの世界は戦乱の時代だった。
 そのときに一介の騎士が、その身を犠牲にして守り抜いた、命の徒花を散らせていた時代の、旧く忘れ去られようとしている精神の一つだ。
「だから……」
 チュッ、とジルフォードの指に吸いついて、上目遣いで潤んだ瞳を向ける。
「優しく、して……?」
 まっすぐにガーネットを見下ろしていたジルフォードは、やれやれ、と苦笑いを浮かべた。
「痛くしろと言ったり、優しくしろと言ったり……。俺の妃は我儘だな……」
 言いながらも、ガーネットの口腔内から指を抜き、深く唇を重ねてくる。
 舌の動きは優しくて、だが淫らに舌を吸い上げて、ガーネットを犯していく。
 甘くも官能の色を濃くした口づけを受けながらも、緩く身体が揺れる。
 ギシギシ、と寝台は啼き、ガーネットの嬌声はキスで吸い上げられる。
 その夜は長い時間、二人分の重みを支えた寝台の悲鳴が、寮の中に鳴り響いていた。

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