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いちいち覚えてるわけないじゃんっ!

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 レオンの言動や行動が急に好意的になった理由に気づいたシャーロットは、夜、自室に引きこもって寝台の上に蹲り、頭を抱えていた。
(レオン様は、私と結婚するつもりでいるのよね!? でも、私はまだ色々解決できてないことがあるし、下手したらレオン様まで巻き込みかねない……)
 悪役令嬢といえば、やはり必ずと言っていいほど『ざまぁ展開』が待ち受けている。既にそれは終わった、と思って良いのかもしれないが、新たな展開がいつの間にか幕を開けていた。
(あの腹黒鬼畜変態王子が決着をつけろって言ってたのって、このことだったの? でも、どういうこと?)
 シャーロットは頭をフル回転させて考え、ある一つの仮説に行きついた。
(私がレオン様を襲ったせいで、レオン様は私と結婚しようとしてて、でもそれはあの腹黒鬼畜変態王子にとっては不都合なんだよね……? だから私からレオン様を解放してやれってこと?)
 ここ数日のことを何とか思い出して推測してみるが、これが一番しっくりきた。
(あぁ~! これが本当に小説なら、前のページ見てもっと詳しく考察できるのにぃ……! 数日とはいえ、さすがに全部のやりとりなんて覚えてるわけないじゃん!!)
 心の中で悲鳴のような雄叫びを上げ、シャーロットはゴロゴロと行儀悪く寝台の上を転がり回った。
(あれ、でもあの腹黒鬼畜変態王子は私とレオン様がくっついた方が良いみたいなことも言って……、言ってた? 言ってたよね? どうだったっけ……?)
 正直、コンラッドはその一言一句をすべて忘れ去りたいくらいの存在だ。否、言葉だけではなく、存在も忘れてしまいたい。
(本人を問いただしたくても、なんでこういう時は来ないんだよ! あの腹黒鬼畜変態王子!! 本当に空気読めない男だなぁ!!!)
 腹立たしさを紛らわすために、シャーロットは枕を拳で殴りつけ、そして後悔した。
「痛~~~~っ!!」
 腕を怪我していたことをすっかり忘れていたのだ。思いっきり、怪我をした方の腕を枕に叩きつけていた。
 涙目になりながら、痛みを訴える腕をさする。
 そうこうしていると、コンコン、と控えめなノック音が聞こえてきた。
 カバッと寝台から起き上がり、シャーロットは身なりを整えてから返事をする。
「シャーロット嬢。湯あみの支度が出来ました」
「え……?」
 なぜレオンがそんなことを? とわずかに首を傾げると、部屋のドアが開いた。
「怪我をしていては、湯あみもできないでしょう。私がお手伝いをいたします」
「へ? あ、はい……はい!?」
 手伝い、ということは、シャーロットの身体を洗ってくれる、ということだろう。だが、それはさすがに恥ずかしい。
 既に素肌は見られているが、こんな急展開を想定していなかったシャーロットはただあたふたとしていた。
 彼は部屋の中に入ると、そっと手を差し伸べてくる。
「ご安心ください。ただ、洗うだけです」
 いつまでも差し出された手を取らないシャーロットに焦れたのか、彼の方から手を掴んできた。その手に引き上げられ、寝台から立たされる。
 そうしてあっさりと湯殿へ連れて行かれ、服を取り上げられた。だが大切な場所は見えないよう、大判のタオルを渡され、シャーロットはおずおずとそれを身体に巻いている。
(……なんか、裸より恥ずかしいんだけど……)
 意識がはっきりしているせいもあるだろうが、自分だけ服を脱がされ、彼は着衣のままだ。騎士服が濡れるのも構わず、彼はシャーロットの手を引いて湯殿の湯舟の傍で座らせると、その背後で膝を折った。
 コンラッドに痛い目に遭わされ、彼に介抱されたときとよく似た態勢だ。
「腕が濡れないよう、上に上げていてください」
「は、い……」
 言われるがまま、包帯をつけた腕を上に上げる。この湯殿に、鏡がなくて助かった。
 もしあったら、恥ずかしくて前も向けなかっただろう。
 レオンは背後からシャーロットの目の前に置かれていた石鹸を取ると、それをその大きな手で泡立て始めた。
「少し、くすぐったいかもしれません」
 そう言いおき、彼の大きな手で作られた泡がシャーロットの身体に乗せられていく。
 あっという間に、身体に巻いたタオルごと泡まみれになり、シャーロットは所在なさげに視線を彷徨わせる。
「まず、この綺麗な髪から洗ってしまいましょう」
 レオンの手が、シャーロットの赤毛を持ち上げた。しゃこしゃこ、と大きな手で長い髪と泡をこすり合わせる音がする。
「シャーロット嬢の髪は、本当に綺麗ですね」
「そう、ですか?」
「手触りが良い。ずっと撫でていたいくらいです」
 改めて言われると照れるものだ。
 これがお世辞や社交辞令だとわかっていても、それでも少しドキドキしてしまう。
 長い髪を長い時間をかけて洗われ、頭がさっぱりした。
「次はお身体を洗いましょう」
 彼の手が、背中に添えられた。どうやらタオルごと上下に動かして洗ってくれるようだ。
(脱がなくて良いんだ……)
 てっきり、身体を洗われるときはこのタオルを脱ぐものだと思っていたが、それは思い違いだったようだ。
(レオン様の手……気持ちいいなぁ……)
 彼の手は、片手だけでもシャーロットの背中を掴めそうなくらい大きい。大人の男性の手だ。
 あまりの心地よさにうっとりしていると、不意に胸を掴まれた。
「ひゃっ!?」
「次は、前を洗います」
「え、あの……」
 泡まみれの乳房を、彼の両手が片方ずつ包み込むように揉みしだいていく。その刺激で胸の粒が次第に立ち上がるが、彼は構わず洗い続けた。
「んっ、んん!!」
 立ち上がった胸の粒が、彼の手のひらとタオルに擦られて声が上がってしまう。びくびくと身体を震わせてしまい、シャーロットは慌てて下肢を隠しているタオルを片手で引っ張った。
「少し洗いにくいですね。上げた腕を、私の首に回してくださいませんか?」
 口調は尋ねているのに、彼は返答を待たず、一方的にシャーロットの身体を半回転させると上に上げていた彼女の腕を自分の首にかけてしまった。
「あ、あの! これは……!」
 いつの間にか、レオンの膝の上で横抱きにされてしまっている。
「大丈夫です。お任せください」
 口調は至極丁寧ではあるものの、手つきは意地悪だ。アンダーバストに手を差し込まれ、胸を持ち上げられ、丁寧に胸の付け根まで擦られた。
「あ、ぁんっ!」
 悪戯に彼の指がシャーロットの胸の粒を優しく擦っていく。その焦れったい快楽に、足の間が気になって仕方なく、そこをこすり合わせてしまう。
「そこが気になるようでしたら、先に洗いましょうか」
 胸を洗っていた手が、腹を這い、そして下肢へと到達する。その手つきが妙に厭らしくて、シャーロットはひくひくと身体を痙攣させた。
 タオルの裾に彼の手が潜り込むと、髪と同じ色の茂みを撫でられ、指がその中へと挿っていく。
「ひぁ!」
 赤毛の茂みの中で、ツンと尖り始めていた箇所を優しく突かれ、悲鳴のような嬌声が上がる。
 あまりの恥ずかしさに太ももを閉じようとしたが、彼の手は止まらなかった。
「大丈夫です。洗っているだけですから」
 耳元で彼の低音ボイスがそう囁いた。
 どこか熱っぽいその声音に、シャーロットは嫌々と頭を左右に振る。
「や、やめ……!」
「すぐに終わりますから」
「ちが……!」
 するっ、と彼の手が、少し下の割れ目に到達した。そこは泡のせいではなく、濡れている。
「――こちらも、泡立てましょうか」
 ツプ、と彼の太い指がとろとろと甘い蜜を滴らせる場所に挿ってくる。初めてここで身体を洗われた時同様、全く痛くない。
 だが、羞恥で死んでしまいそうだ。
「あとで、軟膏もお塗りしないといけませんし、綺麗にしなくては」
「え……、あ、あぁ!!」
 ツププ……ッ、と長い指が、そこに埋められていく。彼の指を受け入れてしまっては、もう何も考えられなかった。内壁を優しく擦られ、手の動きが早くなっていく。じゅぶじゅぶと音を立てて泡立てながら内壁の中でクッと指を曲げられ、しなやかな背中が仰け反った。
「あ、あぁぁぁぁああ!!」
 何かが吹き出す感覚と共に、シャーロットは甘い嬌声を上げた。
 目の前がチカチカと光り、ガクガクと痙攣を繰り返すと、中から指が抜かれていく。
 ぐったりと広い胸板にしな垂れかかると、泡まみれの身体に温かい湯をかけられた。敏感になった身体は、それにすら感じてしまう。
「さぁ、洗い終わりましたよ」
 声をかけられるが、この状況で反応できるはずがない。湯をかけられたとき、一緒に濡れてしまった彼の制服を握りしめながら、肩で息をしていると、そのままの態勢で抱き上げられた。
 泡が付いたタオルを脱がされ湯舟の中で降ろされる。
「気持ちが良いですか?」
 どっちが? とシャーロットはとろんと蕩けた瞳をレオンに向ける。
「湯加減は如何ですか?」
 湯は熱すぎず、ぬる過ぎず、丁度良い温度だった。
「レオン、さま、も……」
 先ほど、シャーロットに湯を浴びせた時、彼は制服ごとずぶ濡れになってしまった。夜は冷えるから、そのままでは寒いだろう。
「私は後程……」
「でも……」
 ぎゅっ、と彼の制服の袖を掴むと、レオンの目元がふわりと優しく眇められた。
「――そうですね。ご一緒しましょうか」
 濡れた制服をサッと脱ぎ捨て、彼も湯舟に浸かった。この湯殿の湯舟は大きい。一度に五人くらいは入れるだろう。いわゆる大浴槽というやつだ。
 レオンは浴槽の中に腰を下ろすと、再びシャーロットの怪我を負った腕を自分の首に回すと、横抱きにした態勢で胸元に湯をかけていく。
 彼の視線には、シャーロットのしなやかな肢体が丸見えだ。だが同時にレオンもその逞しい体躯が丸見えになっている。
 ここまできたら、もう恥じらいは薄れていた。
 絶頂の余韻からまだ抜け出せずにいるシャーロットは、まどろむ思考の中、思ったことを口にした。
「れおん、さま、は……、どうして、いつも……私だけ、を……?」
「気にすることはありません。これは私の欲でもあるのです」
「なら……中に……」
 そろっ、とシャーロットは彼の中心に手を伸ばす。そこは、すでに熱く張りつめ、大きく仰け反っている。
「あなたの中に挿れてしまえば、あなたを傷つけてしまう。あなたが泣いて嫌がっても、あなたの子袋に子種を何度でも注ぎたくなってしまう」
「私は……」
「まだ内壁の傷が治っていません。そんな状態で何度も激しく擦れば、あなたの身体に負担がかかります」
 激しく擦ってくれるのか。この手に触れている熱棒で、指しか挿れてくれない場所を。
 だがその行為には、意味があるのだろうか。
 一度してしまったから、どうせ結婚するのだし、体の良い性欲処理のためなのか。それとも、特別な思いを少しは抱いてくれているのか。
 それを聞きたいのに、シャーロットはうとうとしてきてしまった。
(だめ……、寝たら、また……)
 彼に迷惑をかけてしまう。
 また無意識に誘って、抜け出せない奈落へと落ちるきっかけをまた彼に作らせてしまう。
 そう思うのに、意識は混濁してきた。
「そのままお休みください。眠っている間に、中に薬も塗っておきますから」
「で、も……」
「夜が怖くないよう、ずっとお傍におります。ですので、ご安心ください」
 シャーロットは自分が信用できないから眠りたくないのだが、レオンはまた彼女が悪夢を見ることを心配しているようだった。
「おやすみなさい。ロティー」
 耳元でそっと囁かれる。
 その声があまりにも優しくて、シャーロットはその声に促されるまま、瞼を閉じていた。




 シャーロットが浴槽の中で眠ってから、レオンはその美しい肢体をじっと見降ろしていた。
 張りのある胸も、肉付きの良い太ももも、そのすべてがレオンを煽る。つい欲望に負けて、その身体に手を伸ばしてしまった。
 彼女の肌は、どこに触れてもまるで吸い付くように瑞々しい。だがその肌に、レオンは傷をつけてしまった。
「…………」
 自分の首に回した彼女の腕をそっと掴み、少し濡れてしまった包帯へ視線を注ぐ。
 あの時、レオンはまさかあの容器が吹き飛ぶとは思っていなかった。そしてその破片が彼女を傷つけるとは。
 もっと早く彼女を守る行動をすればよかったと後悔している。
 レオンならばあの容器の破片が彼女に刺さる前に魔法で消し去ることなど容易かった。だが、それを一瞬躊躇してしまったのだ。
 たかが傷薬の容器を、彼女が「大切なモノ」だと言ってくれたから。何の変哲もないただの容器のどこがそんなに気に入ったのだろうか。
 そうは思うものの、レオンがこの容器を捨てられずにいたのは、一度でも彼女の手に触れたものだったからだ。それを捨てるのは忍びなく、何故か勿体ないような気さえした。
 こんなありふれた容器なのに、手元に置きたいと思ったのだ。
 だからあの時、あの容器の破片を消し去ることに躊躇してしまった。そうしなければ彼女が怪我をするとわかっていながら、躊躇ったせいで判断が遅れた。
 その結果が、この包帯である。
 レオンは包帯をゆっくりと解き、白い肌にできてしまった赤い傷跡を見つめる。何とか傷口は塞がっているが、痛々しいことに変わりはない。
「私は、いつもあなたを傷つけてばかりだ……」
 守りたいと願うのに、どうして守り切れないのだろう。
 今も、彼女の中には挿れないと宣言したばかりなのに、熱棒に触れられたことで、そこに血流が溜まってしまっている。
 レオンは目元に掛かっている前髪をかき上げ、熱を逃がすように長く息を吐く。このまま全裸で寄り添っていたら、理性の限界が来てしまう。
 そうそうに出た方が良いと彼女を抱いたまま浴槽の中で立ち上がると、外気が寒かったのか、シャーロットが身を捩じり、レオンの胸板に身体を寄せてくる。柔らかい乳房が、むにゅっ、とレオンの胸板で潰れ、そこにできた谷間に彼女の髪から滴った水滴が流れ落ちていく。
 気づいたときには、彼はシャーロットの胸の谷間に顔を寄せていた。そこに溜まった湯を啜り、柔らかい肌も一緒に吸い上げる。
「ん……」
 シャーロットの小さい声に、ハッとして顔を上げると、彼女の胸元にはくっきりと所有物の証がついていた。
「…………」
 赤い花びらのような鬱血を、レオンは微苦笑を浮かべながら柔らかい乾いたタオルで隠した。
 彼女を抱いたまま階段を上り、最上階の一番手前の部屋の、彼女がいつも使っている寝台にタオルで包んだだけの肢体を横たえる。
 レオンは一度隣の部屋に行き、数少ない私物の中から新しい傷薬と布当てと包帯を持ち出し、シャーロットの腕の傷の手当てを始めた。
 腕の処置が終わったら、今度は下だ。
 シャーロットの足を大きく開かせ、しっとりと濡れている場所に、薬を塗りこんでいく。一度達かせたからか、内壁がひくひくと震えてレオンの指を奥へと呑み込もうとしてくる。
 ちょっと弄っただけで、彼女の蜜壺はいつものように甘い蜜を滴らせており、その艶やかに彩られた場所を見る度、喉が鳴った。
 内壁にまんべんなく薬を塗り終えると、レオンはタオルを巻いただけの彼女に寝巻を着せ、自分も寝台に横になる。
 レオンが傍に行くと、暖が欲しかったのかシャーロットの方からすり寄ってきた。
 その仕草は、年相応というには少し幼い印象があるが、それがとても愛らしい。
「普段からも、私にこうして甘えてくだされば……」
 コンラッドは、彼女は甘えを知らずに育てられたと言っていた。そんな娘に、急に甘えろと言っても無理な話だろう。
 彼女が甘えてくれるのは、意識を手放しているときか、正常な判断ができていないときだけだ。
(少しずつ、覚えて頂かなくてはな……)
 誰からも甘やかしてもらえなかったのであれば、これからはレオンが甘やかしてやれば良いだけの話だ。
 まずは何が良いだろうか。
「――花、か……」
 昼間、彼女は生花が好きだと言っていた。そのことを思い出し、レオンは密かに胸に決める。
 彼女の好きなモノを、ひとつずつプレゼントしていこう、と。
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