テンプレ悪役令嬢シャーロット・バレリアは性的にちょっと特殊な転生者

潮 雨花

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人ん家(?)で何やってんの……(呆)

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 キッチンがある階の真下に備蓄庫はある。階ごとの天井が高く作られているので、真下といっても各階につながる階段は驚くほど長い。その長い階段を下りて行くと、大きな扉が現れた。
 備蓄庫はこの階、丸まる一つが当てられており、中にはたくさんの野菜や肉、加工品などが置かれている。
 レオンが扉を開けてくれ、シャーロットは彼の背に続いて中へと入った。
石壁で作られた倉庫のような場所で、魔力で室温が管理されているのか、まるで冷蔵庫の中のように寒い。
パンが置かれているのは、奥の方だ。手前から野菜や肉、調味料などがずらりと棚や箱の中に並べられており、その奥が加工品や乾物などが常に補充された形で完備されている。
「パンに、調味料と、あと……」
 レオンが持っているバスケットの中にパンを入れ、少しの調味料を入れたら、もう一杯になってしまった。
 あとは手に持てるだけ持っていこう、と野菜や肉などを腕に抱えていたが、どうにも抱えきれない。
「――仕方ありませんわね」
 少しばかり抵抗はあったものの、シャーロットは着ていた上着を脱ぎ、袖同士を結んで袋状にすると、その中に抱えていたものを入れ直す。それでも一度に運べる量は多くはなかった。
 今回運べなかったものは、夜にでも取りに来ればいい。あくまでもパンを取りに来たので、その目的は既に果たしている。
「シャーロット嬢。それでは服が傷んでしまうのでは……?」
「構いませんわ。少しの間ですし」
「私の上着をお使いになりますか?」
 その申し出は正直有難い。レオンはシャーロットよりはるかに体格がよく、彼が着ているものも当然、大きいのだ。それに包めば二倍の量は運び出せるが、さすがに悪い。
「とんでもありませんわ。荷物を持ってくださっているレオン様に、そんなことまでさせられませんもの」
「ですが、そのような薄着では体調を悪くされるかと……」
「問題ありませんわ。すぐに出ますし」
 そう言いながらも、シャーロットは他に必要なモノはないだろうか、とまだ備蓄庫の中をうろうろしていた。
(キノコもあるのか……。きのこたっぷりのシチューとか、牛乳もあるし、作れそう……)
 つい美味しそうな食材を見ると、夕食のレシピを頭の中で考えてしまう。昨晩作ったシチューは焦げる寸前まで火を入れてしまい、シチューではなく、ただの煮込みになってしまったのだ。それでも丁度良くシチューのスープの旨味を肉が吸い取ってくれホロホロで美味しいのだが、この国は夜になると肌寒くなるので、温かいスープが欲しくなるのである。
「シャーロット嬢。また後で運び出しましょう。本当に、風邪をお召しになってしまいます」
「え? えぇ、そうですわね……」
 ひょい、とシャーロットが持っていた簡易手提げを取り上げられ、レオンはそれもバスケットを持つ方の手で抱えると、何も持っていない手で肩を抱くようにして扉の方まで促してくる。
 半ば無理やり外へ連れ出されたシャーロットは、そこでやっと、自分の身体がかなり冷えていたことに気が付いた。
「少し、長居をし過ぎてしまいましたね」
 外の空気の方が温かく、温度差に身体が反応したのかブルッと震えてしまう。
あはは、と乾いた笑みを浮かべてレオンを見上げると、彼は素早く自分の上着を脱ぐと、有無を言わさずそれでシャーロットの身体を包み込んだ。
「私の上着で申し訳ありませんが、暖を取るには良いかと」
「あ、ありがとう……ございます……」
 大きなレオンの騎士服の上着は、一度、うっかり袖を通したことがある。あのときの上着はすっかり冷え切っていたが、レオンが先ほどまで身に着けていたそれは、彼の体温と香りを纏っていた。
(あったかいし……、良い匂い……)
 何かコロンでもつけているのだろうか。
 爽やかな太陽と自然の匂いがする。
 残り香と呼ぶには、その香りはかなり濃厚だった。それをこっそり胸いっぱいに吸い込みながら階段を上がると、妙な息遣いが聞こえてきて、シャーロットは思わず足を止めた。



「あんっ! コンラッド、さまぁ……」
「キミの乳首は本当に愛らしいな。ぷっくり膨らんで、勃起しているようだ」
「も、ぉ……!」
「雌穴が疼くか? だが、今日は夜まで乳首だけで我慢するんだ。もちろん、気をやったら、今夜は達かせてあげないよ」
 ぴちゃっ、チュゥゥ、と乳首を弄っているのだろう。舌で舐めまわし、吸い上げる音がする。
「ぁ、ぁぁあ! そんな、引っ張らない、でぇ……!」
「マリアはうそつきだな。私にこうやって吸い上げられながら、もう片方を引っ張られるのが好きなくせに。あぁそうだ。今度この二つの乳首に鎖付きの首輪を嵌めて、天井に繋いで引っ張り上げてあげようか」
「ぃやぁ! 乳首、千切れちゃ……!」
「大丈夫だよ。千切れないよう調節するから。でも乳首は今より肥大化してしまうかもね」
「だめ、だめぇ……!」
「キミの乳首がどんなに醜く肥大化しても、変わらず愛してあげるから安心して。下の茂みに隠れた突起だってキミが弄ってほしいと言うから弄り続けて肥大化してしまったけど、毎朝しゃぶってあげているだろう?」
「あ、ぁぁ……」
「今朝愛してあげたときのことを思い出したかい? 本当にマリアはいやらしい子だ……。貞操帯をつけたままなのに、濡れてきているじゃないか」
「言わ、ないでぇ……!」
「それにしても、キミのこの厭らしい乳首から何も出ないのは、やっぱり寂しいね。この前の話とは別に、母乳が出る薬を別で開発させようかな」
「そ、んなぁ……!」
「キミの蜜という蜜はすべて飲んだけど、ここはまだだろう? 少し味見がしたいんだ」
「子を……産みます、からぁ……!」
「あぁ、もちろんキミには俺の子を孕んでもらうけど、薬を作らせた方が早いと思わないかい?」
 チュパチュパ、と赤子のように乳首を吸う淫猥な音の後、ジュルルッ、と吸い上げる音が木霊する。
「ぁぁぁああ! 強いぃぃ!!」
「乳しぼりの練習をしないとな」
「ぃやぁ!」
「なら、他の娘で練習をしても良いのかい?」
「いや! 絶対、いやあ!」
「だろう? なら、マリアがさせてくれ。すぐに薬を作らせるから、その時――」




「…………」
 シャーロットは前を進むレオンのシャツをギュッと掴み、彼の足を止めさせた。
「シャーロット嬢? どうかしましたか?」
「いえ……、その……」
 全裸ではなさそうだが、限りなくそれに近い恰好で何かしらやらかしているのは、風が教えてくれる音でよくわかった。
 だが戻るにしても、今しかない。
 これ以上放置したら、なんやかんや、キッチンで事を進められてしまいそうだ。
「わ、私、自分の部屋に忘れ物がありまして、今すぐ取りに行きたくて仕方がありませんの。だから、先に行きますわね!」
 かなり苦しい言い訳だが、言い訳の質を考えている場合ではない。シャーロットは魔力を自身に纏わせ、レオンの返事を待たずビュンッ、と疾風のごとく速さで上の階まで駆け上った。
(階段が長くて助かった……)
 その勢いでバンッ、とキッチンの扉を大きな音を立てて開けると、コンラッドの膝の上で、マリアンヌは胸元だけを寛げた格好で彼に乳首を吸われている最中だった。
「きゃあ!?」
 マリアンヌは驚いて身を引きかけるが、その瞬間、コンラッドはシャーロットに流し目を送りながら彼女の乳首をさらに強く吸い上げた。
「ぁぁんっ!」
 胸と口で繋がっているふたりを前に、シャーロットは頭を抱えたくなる。
「――殿下。何をなさっておいでなのでしょう?」
 結構恥ずかしい現場を見られているというのに、コンラッドには恥じらう気配が全くない。こうしてることがさも当たり前だと言わんばかりに、マリアンヌの乳首を吸い続けている。
(――うわぁ……、本当にマリアンヌの乳首、デカッ……)
 同性の裸など、前世で修学旅行のときに温泉に入ったっきり見たことがなかったため比較対象が少なすぎるが、コンラッドの努力の賜物なのか、そこはまるでひよこ豆のようだった。
(この腹黒鬼畜下半身男がマリアンヌに出会わなかったら、私もあぁいう風にされてたってことだよね? 良かったわ……。この男がマリアンヌに夢中で……)
 そしてマリアンヌに転生しなくて本当によかった、とここで初めて悪役令嬢に転生したことを感謝した。
(『騎士たち』もさぞやあの乳首なら弄り甲斐もあったでしょうね……)
 他人の情事をまじまじと見つめるものではないが、つい目線はそこへ注がれてしまう。
「はぁ……。婚約者殿も経験済みか? 恥じらいもしないとはな」
 やっと乳首から口を離したコンラッドは、何故か感心した風だ。
 だがまだ止める気はないのか、自分の唾液で濡れたそこを指で弄りまわしている。
「そんなに堂々とされていては、羞恥すら感じませんわよ」
「そういうものか? 既にレオンに食われたものかと思っていたが……」
「は、はぁ!? あなたと違って、レオン様はこんなことはしませんわっ!」
「あいつも男だぞ? 我が婚約者殿はまだ手も出してもらえていなかったのか」
「レオン様をあなたと同列に扱わないでください! あと、その続きをするなら他所でやってくださいませ!」
 コンラッドのしつこい攻めに、マリアンヌは背中を仰け反らせてビクビクと震え始めている。達するな、という命令を聞こうとしているのか、足元をこすり合わせて何かに耐えているようにも見えた。
「そうだな。この調子では、食事どころではなさそうだ」
 ふっ、と息で笑いながら、マリアンヌの上着を整え、コンラッドは膝の上で縮こまってしまっている彼女を横抱きにして立ち上がり、シャーロットの前まで歩いてくる。
「また明日来る」
 自分たちの都合でいつも「食事会」が延期になっているというのに、まだ飽きないようだ。もうこれは嫌がらせなのだろう。
今までマリアンヌを虐めてきたから、という理由ではなさそうだが、コンラッドの行動の真意が読めず、シャーロットは内心深いため息を吐いた。
 返事をしないまま、ぷいっとそっぽを向くが、コンラッドはそれを咎めることなく、シャーロットを横切って階段を下りて行く。それと入れ違いになるようにして、レオンがキッチンへと上がってきた。
「――コンラッド様方と何かありましたか?」
「ご友人の方の体調が優れないとのことで、お帰りになっただけですわ」
「そのようでしたが、シャーロット嬢はよろしかったのですか?」
「早く帰ってくださって清々しましたわ。まったく、毎日毎日、何をしにいらしているのやら」
 自分たちの情事を見せつけたいのであれば、校内の目立つ場所でやれば良いものを、あの第一王子が一体何を考えているのかさっぱりわからない。
(――初めて他人のあんな姿、見ちゃったよ……)
 覗き見るつもりはなかった。
 シャーロットがあの場に乗り込めば、何事もなかったかのように終わらせると思っていたのだ。それなのに、あんなに堂々と見せつけられるとは思わなかった。
(他の男ともシェアしちゃうような変態だものね……。本当に頭のネジの一本か二本、どっかに置き忘れたんじゃないの?)
 はぁ、と大きすぎるため息を零し、両手で顔を覆っていると、荷をキッチンのテーブルに置いたレオンにその手を掴まれた。
「あ、あの、レオン様……?」
 真っすぐで真摯な眼差しで見降ろされ、胸がドキリと高鳴る。
「何かされたのですか?」
「は? あぁ、いえ。されたと言えば、そうかもしれませんが、私に実害はありませんでしたので……」
 目と精神に支障を来しはしたが、今回はシャーロットも悪い。読みが甘かったのだ。
 コンラッドの変態鬼畜っぷりを侮っていた。まさかマリアンヌの肌を見せつけられるとは――。
(レオン様も、あの身体に触れたのかな……)
 彼が『騎士たち』の中に含まれていたのであれば、あの淫らな身体に触れ、もしかしたら口を付けたかもしれない。そう思うと、胸の中のモヤモヤが大きくなってしまう。
(この世界の男の人は、あぁいうのが好きなのかな……。考えるまでもないか……)
 生娘であるシャーロットより、何をしても男を煽る反応をするマリアンヌの方が、手軽で魅力的には映るだろう。シャーロットの相手をしたところで、前世の記憶を所持していてもこの身体は未経験なのだ。
 異性に触れられてちゃんと反応できるのか、それすら怪しい。
(なんだか……、悔しいなぁ……)
 初めての相手はレオンが良いが、レオンを悦ばせられないのであれば、他の男で身体を慣らしておいた方が良いのでは、という考えに陥ってしまう。レオンにはシャーロットの処女を欲する理由すらないのだ。
「…………」
 きゅっ、と下唇を噛みしめていると、大きな手が伸び親指の腹で口を開かされた。
「傷がついてしまいますよ」
 こんな風に、気まぐれに優しくされるからいけないのだろう。希望を持ってしまう。期待をしてしまう。
 もしかしたらレオンも――と。
「レオン様は……」
 口が勝手に動いた。
 思っていることを喉の奥で留めておくことができず、唇から零れ落ちてしまう。
「処女は面倒だと思いますか?」
 言ってから、ハッと我に返る。
 慌てて自分の唇に手を当てたが、一度言ってしまった言葉は取り消せない。コンラッド達の情事を見てもどうともならなかった身体が、羞恥で一気に熱を帯びる。
「す、すみません。私ったら、何を言ってるのか……」
 慌てて取り繕っていると、レオンの指が顎にかかり、上向かされた。腰には彼の腕が回り、軽く抱き寄せられる。
「面倒だと感じる相手であれば、抱かないでしょう」
「――……そ、うです……わ、ね……?」
「他の方々のことは存じませんが、少なくとも私は、魅力的な女性を前に、そうしたことは気にしません」
 間近にレオンの顔が近づいてくる。この態勢でこの距離の詰め方をして、することは一つしかないだろう。
 だが、どうして。
 レオンにはシャーロットに口づけをする理由などないはずだ。あのふたりに当てられたのだろうか。彼らとすれ違ったのであれば、その様子から何をしていたのか、経験もあるだろう彼にはわかるはずだ。
(嫌……だな……)
 あの二人の『お陰』でファーストキスをレオンに貰ってもらう、というのは、思いのほか嫌悪感があった。どうせするなら、ちゃんと二人の気持ちが同じ方向に向いた時が良い。
 そんな日は訪れないのだろうが、それでも、せめてもう少し関係が進展してからでなければ、後々後悔するような気がして、シャーロットは思わず顔をそむけてしまっていた。
「シャーロッ……」
「あ、そうですわ! 私たちもお食事にしませんこと!? 昨日、煮込み料理を作ったのです。少し失敗してしまったのですが、でも美味しくは仕上がっていますの!」
 口早に言いつくろえば、誤魔化していると言っているようなものだ。だがレオンはそんなシャーロットの心の内に気づいてなのか、そっと身体を離して小さく微笑んだ。
「それは楽しみですね」
 その笑顔が、取り繕った作り物の笑みだとわかるから、胸の奥がズキリと痛んだ。あのキスに意味はなかったとしても、それを拒んだのだからレオンも傷ついたかもしれない。
 だが、それでも、どうしても、嫌だったのだ。
 その気持ちだけは、変わらなかった。
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