テンプレ悪役令嬢シャーロット・バレリアは性的にちょっと特殊な転生者

潮 雨花

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勘違い

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 午後の特訓を終えてから、シャーロットは謹慎塔の簡易キッチンで夕食の支度を整えていた。
「うん。あとは煮込むだけね!」
 今日の夕食は少しだけ気合いを入れた。またいつレオンが来ても良い様に、普段から良いものを作っておこうと決めたからだ。
「せっかくだし、少し模様替えもしようかしら……?」
 スープを煮込むのには時間がかかる。その間手持ち無沙汰なので、もう少し過ごしやすい環境に整えてしまおうかと簡易キッチンの内装を改めて眺めた。
 キッチンスペースのほかに、この部屋には長テーブルと椅子が五脚しかない。この謹慎塔に収容できる人数が五人だから椅子も五脚用意してあるのだろうが、ちょっと邪魔だ。
「椅子はどこかに移してテーブルを壁に寄せれば、もう少し広く使えそうね」
 それほど広い部屋ではないが、現状この椅子を置くスペースを確保しているせいで手狭に感じる。
 一人なら十分な広さだが、身体の大きなレオンは移動がしにくいだろう。
 こういうときもやはり、風の魔力は便利だ。
 重いモノも、魔力で運んでしまえば簡単に移動できる。
(風魔法なんて、ほぼ生活魔法みたいなものだものね……)
 攻撃性には特化していないが、運ぶ・浮かせるなど生活する上で便利な要素がそろっている。また火や水とも相性が良く、火であれば料理の際に火力を上げることができ、水であれば円形に回して洗濯機の代用ができる。
 ただ土とだけは相性が悪い。
 風属性の術者が土魔法の術者を傷つけられないのは、どうあっても風では大きな岩を壊すことができないからである。魔力量の差が桁違いにあれば話は別だが、基本的に風は土に負ける。
(でも、押さえつけたり、浮かすことはできるんだよね……)
 木は土の属性だ。シャーロットの魔法は土に対して攻撃性が低いだけであり、まったく何もできないかと言えば違う。
 シャーロットの残り僅かな魔力でも、木製の椅子は宙に浮くし、木製のテーブルを壁へ移動させることもできる。
(レオン様も、私の防御障壁に当たったところで、無傷ではあるけど、動きは止まるし……)
 多少なりとも風圧は感じているということだ。
(最悪の場合、私の魔力でレオン様の動きを止めて、一方的に犯させてもらうことになるのかなぁ……)
 レオンの意思に反した行為にはなってしまうが、どうせ薬を盛るか色仕掛けも視野に入れていたのだ。何を選ぼうとも、レオンの意思を無視したことをしようとしていることに変わりはない。
(私、前世でもあんまり男の人に奉仕したことないんだよなぁ……。レオン様を勃たせるためには、何をしたら良いんだろう?)
 口で奉仕しても良いし、胸の間に挟んでみても良いが、どちらも不発では困る。男性によってはこうした行為に興奮しない人もいるのだ。
(出来たらレオン様から押し倒してくれないかなぁ……)
 他力本願だが、お互い気持ちよくなるなら、それが一番良い方法だ。
(色仕掛けが一番良いのかな? そういえばレオン様、私の太もも見ただけで慌ててたし、実は初心とか?)
 けれどすでにマリアンヌで経験してしまった可能性もある。
 彼女の痴態を見せられたら、シャーロットの太ももなど大した魅力にならないだろう。
「…………」
 シャーロットは移動させた椅子に腰かけ、テーブルの上に突っ伏した。行儀が悪いが、こんな時間に誰かが訪れることもないだろう。
 そのまま目を閉じ、鍋がぐつぐつと煮える音に耳を傾ける。その規則正しい音を聞いていると、いつの間にか彼女は眠りについてしまっていた。





「シャーロット嬢?」
 夜中、レオンは謹慎塔に訪れていた。キッチンから音がして中に入ると、火をかけっぱなしにしていたのか、鍋がガタガタと震えている。
 その火を即座に止め、鍋の中を確認してみる。汁気はなくなってしまったが、中の具材は鍋底に触れていた面が多少焦げているものの、良い香りを纏っている。
 これを放置していたのは考える必要もなくシャーロットだろうが、彼女はテーブルに突っ伏した格好で眠ってしまっていた。
「起きてください、シャーロット嬢」
 こんなところで寝ていてはまた風邪を引いてしまう。
 だが彼女は一度寝るとなかなか起きない体質なのか、何度揺さぶっても起きなかった。
「――仕方のないお方だ」
 レオンは躊躇なくシャーロットを横抱きにして抱き上げた。
 普段であれば緊急事態でない限り不用意に女性には触れないが、彼女は既にレオンと未来を約束した女性だ。
 眠っている時に抱いてしまったことも、彼女は気づいていた。本来であればシャーロットはレオンに対して何らかの罰を与える権利を持っているのだが、彼女はあの夜の出来事はなかったことにしていた。
 第一王子の婚約者という立場があるせいだろうが、すでに婚約を破談にすることを考えており、レオンを夫とすることにも同意したのだ。
 彼女にとっては処女を奪われたのだから、第一王子と婚約を破棄した上でレオンと結婚してしまえばすべて丸く収まる。
 結果的に都合の良い結婚にはなってしまうが、彼女はそれを知りながらも、レオンを気遣っていた。
『はい。レオン様にご迷惑がかからないのであれば』
 何故彼女は、処女を奪った相手を責めもせず、身分差のあるレオンを気遣うだけではなく、許したのだろう。
『その……激しかった……かもしれませんが、気持ちが良い……と言いますか』
 身体の相性が良かった、ということだろうか。彼女はひとり、蝋燭で自分の身体を慰めようとした令嬢でもある。あんな場面を見られた上、同じ男に処女も奪われたのであれば、ある意味諦めもつくのかもしれない。
「だが……」
 シャーロットを寝台の上に寝かせながら、レオンは小さく唸る。
 貴族同士の結婚に心は必要ではないとしても、シャーロットが今後苦しむようなことにはなってほしくない。
 一度目の結婚で、レオンは妻を心から愛することはできなかった。だから妻を失った後に後悔したのだ。もっと愛してやればよかったと。
 また同じようなことを繰り返すことに抵抗があり、レオンは後妻を迎えていなかった。
 だがシャーロットと話すようになり、彼女の愛らしさを知った。くるくる変わる表情と、たまに深く考え込んでいる真面目な表情はドキリとさせられる。
 あまり感情が顔に出ないと称されるレオンだが、彼女の前でだけは頬が緩んでしまうのだ。
 だからだろう。自制が効かずに彼女の身体に触れてしまった。
 月に照らされた瑞々しくも甘い肌を吸って、己の欲望で彼女を穢した。
 夢うつつだったとはいえ彼女に望まれてしたことだ、といえば逃げることもできるが、そんな無責任なことなどレオンにできるはずもない。
「あなたは、私を愛してくださるだろうか……?」
 妥協で将来を決めたのであれば、これからレオン自身が努力して彼女の心を射止めるしかない。
 身体の相性が良いというのであれば、彼女が望む通りに抱こう。だが、それだけで心が手に入るとは思えない。
 間近で見ている。
 コンラッドはマリアンヌを快楽で堕とした。だがそれは本当の愛なのだろうか。
 本人たちは真実の愛だと信じて疑っていないようだが、レオンからしてみれば、若気の至りであり、勘違いの恋だ。あのふたりはそれを指摘したところで聞く耳を持たないまで深いところまで堕ちてしまった。手遅れのふたりに今更茶々を入れるつもりは毛頭ないが、自分たちはそうはならないようにしたいと思っている。
「ん……」
 シャーロットが小さく声を上げ、寝返りを打つ。少し寝苦しそうだ。
「――失礼します」
 明日も訓練があるのだ。制服を着たままではよく眠れないだろうと思い、レオンは彼女の上着に手をかける。それを彼女の腕から抜き取り、下に着ているシャツの襟を寛げた。
 そこから、たわわな胸の谷間が覗く。
「…………」
 昼間、彼女は暑いと言ってシャツのボタンを外していたが、あの時は本当にまずかった。
 目のやり場に困るだけではなく、昨晩のことを思い出してしまい、冷静さを保つのに苦労したのだ。そのことを、彼女はどこまで気づいているのだろうか。
「そういえば……」
 シャツのボタンをすべて外し、胸当ての中に収まっている胸を見つめる。
 昨晩はかなり弄ってしまったから、もしかしたら腫れてしまったかもしれない。
 彼女は身体に異常はないと言っていたが、もしレオンを気遣って言えなかったのだとすれば、今後はここを弄るのを控えるべきだろう。
 そう思い、レオンは彼女の胸当てを器用に外し、露わになった胸の粒を顔を寄せて確認する。
 元々綺麗なピンク色だったのに、そこはやはり赤く腫れあがっている。こんなことなら軟膏を持ってくればよかった、と後悔した。
 後悔しながらも、彼女の胸に引き寄せられてしまう。ぷっくりと立ち上がった赤い果実がフルフルと震えるように見えて、とても美味しそうだ。
 我知らず、その粒に舌を這わせていた。
「んっ、ぁ……」
 すると彼女が甘く啼く。スカートの中で両足をこすりつけており、これだけで彼女の身体に快楽を与えることができたことを教えてくれる。
 そろりと彼女のスカートの中に手を入れてみると、下着もしっかり濡れていた。
 隙間から指を挿れてみると、下肢の彼女の髪と同じ色の茂みの中で、ぷっくりと立ち上がっている愛らしいモノが触れた。
 それをコロコロと指の腹で撫でると、シャーロットの痩躯がびくびくと痙攣する。
「――今日は、最後まではしません」
 レオンはシャーロットの下着を脱がせ、その茂みに顔を寄せた。とろとろに濡れた蜜壺の入り口を舐め上げ、茂みの中の愛らしい突起を甘く吸う。すると蜜壺から新たな蜜が滴った。茂みの突起から唇を離し、今度は蜜壺の入り口に舌を挿れて舐めまわし、膨らみを増した突起を指の腹で捏ね回す。
「ぁ、ぁぁ!!」
 小さな声を上げたシャーロットの蜜壺から口を離して、その入り口をすっぽりと唇で覆いつくすと、ブシャッ、と口腔内に飛沫が飛び、一滴残らずそれらすべてを吸い上げ、喉を鳴らして呑み込んだ。
 唇に滴る残滓もすべて舐めとり、下着を履き替えさせる。
 彼女の中で果てたいのは山々だが、それではコンラッドとやっていることが同じになってしまう。既に似たようなことをしてはしまったが、最後の一線だけは今は超えないよう、理性を総動員させる。
 彼女のシャツも苦しくないようボタンを付け直し、その身体に肌掛けをかけてやり、レオンは部屋を後にした。
(彼女に良さそうな軟膏を用意しておかないとな……)
 何か良い薬はなかったかと、手持ちの軟膏を思い返していたレオンは、夜闇の中へと消えていった。
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