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第四話 拒絶
しおりを挟む「なにを考えているんだ、君は」
憤慨したような声色だった。
リオルが元気に帰還していったその後、応接間に置かれたままのティーカップたちが自力で調理場へと歩き去っていくのを視界、リレイヌを部屋へと移動させようと声をかければ、冒頭の一言が飛んできた。
どこか苛立ったような、焦ったようなその音に一瞬瞠目したイーズは、すぐにいつもの無表情を顔に張り付け、「なんのことですか」と一言。リレイヌが「管理者の件だ」と静かに答える。
「言ったはずだ、管理者の試練には死が付きまとうと。なんだ君は。いつから自殺志願者になった?」
「自殺志願者になったつもりはありませんし死ぬつもりもありません。主様は大袈裟なんですよ」
「大袈裟? バカを言え。大袈裟なものか」
リレイヌは立ち上がり、応接間を後にする。その後ろ姿を眺め、自然とイーズも退室。部屋を後にする。
「いいかい? 管理者の試練は傷つくことを前提に作られたものだ。試練を受けている期間中は回復魔法の使用は禁じられている。使ったらその場でアウトだ」
「死ぬほどの傷を受けた時は?」
「うちには記録くんがいる。死ねばここの記録庫に落とされそこから再開だ」
「なるほど」
納得したように頷くイーズに、リレイヌは動かしていた足を止め、振り返った。そして、眉尻を下げ、「これだけの説明でもわかるだろう?」と言葉を発す。
「試練はとてつもなく危険なものなんだ。現に、過去精神を病んだ者も居たと聞く。私は君に、そうなってほしくないんだよ」
「……」
「イーズ。考え直してくれ。管理者にならずとも君は私の従者だ。それだけでもいいじゃないか」
「…………」
黙ったイーズにリレイヌはなあ、と歩み寄る。それを交わすように一歩下がると、イーズは一礼してリレイヌの横を通りすぎた。いかに信愛する主の頼みとはいえ、こればかりは聞き入れられない。自分はなんとしてでも管理者となり、彼女に認めてもらわなくてはならないのだ。
(申し訳ありません、主様)
心の中で謝罪し、顔をあげる。
(必ず、あなたに近づきます……)
彼の決意は、固かった。
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