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第六章 研究施設
75.微睡み微笑む
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「──で、ここがアナタたちの眠る部屋ね」
ガチャリ。
開かれた扉の奥。2つの2段ベッドが左右に置かれた、とても狭く簡素な部屋が現れる。真ん中の通路は人ひとりがやっと通れるほどの幅しかなく、これが部屋?、と少年たちは疑問を抱いた。
貴族の家出身の彼らからしたら、この部屋はもはや部屋とも呼べぬ代物らしい。眉間にこれでもかとシワを寄せて悩ましい表情を浮かべている。
「今日はやることないから、もう休んでも大丈夫」
「休むって言われても……」
怖々と囁いたアジェラの横、すう、と動いたリレイヌが2段ベッドの方へ。左に位置するその下段に倒れるように潜り込むと、そのまま、くぅ……、と丸まり寝息を立て出す。
「「「(寝た……)」」」
少年たちの心の声が重なった。共に、「あらいい子ね」とリジマがにこやかに手を叩く。
「さ、あの子も寝たことだし、みんなも好きなことして寛ぎなさいな。あ、寝てる女の子は起こしちゃダメよ? 先生との約束ね?」
「「「……」」」
なんとも言えぬ顔で、茶目っ気溢れるウインクを飛ばしたリジマを見やる子供たち。リジマはそんな彼らの視線に若干狼狽えると、「そ、それじゃあまた明日!」と素早い動きで部屋を出ていく。
残された面々は沈黙。眠るリレイヌと薄暗い部屋を見回し、そっと顔を見合わせた。
「……とりあえず、どうする?」
「僕に聞くな」
「あんだよ。名家リピト家の御当主様は現状に対する案も思いつかねえのかよ」
「それを言うなら貴様もそうだろ 」
「俺は頭使うことはノーカンなんで。……ってか、こういう時ちゃっかりいい案だしそうなのはリレイヌなんだけどなぁ」
ポリポリと頬をかいた睦月が、「起こす?」とアジェラを見る。これに、アジェラは猛反対。「流石に可哀想ですよっ」とはち切れんばかりに首を横に振る。
「そうは言ってもよー」
「……起こすのは得策かもしれないな」
「おん?」
振り返る睦月を無視し、リックは寝入るリレイヌの傍へ。大人しく寝息を立てる彼女の肩に手を置くと、ユラユラとその体を前後に揺する。
「リレイヌ。リレイヌ、起きて」
「……んん」
微睡みながら、彼女は薄らと瞳を開けた。そうして、「起きた?」と微笑むリックを見やり、ぼんやりと瞬きをひとつ。へにゃりと笑う。
「おは……やすみ……」
ボスっと枕に顔を埋めたリレイヌ。睦月が「いや寝るんかい」とつっこんでいる傍ら、「かなり眠たいみたいですね」とアジェラが苦笑。「リピト様、寝かせてさしあげましょう」と告げる彼に、振り返ることをしないリックはそのまま彼女と反対のベッドへ。その下段に滑るように潜り込むと「寝る」と一言。
「いやお前も寝るんかい」
睦月がつっこむ。が、ベッドに入ったリックは何も言わず、残されたふたりも結局、寝るという選択しか出来なかった。
ガチャリ。
開かれた扉の奥。2つの2段ベッドが左右に置かれた、とても狭く簡素な部屋が現れる。真ん中の通路は人ひとりがやっと通れるほどの幅しかなく、これが部屋?、と少年たちは疑問を抱いた。
貴族の家出身の彼らからしたら、この部屋はもはや部屋とも呼べぬ代物らしい。眉間にこれでもかとシワを寄せて悩ましい表情を浮かべている。
「今日はやることないから、もう休んでも大丈夫」
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「「「(寝た……)」」」
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「「「……」」」
なんとも言えぬ顔で、茶目っ気溢れるウインクを飛ばしたリジマを見やる子供たち。リジマはそんな彼らの視線に若干狼狽えると、「そ、それじゃあまた明日!」と素早い動きで部屋を出ていく。
残された面々は沈黙。眠るリレイヌと薄暗い部屋を見回し、そっと顔を見合わせた。
「……とりあえず、どうする?」
「僕に聞くな」
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「それを言うなら貴様もそうだろ 」
「俺は頭使うことはノーカンなんで。……ってか、こういう時ちゃっかりいい案だしそうなのはリレイヌなんだけどなぁ」
ポリポリと頬をかいた睦月が、「起こす?」とアジェラを見る。これに、アジェラは猛反対。「流石に可哀想ですよっ」とはち切れんばかりに首を横に振る。
「そうは言ってもよー」
「……起こすのは得策かもしれないな」
「おん?」
振り返る睦月を無視し、リックは寝入るリレイヌの傍へ。大人しく寝息を立てる彼女の肩に手を置くと、ユラユラとその体を前後に揺する。
「リレイヌ。リレイヌ、起きて」
「……んん」
微睡みながら、彼女は薄らと瞳を開けた。そうして、「起きた?」と微笑むリックを見やり、ぼんやりと瞬きをひとつ。へにゃりと笑う。
「おは……やすみ……」
ボスっと枕に顔を埋めたリレイヌ。睦月が「いや寝るんかい」とつっこんでいる傍ら、「かなり眠たいみたいですね」とアジェラが苦笑。「リピト様、寝かせてさしあげましょう」と告げる彼に、振り返ることをしないリックはそのまま彼女と反対のベッドへ。その下段に滑るように潜り込むと「寝る」と一言。
「いやお前も寝るんかい」
睦月がつっこむ。が、ベッドに入ったリックは何も言わず、残されたふたりも結局、寝るという選択しか出来なかった。
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