死にたがりの神様へ。

ヤヤ

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第三章 強さを求めて

44.第二の素養

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 ぱちり。目を瞬いた。
 周囲を見れば、真っ暗な闇が広がっている。何事か。

「リック……? リオル……?」

 少女は一歩前へ。

「睦月……? アジェラ……?」

 不安に胸元を握りながら、眉尻を下げる。

「母様……」

 ぽつりと、零した時だ。
 前方に眩い光が収束した。それはやがて大きくなり、周囲の暗闇を飲み込むように広がっていく。

「リレイヌ」

 声がする。誰かの声が。
 見れば、光の中に一本の手があった。手は、招くように、その場で柔らかく揺れている。

「リレイヌ。おいで」

 声が自分を呼ぶ。
 自然と動かす足が前へ、前へ。
 招く手を目前に足を止めれば、光の中で、誰かが笑う。

「おいで」

 強い声だった。
 そっと、恐る恐る手を伸ばせば、笑う何かは笑みを深め、そして──

「リレイヌッ!!!!」

「っ!」

 劈くような声に呼ばれ、リレイヌはハッと目を見開いた。
 それにより視認できたのは、幻想的な森の風景と、それを背景にこちらを覗き込むリックの姿。焦ったような顔の彼に肩を掴まれたまま、リレイヌは浅く呼吸を繰り返し、それから視線を周囲へ。倒れた睦月とリオルの姿を視認し、ややぽかんとしながら、その場で立ったままのアジェラ、リック、それからシアナを見回す。

「ふむ、なかなか良い」

 老人が言った。

「捗りますなぁ」

 雷を纏う者もニコリと笑う。

「第二の素養は、この場に立っている、シアナ様以外の三名のみが合格だ。手を拒んだ者、抗った者、またそれに触れる前に帰ってきた者にのみ、魔導を扱う権利を与える」

「権利……あ、まって!リオルたちは……!?」

「眠っておるだけだ。心配はいらんよ」

 優しい老人の声に思わず安堵。
 ホッと息を吐き出せば、老人はそんなリレイヌの様子に笑い、こう告げる。

「次の素養は精霊を扱うに相応しい器かどうか。それを確かめる。──君たちと対戦するのはウンディーネだ。まだ子供だから君たちは3人まとめて戦いに挑みなさい」

「よろしくねぇ、お坊ちゃんお嬢さんたち」

 にこやかに手を振るウンディーネ、そう呼ばれた水の女性。アジェラが「ひええっ」と青ざめるのをよそ、リレイヌから離れたリックが「武器も何も無い状態でどう戦えと?」と眉を寄せる。それに、老人は笑った。笑って、言う。

「安心しろ。確かめるのはあくまで君たちの素養。そして、そこにいるお嬢さんの力だからな」

 つまり自分たちはほぼ蚊帳の外か。
 理解して舌を打ち鳴らすリックを隣、リレイヌは覚悟を灯した瞳で笑顔のウンディーネを見つめていた。
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