神を呪う ~3章:スマホアプリでゲーム内の自分を育てると、現実世界の自分もレベルアップするようです?~

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2章 〜ガールミーツガール〜

第17話:1人でどっかへ行くな!!!

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『異常を検知、異常を検知。証拠隠滅のため10秒後爆発します。職員は速やかに逃げてください。繰り返します。職員は速やかに逃げてください』

 機械の声が聞こえ、ヘッドギアは赤く光り出した。

「真白さん……なんてことを……」

 赤く光り、明らかにを発している機械を見て、コレットちゃんは唖然としている。

 ここからが私の腕の見せ所!
 
 10秒以内にコレットちゃんとニネットちゃん、そして部屋の外で拘束されている被験者達を全員、この敷地外へ出す!
 非道な研究者たちの思い通りにはさせない。

 
『9』

 カウントダウンが開始した。
 
 急いで影を出して、バリネール姉妹の身体をぐるぐる巻きに掴む。
 そのまま、影の腕を伸ばして彼女たちを建物の外へ。

「真白お姉ちゃん!!」

 ニネットちゃんがこちらへ手を伸ばしているけど、優しく微笑みかけ「待っててね!」と手を振った。


『8』

 のんびりできない。
 
 廊下の方へ走り、先ほど拘束した人達を見る。


『7』

 彼らは先ほどと変わらずに拘束されたまま寝転がっている。
 ゾンビのようにうめいて暴れていた。

 彼らも同様に影を巻き付け外へ出した。


『6』

 人数が多いし、暴れているので少し雑になるけれど、外へ放り出した。


『5』

 最後はここに残されている人の確認。
 
 2階の全部屋、1階の全部屋へ腕を伸ばす。
 鍵が閉まっているドアは、大量の腕でぶん殴って破壊した。

 もしも誰かがいるのならば、この触手のように動く腕を見て、悲鳴をあげるはず……。

 
『4』

 2階と1階を全部を開け、部屋の中をごちゃごちゃとまさぐって、残っている人を探した。

 外からこの建物を見たら、デカいタコに占領されたように見えると思う。
 そのくらい黒の腕を出していた。


『3』

 ……………
 ………

 声は聞こえない。
 よしっ!
 私も逃げようか。


『2』

 足元の影へ水溜まりに沈むようにして入った。

 足先からベロベロベロ~と舐められるような感覚に襲われる。
 全身がゾワゾワしながら、身体を沈めた。

 
『1』

 カウントダウンが聞こえたのはここまで。
 私は影の世界で、触手のような腕達に運ばれて、桜ヶ丘能力開発センターの敷地外へ出る。

 そこには私が助け出したバリエール姉妹、それに拘束されたままの人達がいた。
 彼らは先ほどまで暴れていたのに、安静にじっとしている。

 見ると、ニネットちゃんが体に手を当て『肉体操作』で動きを止め、コレットちゃんが頭に手を当て『精神操作』で正気に戻していた。


『0』

 こちらまで聞こえるような大きなカウントダウン。
 0時の古時計が鳴るような緊張感が出てくる。

 爆発して生じる建物の破片のことを考えて、念のため、壁を展開しておく。

 お昼に出会ったテロリストの時とはケタ違い。
 10万本の腕の壁。


『爆発開始』

 その瞬間、壁の隙間から光が漏れ出し、次々と腕は爆発に飲まれていく。
 どんどん腕が死んでいった。
 
 が違う!


 そう思い、全員を逃そうとした時にはすでに遅く、もう目の前まで爆発の衝撃は迫っていた。

「あ……」

 声が出ない…………。







 爆発は……寸前でピタリと止まっていた。
 まるで世界が分断されたかのように、テレビの向こう側とこっち側で分けられているかのように。

 目と鼻の先の世界では、連続爆破が起こっている。
 でも、こちら側には何も伝わらない。

 
 その不思議現象に驚いて、2,3歩離れて尻もちをつく。

 この敷地内を囲うようにして爆発が止まっていた。
 結界で囲うように透明なバリアが貼られており、外側には被害が出ていない。
 
「はぁ、はぁ……ゴホッ!ゴホッ!」

 後ろから荒々しい呼吸と、咳の音が聞こえる。

 振り返ると、全身で呼吸をしている黒江が浮いていた。
 
 顔を真っ赤なまま服は汗でびっしゃり濡れている。
 この子は手をかざして、この施設全体に念動力を使用していた。

「黒江……どうしてここに……」

 高熱で家で寝ていたはず……。
 それにGPS信号はOFFにしているから、私の居場所は分からないはず……。
 
「真白!!」

 黒江は真剣な表情で見つめる。

「なんでこんなところにいるの!! どこか行ったらイヤって言ったじゃん!!!」

「そんなこと言っても……」

 コレットちゃんをあのまま放置できなかった。
 ニネットちゃんの悲痛な表情を解消してあげたかった。

 黒江は両手で私の頭を掴んだ。

「1人でどっか行くな!!!」

 ふんわりと降りてきて、私に抱きつく。
 黒江の熱は下がっておらず、高温のまま。

「もう……いなくなっちゃったら、イヤだ……。寂しい…………」

 はぁ……はぁ……と水分が多い吐息を漏らし、涙声交じりでそう言った。

「うん……ごめんね。ありがとう。助けてくれて」

 抱き寄せて、頭を撫でる。
 そのまま黒江は眠るように意識を失った。


 
◇◆◇◆



(4月16日 9時25分 日曜日)

 
 大爆発が起こったが、黒江のおかげで無事に生還できた。
 私は現在リビングにいる。

「ましろ~いる~?」

 黒江は寝室から念動力でドアを開け、こっちを見ていた。

「いるってば! 居なくならないから、体力回復に努めなさい!」

 黒江は、未だ下がり切っていない熱にうなされて、隣の部屋で自分の体温と格闘していた。

 それで、私はの方は……

「真白お姉ちゃん、すごい!」

 現在、影をフル活用して、家事全般をやっていた。

 影達は私を中心にタコの足のように作業をしている。
 家の雑巾がけに食器洗い、洗濯物を干したり、今朝届いたばかりの家具を段ボールから出したり。
 たくさんの腕がせわしなく動いていた。

 傍から見るとカオスな家の中で、ニネットちゃんは目をキラキラと輝かせている。

 やっと同志ができたか!
 この腕のことを気に入ってくれる同志よ!

 黒江からは酷評されているこの触手のような腕達はニネットちゃんには好評のようだった。

 一方コレットちゃんは、これをやりだした瞬間「え”っ!?」という顔でベランダへ逃げてしまった。
 彼女の気には召さなかったらしい。

「ねぇ、ニネットちゃん。本当に警察へ言わない方がいいの? フランスに帰らなくてもこの異能者開発島でも暮らせると思うけど……」

「はい。日本の警察に捕まってしまったら、また研究所行きになるかもしれませんし、連絡しなくて大丈夫です」
 
 ニネットちゃんは笑顔で返す。

「そう……それなら、ウチにずっといても良いよ。この家なら4人くらい住めるし……」

「いえいえ。それはお姉ちゃん達に迷惑ですし出ていきます。ホームレス少女爆誕です!」

 胸の前で拳を握り、ニッコリしている。
 
 何も考えていなくて、テキトーにその言葉を口にしているような……。
 こんなに小さい女の子がホームレス生活はキツイ。

 それをよく知っている。
 
 だから、元気ハツラツにそんなこと言われても全然ニッコリできない。
 せっかく助けた少女達が困窮こんきゅうに喘ぐことになるのは見ていられない。

 ニネットちゃんの肩を掴んで、彼女を説得する。

「大丈夫。お金のことなら気にしないで! 研究所からたくさん貰っているし、2人増えたところでグラつくような貯金じゃないもの」

「お金の問題ではありませんよ。お姉ちゃんと話して決めたことなのです」

「でも……」

 う~ん。

 この子の意思は堅い。
 私の人生ではないから、強引に止めるわけにもいかないし……。

 なんとかならないのものか?

 そう思い、コレットちゃんの方へ目をやると、2人で話している内容が耳に入ったのか、ベランダから家の中へ入ってきた。

 しかし、影の腕は絶賛稼働中なので、それにビクビクしながらやってくる。

「ありがとうございます。真白さん。私達は私達で、あなた達はあなた達で、それぞれに生きていきましょう?」

「大丈夫だよ? ここで暮らしていても」

「いえいえ。私達と関わるとまた研究者に狙われるかもしれません。私達の操作能力はそれだけ研究者に魅力的なんですよ」

 コレットちゃんはニコリとしながら、私の額に触れた。
 そして、耳、頬へと順々に降りていき、頸動脈付近へ。

 なぜか視界が悪くなる。
 まだまだ朝なのに薄暗く、太陽が落ちて沈んでいくように……。

「真白さん、それで良いかしら? 私達が出て行くことを受け入れてくれますか?」


 ………………


 …………


 ……


「うん。分かった。困ったことがあれば頼ってくれていいから」

「そう。ありがとうございます。分かってくれて嬉しいわ」

 コレットちゃんは手を離した。


 ……


 …………


 ………………


 あれ……?
 私は今……に、コレットちゃんの言葉を肯定したような……

 一応確認してみる。

「コレットちゃんも、家が見つかるまでここに住むんだよね?」
 
 彼女は一瞬苦い顔をして、すぐに申し訳なさそうに謝ってきた。

「ごめんなさい。真白さんにはすぐに効果が切れてしまうようね。さすがはレベル6なのかな?」

 あーやっぱり、『精神操作』されていたか……

「で、どうなの? あんまりしつこいのもアレだし、どうしても無理そうならこれ以上止めないけど」

「ごめんなさい。あなた達にこれ以上迷惑をかけるわけにはいきません」

「そっか……」

 
 バリエール姉妹は、この家に住むことはなさそうだった。
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