神を呪う ~3章:スマホアプリでゲーム内の自分を育てると、現実世界の自分もレベルアップするようです?~

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2章 〜ガールミーツガール〜

第12話:無限の影の腕

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(4月15日 13時40分 土曜日)


 あれから10分ほど遠回りしつつ別の道を使ったりしつつ、なるべく直線上にテロリストを置かないように逃げ回っていた。

 すると、なんとか振り切れたのか、赤髪系茶髪少女は後ろからいなくなっていた。

 後方確認。
 よし、どこにもいないな!

 そう思い、ホッと一息安堵すると

「真白お姉ちゃん危ないッ!」

 その瞬間、私は後ろを向いて走っていたが、その場に座り込んでしまった。
 膝を曲げて、腰を落として重心を下げる。
 そのままバランスを崩してズッコケてしまった。


 ちょうどこめかみを貫くようにして、ヒュンと1本の剣線。

 私の頭があった部分を1本の短剣が切っていた。

 そのまま近くにあったマネキンの首に突き刺さ……らず粉砕した。

「マジか……」

 これは本気で逃げないとヤバいっぽいかな?
 具体的には走って逃げるだけじゃなくて、影の力を全力に出して……。
 
 先週の不良たちみたいに、少し懲らしめて終了というわけにはいかなさそうだ。

 私は立ち上がり、剣が飛んできた方向を確認した。

 そこには3人の少女。

 1人は先ほど出会った赤色系茶髪の活発そうな少女。
 1人はニット帽をかぶり風船ガムを膨らませている少女。
 1人はおどおどして周りをキョロキョロ確認している黒髪長髪の眼鏡の少女。

 3人のテロリスト。

「お姉さん……」

 不安そうな顔でニネットちゃんが見ている。
 彼女にニコリと微笑み、彼女の手を握った。

 はぁ……やるか……。
 ショッピングモール出禁になるのかぁ……。

 異能を使うことでモールを出禁になることは知っているけれど、そんなことのために自分の命を危険に晒すわけにはいかない。

 私は先手必勝よろしく黒い手を出現させ、何十メートルも先にいる彼女たち3人へと伸ばす。
 センサーが超能力を感知して、モール内ではビービーと警報が鳴り響きだした。

 影の腕の様子はさながら触手の様で、黒江から「きも~い!」とか言われそうだけど、そんなの気にしない。

 1歩も動かない彼女たちをすぐに取り囲む。

「おっ! なんだこれ!」
「……(ガムを膨らませている)」
「ひぇぇ!」

 三者三様の反応を示し、影の腕に驚いている。
 その腕を使ってロープみたく、彼女たちぐるぐる巻きにした。

「あれ? 捕まっちゃったじゃん!」
「……」
「ど、どうしましょう……」

 とりあえずテロリストの捕獲は大丈夫かな?
 今のうちに警察の元へこの子を連れて行こう!

「ニネットちゃん行くよ!」

 彼女の手を引いて走り出した。


◇◆◇◆


(4月15日 13時52分)

 しばらく歩いていたけど、警察の姿は見えない。
 モール内にテロリストが出たというのに、警察関係者は誰一人として出張っていなかった。

 なので、私達の方から警察署へ出向こうと思っていたのに…………。 

「迷った……」

 ここがどこだか分からない……。
 一応ショッピングモールは見えるので、そこへ戻ればやり直しができるけど、テロリストに狙われているのに戻るわけにはいかない。

 私の影の範囲からも外れているし、テロリストたちも解放されているよね……。

「真白お姉ちゃん……さっきから同じところをぐるぐるとしています……」

 ニネットちゃんからのツッコミ!!
 100のダメージ!
 私は死んだ。

 守ってあげるぜ! 的な感じで連れ出したのに迷ってしまうなんて。
 これではさすがに格好悪い……。

 どうしようか?

 黒江をここに呼んで一気に警察署まで連れて行ってもらうことにしよう。
 GPS信号をONにすればすぐ来てくれると思うし……

「大丈夫! 私が守ってあげるから心配しないで!」

「は、はい……」

 ニネットちゃんは苦笑いだった……。


――――――――――――――――――――――――


(4月15日 13時55分)

 GPS信号をONにして数分経った。
 ここは迷路みたいにビルやお店の裏側が集中しているけど、黒江はまだ来ていない。

 すると、曲がり角の先から足音が聞こえる。
 それはゆっくりこちらへ向かってくる音。
 建物の影になってまだ見えないけど、その先には誰かがいる。

「黒江!」

 ニネットちゃんの手を引き、そちらへ走っていくと


「はい。鬼ごっこは終了じゃん?」

 テロリストだった。
 先ほどと同じく3人。

「ヒッ!」

 ニネットちゃんは声をあげて私の後ろに隠れる。
 
 テロリストの内の1人、面倒くさそうにしていた少女。
 ニット帽の少女が道端にガムを吐き出した。

「あ~。追いかけるのそろそろ面倒くせぇ~んですけど~」

 彼女はポケットから新しい板ガムを取り出して口に咥える。
 そして、指をパチンと鳴らした。

 すると次々と空中に短剣が生成された。
 それは先ほど、マネキンの頭を粉砕して壁に突き刺さったものと同種。

 彼女は欠伸をしている。

 ニット帽の子は召喚系能力……?
 短剣を召喚する系の……。
 茶髪の活発な子は、モールのシャッターを無理やり下ろしていたところをみるに、近接パワー系能力?

 じゃあ、もう1人は……?

 もう1人。
 おどおどしている彼女の能力が分からない。

 認識災害系の能力だったらすごい厄介だな……。

「――あ~死ななくていいっすから、後ろにいるその子をウチらにくれないっすかね? 序列第10位 レベル6千手潜生サハスラブジャさん?」

 ……。
 ま~た、変な名前で呼ばれているし……。

「それは出来ない。あなたテロリストにニネットちゃんは渡せない」

 活発な少女はその言葉を聞いて、自分の両拳をぶつけた。

「よっしゃ!! いくじゃん!!」

 そして、ニット帽の少女が生成した短剣を手に取った。
 野球の投手のように振りかぶる。

「超!! 筋!! 肉ぅぅぅ!!!!」

 足裏で地面を抉るくらいにコンクリートを踏み込んだ。
 その短剣を私たちに向かって

「やばっ!!」

 剣がこっちに飛んでくる!!

 私は影から大量に腕を出して、『壁』を作成した。
 路地裏をビッシリ埋め尽くすように。

 影の手は普通の人間くらいの力、耐久力しかないので、1本では当然その剣を受け止めきれない。
 なので、腕たちをらせん状に捻じって全体の耐久性を向上させる。

 地面から海藻みたいに腕が出現し、しかし次々と現れるため、うねうねとはならずギチギチとひしめき合う。

 彼女がどんどん黒で埋め尽くされていき、声がだけがこちらに聞こえた。

「スロォォォォ!!!!!」

 投擲された。

 ザクザクザクザクザクザク!!!!

 大量の腕が切断される音がする。
 短剣は『壁』の中間あたりでストップした。

「あれ? 意外と強いじゃん!」

 腕の向こうから声がする。
 だが1度では終わらない。

「次、行くじゃん!! 次々!! 超!! 筋!! 肉ぅぅぅぅ!!!!」

 私は即座に壁の入れ替えをする。
 切断された腕は影に戻り、新品の腕を影から引っ張り出して。
 もっともっとギチギチに詰め切って、となりの壁にめり込ませるくらいに。

「スロぉぉぉぉ!!!!!」

 腕が切断されていく。

 それについてはまぁ問題ない。
 でも、このまま腕を生成→切断の応酬の繰り返しでは埒が明かない。
 
 こっちから拘束するか……

 少し壁を開けて、彼女たちを見る。

 3人の少女の陣形は、「スロぉぉ!」をしている少女と剣を生成している少女が手前側、黒髪メガネ少女が奥側。
 
 おどおどしている彼女は、「レベル6」や「序列第10位」とこちらを警戒していたのにも拘わらず、ショッピングモールの方を見ており、十分ながあった。

 チャンス!
 今のうちに彼女を拘束してしまおう!

 黒髪少女の後ろに腕を出現させ、口を塞ぎ、ぐるぐる巻きにして全身を拘束する。
 気づくときには既に遅く、「んー!!」と言って暴れているけど、もうダメ。
 
 申し訳ないけど、人質になってもらって……

「捕まってんじゃん!」

 投擲少女は後ろを振り返り、影の腕をで強引に、ブチブチと音を立てながら引き剥がした。

 わーお。
 影って一般人くらいの強度はあるんだけどなぁ……。

 彼女に捕まったら人体もぐちゃぐちゃのボロボロにされるのかな??
 
 もう1度黒髪少女に目をやる。

「はぁ……はぁ――」
 彼女は影の腕に注目を向けていない。
 何かに驚いているように2人に語りかけた。
「――ヤバイよ! 奴がきた! 早く逃げないと!!」

「Foo! いいタイミングで来るじゃないっすか! お助け王子様登場ってところっすかね? んじゃ、獲物は諦めてさっさと逃げるしかないっすね~」
「せっかくだから月詠黒江のともやって見たかったじゃんよ!!」

 投擲茶髪少女は、ニット帽少女と眼鏡少女を両脇に抱えた。

 そして私の方へ向き
「もっと全力でりにきてくんねーと面白くねぇじゃん! 次は頑張れ!」
 と言う。

 そのまま2人を抱えた状態で、地面を蹴り垂直方向へ飛んだ。
 フライではなくジャンプ。
 近くの建物の屋上に着地し、忍者のように飛んで行ってしまった。

 は?
 彼女たちは一体なんだったんだろう……

「ニネットちゃん、ケガはない? ここまで散々振り回して申し訳ないけど……」

「はい。大丈夫です。あなたを頼ってよかった」

「どういうこと?」

「異能者開発島にいる10人のレベル6。そのうちの1人ですよね? 本城真白さん?」

「……」

 言葉が出なかった。

 確かに私は本城真白で、レベル6で、『人形島登録学生ランキング』というサイト的に10番目のレベル6だということは間違いない。
 けれど、あのサイトには文字だけで顔写真や年齢など、個人を特定できそうなものは全く載っていなかった。

 あのテロリスト達にも言いたいことだけど、なんでこの子が私のことを知っているの?
 個人情報保護法は一体どうなってんの?

 総理大臣に訴えたい。

「つまりニネットちゃんは、あのモール内でを探していた、ということ?」

「はい。私達を助けてくれそうなレベル6の人を探していました」

「それは――」

 次の言葉を出そうとした瞬間、さっきまで3人のテロリストがいた地面が小さく爆発した。
 
「うわっ!」

 とっさに影でガードして、破片を防ぐ。

 戻ってきた?
 爆発?
 なんで?

 そちらを向く。
 黒江が浮いていた。

「ま……しろ。こんな、ところで……なに、してんの……」

 ふよふよとたんぽぽの綿毛みたいなっていた。
 でも、様子がいつもと違う。

 顔は真っ赤で、全身びっしょりなくらい汗をかき、焦点が定まっておらず、空中でフラフラとしていた。
 重症化した時のインフルエンザの時のように。

「あんたどうしたの!?」

 急いで駆け寄り、黒江に手を伸ばす。
 フッと念動力を解除し、落ちてきた。

 身体がマグマで熱されたように熱い。
 本格的に調子が悪い時。

 つい30分前まで元気いっぱいだったのに……
 私が目を離した隙に何が?

「あはは……ちょっと、むり、かも……」

 私に全体重を預け、ぐでーとしている。
 
「無理って何? 一体何があったの?」

 黒江はそのまま目を瞑って寝てしまった。
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