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追及
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「コースケ!!待ってくれよ!」
後ろから、タイスケの声が追いかけてきた。僕は思わず立ち止まってしまう。用はないのにと、必死で自分に言い聞かせてみたが、無駄だった。
「……ハァ、よかった、コースケ、柏原さんに何もされなかったか?なんか、あの人、すっげぇ怒ってたみたいだから……」
「お腹、蹴られた。一発だけだけど」
「ええっ!?マジかよ……ケガはなかったか?」
「別に」
「オ、オレ、柏原さんには勝てない」
「誰も仕返ししてなんて言ってないじゃん」
「そうだけど、コースケが痛い思いしてるのに、放っておけなくて」
タイスケはしゅんとして下を向いた。
「あのさ、放っておけないとか守ってやるとか今まで言ってくれてたけど、どうして僕にそこまでしてくれるの?」
「それは……」と、タイスケは口ごもったが、しばらくして僕を正面から見てきたかと思うと、真剣な面持ちで話しはじめた。
「コースケがオレの兄貴に、似てるからだよ。顔は全然違うけどさ、フンイキとか、性格とかがそっくりなんだ。今は……いないけど」
「へえ」
僕は、思わず小馬鹿にしたような声を出してしまった。
今はいない「兄貴」とは、磯賢治さんの事かと問いただしたくなる。だが、もしそうだとしても、タイスケは認めないだろう。
兄を見殺しにした遼一を殺害したが、その親友である僕が、兄に雰囲気が似ていた。だから、タイスケは僕に懐いた。
その可能性も、あるのだろうか。今は、分からない。
「僕、犯人が分かるまで、もうここには来ないから。じゃあね、タイスケ」
「待てよ!」
タイスケの前から立ち去ろうとした途端、腕を掴まれた。それはとても強い力だった。
「逃げるのかよ。たかが一回蹴られただけで」
タイスケの顔を見る。笑っていない。無表情なその顔を見た限りでは、彼が何を考えているのかは分からなかった。
「そうじゃない。柏原さんを怒らせたなら、もう紅蓮の人達に協力はしてもらえないって思った。だから、あのビルに立ち寄る暇があれば、僕一人で調査をするんだ」
僕が自棄気味に言うと、するりとタイスケが手を離した。そしてその直後に、彼の口から聞こえたのは、舌打ちだった。
「あーそーかよ!だったら勝手にしろ!コースケがもしボコボコにやられても、オレは助けねーし、何か情報を手に入れたとしても、教えてやらねーからな!」
タイスケは大声で怒鳴ったかと思うと、僕をひと睨みし、最後にもう一度舌打ちをして背を向けた。
紅蓮ビルに戻っていく彼は、途中で苛立ちを道端の看板にぶつけていた。耳に障るけたたましい音を辺りに響かせるタイスケを、僕はしばらく見つめていた。
これで良かったんだと、自分に言い聞かせる。
タイスケが犯人だとしたら、これ以上関わるのはごめんだし、そうじゃなかったとしても、僕は彼を疑っているわけだから、いつか彼を傷付けてしまうかもしれない。
これで、良かったんだ。
冷たい風が吹く。
寒いねと呟いても、「あー、さみーな」と答えてくれる人はいない。
これで良かったんだ。
僕は、込み上がってくる思いを抑えるかのように歯を食いしばりながら、タイスケとは正反対の方向へ、歩き出した。
後ろから、タイスケの声が追いかけてきた。僕は思わず立ち止まってしまう。用はないのにと、必死で自分に言い聞かせてみたが、無駄だった。
「……ハァ、よかった、コースケ、柏原さんに何もされなかったか?なんか、あの人、すっげぇ怒ってたみたいだから……」
「お腹、蹴られた。一発だけだけど」
「ええっ!?マジかよ……ケガはなかったか?」
「別に」
「オ、オレ、柏原さんには勝てない」
「誰も仕返ししてなんて言ってないじゃん」
「そうだけど、コースケが痛い思いしてるのに、放っておけなくて」
タイスケはしゅんとして下を向いた。
「あのさ、放っておけないとか守ってやるとか今まで言ってくれてたけど、どうして僕にそこまでしてくれるの?」
「それは……」と、タイスケは口ごもったが、しばらくして僕を正面から見てきたかと思うと、真剣な面持ちで話しはじめた。
「コースケがオレの兄貴に、似てるからだよ。顔は全然違うけどさ、フンイキとか、性格とかがそっくりなんだ。今は……いないけど」
「へえ」
僕は、思わず小馬鹿にしたような声を出してしまった。
今はいない「兄貴」とは、磯賢治さんの事かと問いただしたくなる。だが、もしそうだとしても、タイスケは認めないだろう。
兄を見殺しにした遼一を殺害したが、その親友である僕が、兄に雰囲気が似ていた。だから、タイスケは僕に懐いた。
その可能性も、あるのだろうか。今は、分からない。
「僕、犯人が分かるまで、もうここには来ないから。じゃあね、タイスケ」
「待てよ!」
タイスケの前から立ち去ろうとした途端、腕を掴まれた。それはとても強い力だった。
「逃げるのかよ。たかが一回蹴られただけで」
タイスケの顔を見る。笑っていない。無表情なその顔を見た限りでは、彼が何を考えているのかは分からなかった。
「そうじゃない。柏原さんを怒らせたなら、もう紅蓮の人達に協力はしてもらえないって思った。だから、あのビルに立ち寄る暇があれば、僕一人で調査をするんだ」
僕が自棄気味に言うと、するりとタイスケが手を離した。そしてその直後に、彼の口から聞こえたのは、舌打ちだった。
「あーそーかよ!だったら勝手にしろ!コースケがもしボコボコにやられても、オレは助けねーし、何か情報を手に入れたとしても、教えてやらねーからな!」
タイスケは大声で怒鳴ったかと思うと、僕をひと睨みし、最後にもう一度舌打ちをして背を向けた。
紅蓮ビルに戻っていく彼は、途中で苛立ちを道端の看板にぶつけていた。耳に障るけたたましい音を辺りに響かせるタイスケを、僕はしばらく見つめていた。
これで良かったんだと、自分に言い聞かせる。
タイスケが犯人だとしたら、これ以上関わるのはごめんだし、そうじゃなかったとしても、僕は彼を疑っているわけだから、いつか彼を傷付けてしまうかもしれない。
これで、良かったんだ。
冷たい風が吹く。
寒いねと呟いても、「あー、さみーな」と答えてくれる人はいない。
これで良かったんだ。
僕は、込み上がってくる思いを抑えるかのように歯を食いしばりながら、タイスケとは正反対の方向へ、歩き出した。
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