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シルベスの思惑
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シルベスは、執務室で一人、密書を眺めていた。
「まさか、こんな事になるとはな…何故、隠し通せると思ってしまったのだろう…」
王宮から来た使者が持って来た密書には、こう書かれてあった。
シルベス・オルターナ公爵の前妻であるキャサリン皇弟妃が、エレイン・フルールはマルゲリーター・オルターナと双子である事を認めた。
依ってエレインを公爵家の嫡子とし、国王生誕祝賀会終了後に住まいを移す事となる。
それまでに受け入れ準備を整えられなかった場合は、厳罰に処す。
皇弟妃はエレインとルーカスの後ろ盾となる事を明言し、親権と養育権が皇弟妃に移った為、新たに皇族としての身分が与えられた事を報告する。
尚、ルーカスについては、公爵家の次期継承者である事に変わりは無い。
帝国と王国の友好関係を末永く続ける為には二人の身の安全を最優先にし、万が一傷つく事があれば罪人だけではなく、オルターナ公爵夫妻も重罪人とし極刑に処す。
各貴族家へ通達されるまでは、一切の口外を禁じ、守らなかった場合も極刑に処す。
国王の生誕祝賀会が刻一刻と迫って来る中で、公爵はエレインを迎え入れた後の事を考えていた。
事実を知ったらアマンダがエレインに何をするか分からない為、生誕祭が終わったら別邸に押し込む算段でいるが、問題はマルゲリーターであった。
エレインが移り住んで来たら、必ず危害を加える事が想像出来る。
アマンダと共に別邸へ押し込みたいところだが、王家の許可なく勝手に移動させる事が出来なくなってしまったのだ。
王家は何も知らないマルゲリーターを、どう扱うつもりでいるのか、シルベスには理解出来なかったのである。
現在公爵家は二階をメインに使っており、三階は先代公爵夫妻が使っていた居室がそのまま残されている。
公爵が三階に上がらなかったのは、単に引っ越しが面倒くさかったからだ。
出来るだけマルゲリーターとの接触を避けるために、エレインの部屋は三階に造る事にし、ルーカスも三階に移ると言っており二人の部屋の為のリフォームが行われる事になった。
シルベスは、別邸に置いていた調度品を、全て本邸の三階へと移した。
以前キャサリンが、輿入れ道具として帝国から持って来て使っていた物が、そのまま残されていたのである。
離縁して出て行く時に、全て娘に渡して欲しいと、置手紙があったのだ。
シルベスはエレインを捨てた後で手紙を読んだのだが、まさかそんな事が書かれているとは思ってもいなかったので、舌打ちをしていた。
そのまま置いて行った物は売り払うつもりでいたのだが、処分出来ず仕方が無いので手入れだけはさせていたのである。
キャサリンが持って来た物は、帝国で造られた一点物である事を知っていたのだ。
美術品も著名な作家の物ばかりで、オークションに出せばどれ程の値が付くか分からない。
売り飛ばしてしまえば、直ぐにキャサリンの耳に入る事になる為、置きっ放しにしていたのが功を奏した形になっている。
もしも本邸へ移し、アマンダやマルゲリーターの部屋や、目に付く場所に置いていたならば、今頃は瓦礫となっていただろう。
あの当時はキャサリンを憎んでいた事もあり、そんな女性が使用していた物を、愛する二人に使わせるつもりはなかったのだ。
目に付く場所に、置いておきたくなかったと言うのが、本音でもある。
別邸を空にし、国王生誕祝賀会へ参加している間に、アマンダの部屋にある調度品を運び込ませる算段をルーカスがしている。
当然だがアマンダは二度と別邸から出る事は無い為、部屋着を数枚だけ用意はするが、ドレス等は全て売り払うつもりでもいる。
準備は着々と進んでいるが、それをアマンダとマルゲリーターに悟られない様にするには、随分と骨が折れた。
アマンダとマルゲリーターには、ルーカスが三階に上がる事だけを、伝えている。
元より公爵家の家政には興味も無かったので、アマンダは国王生誕祝賀会で、久し振りにパーティへ参加出来る事の方が気になっている様だった。
マルゲリーターは、自分の部屋をリフォームするのが先だと怒っており、婚約が破棄される事には気付いていない様子だった。
アルフレッドから婚約者としての義務を一切放棄された事は伝えたので、一般常識がある者ならば気付くと思うのだが、残念ながら分かっていないのだ。
そんな二人を見ていると、マルゲリーターはともかく、アマンダは何を考えているのだろうと首を傾げたくなった。
シルベスはルーカスに爵位を譲った後で、庶子を嫡子として偽った事への制裁を受けるのだと、理解している。
キャサリンは双子だと明言しておきながら、マルゲリーターの後ろ盾にはならない事で、実子では無い事を表明したのだ。
それは同時に、マルゲリーターが嫡子ではない事を、意味している。
直ぐにオルターナ公爵夫妻が制裁を受けなかったのは、王家が公爵家を無傷のままルーカスの為に残す事を考えているからだった。
ルーカスが学園を卒業し、公爵位を譲渡するまでは生かされるだろうが、残された時間は一年も無いのだ。
その間に何とか極刑から免れる方法は無いかと、シルベスは考えていた。
アルフレッドの次の婚約者がエレインになるのならば、親が犯罪者と言うのは王家としても具合が悪い。
ましてルーカスは、アルフレッドから望まれる側近でもあるのだ。
息子と娘が王家と親密な関係を築いているのならば、そこに逃げ道が隠されているのではないかと、一抹の希望を胸に抱くのであった。
しかしシルベスは、国王の使者が持って来た書状にこう記されていた事に、気付いてはいなかったのである。
【四、ルーカスの卒業後、オルターナ公爵位を爵命する】
「まさか、こんな事になるとはな…何故、隠し通せると思ってしまったのだろう…」
王宮から来た使者が持って来た密書には、こう書かれてあった。
シルベス・オルターナ公爵の前妻であるキャサリン皇弟妃が、エレイン・フルールはマルゲリーター・オルターナと双子である事を認めた。
依ってエレインを公爵家の嫡子とし、国王生誕祝賀会終了後に住まいを移す事となる。
それまでに受け入れ準備を整えられなかった場合は、厳罰に処す。
皇弟妃はエレインとルーカスの後ろ盾となる事を明言し、親権と養育権が皇弟妃に移った為、新たに皇族としての身分が与えられた事を報告する。
尚、ルーカスについては、公爵家の次期継承者である事に変わりは無い。
帝国と王国の友好関係を末永く続ける為には二人の身の安全を最優先にし、万が一傷つく事があれば罪人だけではなく、オルターナ公爵夫妻も重罪人とし極刑に処す。
各貴族家へ通達されるまでは、一切の口外を禁じ、守らなかった場合も極刑に処す。
国王の生誕祝賀会が刻一刻と迫って来る中で、公爵はエレインを迎え入れた後の事を考えていた。
事実を知ったらアマンダがエレインに何をするか分からない為、生誕祭が終わったら別邸に押し込む算段でいるが、問題はマルゲリーターであった。
エレインが移り住んで来たら、必ず危害を加える事が想像出来る。
アマンダと共に別邸へ押し込みたいところだが、王家の許可なく勝手に移動させる事が出来なくなってしまったのだ。
王家は何も知らないマルゲリーターを、どう扱うつもりでいるのか、シルベスには理解出来なかったのである。
現在公爵家は二階をメインに使っており、三階は先代公爵夫妻が使っていた居室がそのまま残されている。
公爵が三階に上がらなかったのは、単に引っ越しが面倒くさかったからだ。
出来るだけマルゲリーターとの接触を避けるために、エレインの部屋は三階に造る事にし、ルーカスも三階に移ると言っており二人の部屋の為のリフォームが行われる事になった。
シルベスは、別邸に置いていた調度品を、全て本邸の三階へと移した。
以前キャサリンが、輿入れ道具として帝国から持って来て使っていた物が、そのまま残されていたのである。
離縁して出て行く時に、全て娘に渡して欲しいと、置手紙があったのだ。
シルベスはエレインを捨てた後で手紙を読んだのだが、まさかそんな事が書かれているとは思ってもいなかったので、舌打ちをしていた。
そのまま置いて行った物は売り払うつもりでいたのだが、処分出来ず仕方が無いので手入れだけはさせていたのである。
キャサリンが持って来た物は、帝国で造られた一点物である事を知っていたのだ。
美術品も著名な作家の物ばかりで、オークションに出せばどれ程の値が付くか分からない。
売り飛ばしてしまえば、直ぐにキャサリンの耳に入る事になる為、置きっ放しにしていたのが功を奏した形になっている。
もしも本邸へ移し、アマンダやマルゲリーターの部屋や、目に付く場所に置いていたならば、今頃は瓦礫となっていただろう。
あの当時はキャサリンを憎んでいた事もあり、そんな女性が使用していた物を、愛する二人に使わせるつもりはなかったのだ。
目に付く場所に、置いておきたくなかったと言うのが、本音でもある。
別邸を空にし、国王生誕祝賀会へ参加している間に、アマンダの部屋にある調度品を運び込ませる算段をルーカスがしている。
当然だがアマンダは二度と別邸から出る事は無い為、部屋着を数枚だけ用意はするが、ドレス等は全て売り払うつもりでもいる。
準備は着々と進んでいるが、それをアマンダとマルゲリーターに悟られない様にするには、随分と骨が折れた。
アマンダとマルゲリーターには、ルーカスが三階に上がる事だけを、伝えている。
元より公爵家の家政には興味も無かったので、アマンダは国王生誕祝賀会で、久し振りにパーティへ参加出来る事の方が気になっている様だった。
マルゲリーターは、自分の部屋をリフォームするのが先だと怒っており、婚約が破棄される事には気付いていない様子だった。
アルフレッドから婚約者としての義務を一切放棄された事は伝えたので、一般常識がある者ならば気付くと思うのだが、残念ながら分かっていないのだ。
そんな二人を見ていると、マルゲリーターはともかく、アマンダは何を考えているのだろうと首を傾げたくなった。
シルベスはルーカスに爵位を譲った後で、庶子を嫡子として偽った事への制裁を受けるのだと、理解している。
キャサリンは双子だと明言しておきながら、マルゲリーターの後ろ盾にはならない事で、実子では無い事を表明したのだ。
それは同時に、マルゲリーターが嫡子ではない事を、意味している。
直ぐにオルターナ公爵夫妻が制裁を受けなかったのは、王家が公爵家を無傷のままルーカスの為に残す事を考えているからだった。
ルーカスが学園を卒業し、公爵位を譲渡するまでは生かされるだろうが、残された時間は一年も無いのだ。
その間に何とか極刑から免れる方法は無いかと、シルベスは考えていた。
アルフレッドの次の婚約者がエレインになるのならば、親が犯罪者と言うのは王家としても具合が悪い。
ましてルーカスは、アルフレッドから望まれる側近でもあるのだ。
息子と娘が王家と親密な関係を築いているのならば、そこに逃げ道が隠されているのではないかと、一抹の希望を胸に抱くのであった。
しかしシルベスは、国王の使者が持って来た書状にこう記されていた事に、気付いてはいなかったのである。
【四、ルーカスの卒業後、オルターナ公爵位を爵命する】
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