2 / 16
連れて行くのは、妹だけ
しおりを挟む
両親から愛情を貰う事を諦めた私は、ひたすら勉学に励み、父の執務を手伝う様になっていた。
そして、婚期を迎えた私達姉妹には、沢山招待状が来るようになった。
母は、毎日の様にデイジーだけ連れて、パーティへ出かけて行く。
いい加減にして欲しい。
母の実家である侯爵家からの援助だけでは、お母様のドレス代を賄い切れなくなっている。
デイジーのドレスだって、仕立て過ぎだわ。
お母様には、毎回請求書を見せているのに、まるで理解していない。
「何時迄、侯爵令嬢のつもりでいるのかしら?」
お婆様がよく言っていたけれど、本当に教養が無さすぎる。
公爵夫人どころか、伯爵夫人だって無理よ。
お爺様が借金さえしなければ、お父様だって別の人を娶っていたと思うもの。
デイジーは、大丈夫なのかしら?
お母様の様になってしまったら、面倒を見切れる自信がないわ。
「マーガレット、貴方は留守番よ。陰気臭い娘なんて、恥ずかしくて連れて歩けないわ」
「お姉様の代わりに、私が素敵なお婿さんを見つけて来るわね」
そう言って今日も、妹だけを連れて母は行ってしまった。
「お婿さんて…爵位を継ぐのは私なのに、デイジーは何を言っているのかしら」
私だって綺麗なドレスを着て、パーティへ行ってみたいのに…
でも仕方ないわね。
私はお父様がお決めになった方と、結婚するのだもの。
デイジーの様に、気に入った方を見つけたって、無意味だわ。
出来るなら、お父様の様に、真面目にお仕事をしてくれる方が良いわね。
お爺様の様な方だったら、伯爵家は間違いなく没落してしまうもの。
妹がパーティから戻ると、何時も何かしら私に用事を言いつけて来る様になった。
「お姉様、来週までに刺繍を、しておいてちょうだい。ハンカチの持ち主は、メモしてあるから、イニシャルを間違えないでよね」
「何故私が知らない人のハンカチに、刺繍をしなければならないの?」
「余計な事は、聞かなくて良いのよ。来週のパーティで渡す約束をしたの、分かった?さっさと仕上げてよね」
「でも…」
バタンと、扉を閉めて、妹は出て行ってしまった。
「引き受けたのなら、自分で刺繍したら良いのに…」
私は執務の合間に、ハンカチに刺繍を施していった。
手仕事は好き、嫌な事も、寂しい気持ちも忘れられる。
受け取った人が喜ぶ姿を想像しながら、刺繍を施していたら、没頭し過ぎたみたい。
「マーガレット、休憩は終わりだ。刺繍は後にしなさい」
「はい、すみません、お父様」
叱られてしまったわ…
妹の要求は、パーティに参加する度、酷くなっていった。
「無理だわ、デイジー。私には執務があるのよ、こんなに沢山のハンカチに、刺繍をするなんて…」
「五月蠅いわね!お母様に嫌われている癖に、私に口答えしないで。出来なかったら、許さないからね」
バタンっと、大きな音を立てて、扉を閉めて出て行ってしまった…
「もう少し、静かに出来ないのかしら」
置いて行かれた、山積みのハンカチを見る。
「いったい何枚あるの?数えるのも億劫になるわ。執務が無かったとしても、この量は無理よ。どうしてこんなに沢山の頼み事を、引き受けて来たのかしら?」
仕方の無い子。出来るだけ頑張ってみるけれど、残りは我慢して貰いましょう。
「どうしてよ!出来なかったって、私が恥ずかしい思いをすいるのよ。態とね、態と仕上げなかったんでしょう。自分がパーティに行けなかったからって、酷いわ」
「デイジー、貴方だって分かるでしょう。刺繍は、簡単では無いのよ?頼んで来た方だって、きっと理解して下さるわ。出来るだけ早く仕上げるから、もう安請け合いは止めて頂戴」
キッと私を睨んで、部屋を出て行く、妹の後姿を見送った。
その後も妹が持って来るハンカチの数が減る事は無く、私の技術がメキメキと上がっていった。
今ではお店を持てるのではないかと、思える程の腕前になっている。
そして、婚期を迎えた私達姉妹には、沢山招待状が来るようになった。
母は、毎日の様にデイジーだけ連れて、パーティへ出かけて行く。
いい加減にして欲しい。
母の実家である侯爵家からの援助だけでは、お母様のドレス代を賄い切れなくなっている。
デイジーのドレスだって、仕立て過ぎだわ。
お母様には、毎回請求書を見せているのに、まるで理解していない。
「何時迄、侯爵令嬢のつもりでいるのかしら?」
お婆様がよく言っていたけれど、本当に教養が無さすぎる。
公爵夫人どころか、伯爵夫人だって無理よ。
お爺様が借金さえしなければ、お父様だって別の人を娶っていたと思うもの。
デイジーは、大丈夫なのかしら?
お母様の様になってしまったら、面倒を見切れる自信がないわ。
「マーガレット、貴方は留守番よ。陰気臭い娘なんて、恥ずかしくて連れて歩けないわ」
「お姉様の代わりに、私が素敵なお婿さんを見つけて来るわね」
そう言って今日も、妹だけを連れて母は行ってしまった。
「お婿さんて…爵位を継ぐのは私なのに、デイジーは何を言っているのかしら」
私だって綺麗なドレスを着て、パーティへ行ってみたいのに…
でも仕方ないわね。
私はお父様がお決めになった方と、結婚するのだもの。
デイジーの様に、気に入った方を見つけたって、無意味だわ。
出来るなら、お父様の様に、真面目にお仕事をしてくれる方が良いわね。
お爺様の様な方だったら、伯爵家は間違いなく没落してしまうもの。
妹がパーティから戻ると、何時も何かしら私に用事を言いつけて来る様になった。
「お姉様、来週までに刺繍を、しておいてちょうだい。ハンカチの持ち主は、メモしてあるから、イニシャルを間違えないでよね」
「何故私が知らない人のハンカチに、刺繍をしなければならないの?」
「余計な事は、聞かなくて良いのよ。来週のパーティで渡す約束をしたの、分かった?さっさと仕上げてよね」
「でも…」
バタンと、扉を閉めて、妹は出て行ってしまった。
「引き受けたのなら、自分で刺繍したら良いのに…」
私は執務の合間に、ハンカチに刺繍を施していった。
手仕事は好き、嫌な事も、寂しい気持ちも忘れられる。
受け取った人が喜ぶ姿を想像しながら、刺繍を施していたら、没頭し過ぎたみたい。
「マーガレット、休憩は終わりだ。刺繍は後にしなさい」
「はい、すみません、お父様」
叱られてしまったわ…
妹の要求は、パーティに参加する度、酷くなっていった。
「無理だわ、デイジー。私には執務があるのよ、こんなに沢山のハンカチに、刺繍をするなんて…」
「五月蠅いわね!お母様に嫌われている癖に、私に口答えしないで。出来なかったら、許さないからね」
バタンっと、大きな音を立てて、扉を閉めて出て行ってしまった…
「もう少し、静かに出来ないのかしら」
置いて行かれた、山積みのハンカチを見る。
「いったい何枚あるの?数えるのも億劫になるわ。執務が無かったとしても、この量は無理よ。どうしてこんなに沢山の頼み事を、引き受けて来たのかしら?」
仕方の無い子。出来るだけ頑張ってみるけれど、残りは我慢して貰いましょう。
「どうしてよ!出来なかったって、私が恥ずかしい思いをすいるのよ。態とね、態と仕上げなかったんでしょう。自分がパーティに行けなかったからって、酷いわ」
「デイジー、貴方だって分かるでしょう。刺繍は、簡単では無いのよ?頼んで来た方だって、きっと理解して下さるわ。出来るだけ早く仕上げるから、もう安請け合いは止めて頂戴」
キッと私を睨んで、部屋を出て行く、妹の後姿を見送った。
その後も妹が持って来るハンカチの数が減る事は無く、私の技術がメキメキと上がっていった。
今ではお店を持てるのではないかと、思える程の腕前になっている。
248
お気に入りに追加
305
あなたにおすすめの小説


愛する義兄に憎まれています
ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。
義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。
許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。
2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。
ふわっと設定でサクっと終わります。
他サイトにも投稿。



【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね
祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」
婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。
ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。
その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。
「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」
*****
全18話。
過剰なざまぁはありません。


貴方でなくても良いのです。
豆狸
恋愛
彼が初めて淹れてくれたお茶を口に含むと、舌を刺すような刺激がありました。古い茶葉でもお使いになったのでしょうか。青い瞳に私を映すアントニオ様を傷つけないように、このことは秘密にしておきましょう。

彼女の微笑み
豆狸
恋愛
それでも、どんなに美しいとしても、私は彼女のように邪心のない清らかな微笑みを浮かべるよりも、穢れて苦しんで傷ついてあがいて生きることを選びます。
私以外のだれかを愛しながら──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる