好きだから想いを届けたいんだよ！

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やっぱりここに現れたな

　サッカーコートにいた。チームが練習でよく使う場所だ。
　電車に乗らないと来ることができないはずなのに、駅を利用した記憶さえない。

　Ａ、Ｂ、２面あるピッチのうち、Ａ面は他団体によって使用されている。Ｂ面は空いていた。

　Ａ面にはナイター照明が灯っている。大学生くらいの男女混合チームが、声をかけ合い、ボールを蹴っていた。

　Ｂ面のピッチで、ひとりぽつんと立っていた。握りこぶしをつくる自分がいた。
　目が自然と、サッカーをしている人たちを追っていた。
　足が意図せずに前へ前へと動く。Ａ面とＢ面を隔てる緑色のネットフェンスへ。

　サッカーをもっと近くで見たかった。
　芝を踏みしめるたびに活力みたいなものが足指の一本一本に宿っていく。胸の内で熱い気持ちが嵩を増し、膨ふくらんでいく。

　いきなり背後から肩を叩かれた。

「やっぱりここに現れたな」

　聞き慣れた声、同時に、Ｂ面ピッチにナイター照明が灯った。

　トレーニングウェア姿の風間さんが、同じような服装の孝輔と並んで立っていた。

「予約入れたからね」

　いつものおっとりした調子で孝輔がスマホの画面を見せてきた。

《サッカーピッチＢ面19時―21時》

「19時を過ぎているからフルでは使えないな。まあ、星夜は運動不足だろうから、それぐらいの時間が丁度良いだろう」

　風間さんが屈伸くっしんを始める。
　孝輔も準備運動のため、背負っていたバックパックをおろした。

「星夜もアキレス腱けん伸ばしなよ」

　俺が口を開きかけると、風間さんが声を被かぶせてきた。

「おまえのスマホに何度電話しても通じないし、家にも行ったんだぞ。インターフォンを鳴らしまくった」

　言われて、暫しばらくスマホ画面を目にしていないことを思い出した。おそらくは風間さんに『やめたい』と連絡して以降、まったく。
　バッテリーが少なくなったスマホには、沢山たくさんの着信履歴とＬＩＮＥメッセージが届いていた。チームメイトたちの名前が連なっている。

　画面をスクロールさせる。

『早く元気になれよ』『決勝の日を忘れんなよ』『次回の練習日は――』『一緒に決勝を戦うんだぞ』