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何か、あったのか?
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準決勝の会場に結月は現れなかった。
準決勝どころか、それまでの練習にも、彼女は『体調不良のためしばらく休みます』とグループLINEに書き込み、欠席していた。
「結月はどこが悪いのか? 風邪か? 怪我か?」
試合前、戦術説明とウォーミングアップ時に、風間さんが尋ねてきた。
むしろ今日のここまで、何も訊かずに状況を見守ってくれていた風間さんとチームメイトの気遣いに感謝したかった。
「その、」
フランス、と言葉が出かかる。
「実は……俺も聞かされていないんです」
「そうか――」
風間さんの目は、まだ何かを問いたげだった。俺の顔をまじまじと見続けている。
「何か、あったのか?」
風間さんがゆっくりと眦を下げた。柔和な表情で、風間さんが頷きを示す。
俺は彼の仕草に誘われるように、引き結んでいた唇が開……
「――何も、ありません」
視線を地面の芝へ向けた。
周囲から一切の音が鳴り止む。まるで真空状態だ。
でもそれは、ほんの僅かな間だった。
すぐに、
「そうか」
風間さんが、先ほどと同じセリフを言った。
チームメイトが一斉に息を吸う気配があった。
準決勝どころか、それまでの練習にも、彼女は『体調不良のためしばらく休みます』とグループLINEに書き込み、欠席していた。
「結月はどこが悪いのか? 風邪か? 怪我か?」
試合前、戦術説明とウォーミングアップ時に、風間さんが尋ねてきた。
むしろ今日のここまで、何も訊かずに状況を見守ってくれていた風間さんとチームメイトの気遣いに感謝したかった。
「その、」
フランス、と言葉が出かかる。
「実は……俺も聞かされていないんです」
「そうか――」
風間さんの目は、まだ何かを問いたげだった。俺の顔をまじまじと見続けている。
「何か、あったのか?」
風間さんがゆっくりと眦を下げた。柔和な表情で、風間さんが頷きを示す。
俺は彼の仕草に誘われるように、引き結んでいた唇が開……
「――何も、ありません」
視線を地面の芝へ向けた。
周囲から一切の音が鳴り止む。まるで真空状態だ。
でもそれは、ほんの僅かな間だった。
すぐに、
「そうか」
風間さんが、先ほどと同じセリフを言った。
チームメイトが一斉に息を吸う気配があった。
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