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2話〜神様達の異世界事情〜

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呆然とする私に、目の前(正確には斜め上だが)に座る神様のタルバ様は優しく説明してくれた。
「突然こんな事を言われたら、驚かれるのも無理は有りませんね。
すいませんでした・・・少し長く成りますが、説明をさせて貰っても宜しいですか?」
「あ・・・はい、宜しくお願い致します」
「そのままでは話辛いですね、今降りますので・・・」
そう言うと、タルバ様の乗った半球の舞台がゆっくりと降下して私の前に着地すると、半球部分がそのまま床に沈んでいき、完全に床と同化した。
「お待たせしました、それでは説明させて頂きますね」
そう言って、タルバ様は私が此処に呼ばれた経緯と、ここ最近の天界事情を教えてくださった。
「先ずは貴方の事から・・・世渡善吉さん、享年100歳、天寿の全うお疲れ様でした」
「あ、はい、ありがとう御座います・・・で良いのでしょうか?・・・何だか変な感じで」
「まぁそうでしょうね、普通臨終なされてから声を掛けられる事は無いでしょうし」
タルバ様はクスクス笑いながら続けられた。
「幼少の頃より持ち前の人懐っこさで周りの人達から愛されて育ち、成人してからは根っからの善性と持ち前の社交性で、周りの人達に慕われ助けられ、自分も周りの人達の為に働く人生を送られましたね」
「はい、皆良い人達ばかりで・・・私程度がどれだけ周りの方達の力になれたかわかりませんが、私自身は妻にも巡り会え、子や孫も授かり・・・勿体ない程幸せな人生を送らせて頂きました」
私の言葉に、タルバ様は満足そうに2度3度と頷かれる。
「だからこそ、貴方の魂はそこまで澄んで美しい色をしているのでしょうね」
「そうなのですか?自分の魂・・・魂という物には色があるのですか?」
「ええ、本来地上の人々は、自分を犠牲にしても他の人達に尽くす人を[善人]と呼びますが、その様な人物の魂は自分を抑えて来たが故に、擦り切れ傷だらけになっているのです。
逆に、自分の事しか考えず、傍若無人に振る舞い私腹を肥やして来た様な者の魂は、醜く濁り歪な形をしています」
タルバ様は、最初の魂の時は切なそうな、次の魂の時には、まるで侮蔑を込めた様な表情を浮かべた・・・そして、不意に私に目を向け
「本来満たされた魂を持つ者とは、他人は勿論、自分自身も大切に出来た者の事を言うのです」
「なる程・・・確かに私の人生は、私にとってとても幸福で満たされたものでした・・・周りの方達も同じ思いだと嬉しいのですが」
「大丈夫・・・それ故に、貴方は此処に呼ばれたのですから・・・100歳を超えて天寿を全うし、美しい魂を持ち・・・何より!異世界に召喚も転生もされてない!!」
「・・・はい?」
「転生ですよ!転生!してませんよね?善吉さん」
「え・・・えぇ・・・多分・・・前世の記憶?とか持ってませんし・・・というか、異世界ですか?・・・あの、小説とかにある」
「えぇそうです!その[異世界]で[転生]ですよ!」
今迄の悠然とした雰囲気をかなぐり捨て、大きな声で訴えるタルバ様、その姿に若干気圧されながらも、疑問に思った事を何とか質問出来たのだが、その質問にさえ食い気味に返答してくるタルバ様・・・何やら相当に鬱憤が溜まってる御様子だ。
「・・・オホン、失礼しました。
どうせ善吉さんは同僚になられるのですから、この機会に説明させて頂きますね」
自分が、思ってた以上に取り乱してたのに気付き、タルバ様は居住いを正して説明に入られた。
「実は、貴方の居た地球・・・というか、地球を中心とした空間の他にも、似たような空間というのは沢山のあるんです・・・」
タルバ様の説明によると、私が住んでいた世界の他にも似たような世界が沢山あり、其々数名~数十名の神様が担当として見守って来られたそうな。
だが、神様とて万能では無く、時折空間の裂け目や時空の歪み等を見逃してしまい、その狭間に落ちる人間が居た・・・いわゆる[神隠し]というものだ。
極偶に起こる事故、仕方の無い事の筈だったのだが・・・ある時、地球から別の空間へと落ちた人間が、特殊な力に目覚め、その力を使い、当時その世界で起きていた他種族間の大規模な侵略戦争を終わらせてしまった。
また、別の空間へ落ちた者は、その知識を使い、落ちた世界の文明を大幅に勧めてしまった・・・そこで、世界を担当している神々の一部は思い付いてしまった・・・「他所から人を引っ張って来たら、楽に問題点解決出来るじゃん!」と・・・
「それはまぁ、何とも・・・」
「全く神ともあろうものが情け無い・・・それからは、偶然を装い様々な星から、人々が[神隠し]に遭うようになりました。
自体を重く見た主神陣と天使達はこの観測室を立ち上げ、不用意な神隠しが起こらない様監視をする事にしたのですが・・・」
「上手く行かなかったのですな」
「えぇ、奴等は自分達が監視されてると分かると、地上の人間に様々な方法で異世界転移、異世界転生の存在を伝え始めました。
魔法のある世界では術式による異世界召喚、文明が発達していれば、人間に[アイデアが降りてきた]等の神託まがいの方法で小説等を書かせ、それを媒体にして認知を進め異世界への転移や転生への同調を進める等、それはもうありとあらゆる方法を駆使して目的を遂行しようとして来ました」
説明するタルバ様は説明されながら、うんざりした様な表情をされていました。
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