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貴族編
第53話 地下の牢獄
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「旦那様、お待ちしておりました」
ダイニングルームの扉が開くと、シオンの銀髪が揺れるのが見える。
今日のシオンはいつもと違う。
パーティにでも出かけるのか、ドレスを着てヒールを履いている。
それに続いて数名のメイドと従者ラフィが頭を下げて出迎えてくれる。
きれいなシオンを見ながら、その横を、リィナとルィナを連れて歩く。
「どうぞ、旦那様」とリィナが椅子を引いてくれるので座る。
「失礼致します」とルィナがナプキンを首に巻いてくれる。
美少女たちに出迎えられての食事とは、嬉しい限りだ。
僕が席につくと、「き、きれいだ」とシオンに話しかけると、皆が顔をあげる。
ダイニングテーブルの端所謂、お誕生日席に僕が座り、後ろにはリィナとルィナが控えるように壁際に立っている。
「ありがとうございます」とシオンが気にした風もなく淡々という。
見れば、昼食はシオンだけのようだ。
隣に座り、後ろにはリィナたちと同じようにラフィが控えている。
そして反対、空席の後ろの壁側にはメイドが二人ほど直立不動で立っている。
オードソックスなタイプのメイド服を着ており、一人は紅色の髪をアップにしてリボンを結んでいる。
もう一人は、茶髪のおさげ髪にした古き委員長タイプみたいな感じだ。
二人とも目を閉じ少し顔を俯かせていて顔は整っているから、お人形さんみたいだなぁと思っていると、リィナが耳元で囁いてきた。
「紅髪がサマー、茶髪がジェシカでございます。旦那様」
ほぅ、つまり
「暫定ランクは、Bのメイドです」
ふむ、確かに二人ともお堅さそうだ。
特にジェシカなんて、完全に委員長タイプだもんなぁ。
リィナが離れると、
「一奴隷ごときがお呼びたてしまい申し訳ございません」
なんてシオンが話しかけてきた。
僕は横に座るシオンの手を握る。
シットリとして冷たく、スベスベと滑らかな肌。
紅玉の瞳がこちらを見据える。
相変わらず、宝石のように綺麗な瞳だ。
射し込む陽光が当たれば、サラサラと流れる銀髪が、キラキラと雪の結晶のように輝き、まるでシオン自身が光り輝いてるように思えてしまう。
メイドは、みんな可愛い。
それは事実だ。
だが、シオンに比べればみんな一歩も二歩も劣る。
「いっ!いいい、い、つでもぉももも」
だからだろう、シオンが呼ぶならいつでも行くよ。そんな簡単な言葉もいつも以上に上づってしまう。
それでも、「ありがとうございます」とシオンがはにかむ。
おおう!これは。
シオンが珍しく笑った!
普段、いつも気だるそうに目を細めているか、しかめっ面(それでも美人だ)しか見せない、シオンがほほ笑んでいることは、滅多にない!
今日はすこぶる機嫌がいいのだろう。
こ、これは久しぶりにイチャイチャとエッチできるぞぉ!と先ほど2発したばかりだというのに、チンコが歓喜に踊りたつ。
しょ、食事なんて待ってられない!
僕はシオンの手を引き、股間へと導くが―――――触られることを嫌がる猫のようにするりと手を引き抜かれてしまう。
くっ、猫のようにしなやかで、そして気難しい。
「お食事前です」
正論だ。だけど・・・・・・。
「そんなお顔をしてもダメです」
どうやら顔に出てしまっているようだ。
どうにかシオンをその気にさせられないかな。
シオンの紅玉の瞳が僕を流し見るように細められる。
ふっと緩む口元が、「どうせなら栄養を取られた後のほうが楽しめんじゃないでしょうか」なんて嘯く。
そ、それって、OK?!ってことかな。
「ハァハァハァハァ」と犬のようにシオンを見つめると、ふぅーというシオンがいつものため息をつく。
「旦那様を連れていきたい場所があります。そこに行ってからです。そういうお約束です」とツンッと鼻をたてる。
そんなお約束なんてした覚えはないが、まぁやれるならなんでもいい。
さっさと要件を終わらせてベッドにGOだぁ!
ダイニングルームの両開き扉が開き、ワゴンで昼食が運ばれてくる。
僕は昼食をかきこむ準備をしつつも、ワゴンのメイドを見る!
髪色は、金髪。
髪型は、ツインテール?!
スレンダーな体つきがオードソックスなメイド服とよく似合っている。
金髪ツインテール、ツンデレ、貧乳ってところか。
テンプレートのてんこ盛りじゃないか、後で名前を確認しておこうと脳に刻む。
配膳は、サマーとジェシカが担当するようだ。
ワゴンに乗せられ来た様々な料理を僕とシオンの元へと運んでくれる。
大皿のそれを、リィナとルィナが食べたいものを取り分けてくれるようだ。
至れり尽くせり。
僕はそれをパクパクと食べ、数回のおかわりを経て昼食を終わらせる。
「では旦那様、昼食後の軽い運動と致しましょう」とシオンが席を立つ。
へっへへへ、待ってました!と僕はシオンの後をドタバタと追った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ベッドと腰振るだけの運動!と行きたかったが、シオンとの約束を守り、あとをついていく。
シオンにラフィ、僕それと途中までの同行を許されたリィナとルィナ。
とあるものを見せたいらしいが、それを見せるかは僕がみてから判断を任すということだった。
というわけでシュッサク城の西の端まで移動する。
シュッサク城の西と東にはそれぞれ塔があり、僕はてっきり見張りか飾りかと思っていたのだがそうじゃないらしい
塔の上は簡易的な居住スペースがあり、要人の軟禁として使われるとか・・・・・・。
そういえば、よくお姫様って塔の上に監禁されてるもんなと思った。
ということは、塔の上に何かいるのか!と思ったがそうじゃないらしい。
シオンとラフィは塔の地下へと進んでいった。
螺旋階段を目を回りそうになりながらぐるりと回ると、行き止まりになる。
「行き止まりだな」とルィナがつぶやいた声が反響する。
「仕掛けがあります」とラフィがこちらを振り返らずに
シオンが何もない壁に手をあて、「―――――」何事かを唱えると、壁がぐにゃりと変形した!?
壁が塔に解けるように消えていき、眼下にはいつの間にか階段が出現していた。
隠し扉というわけか。
なんでこんな仕掛けがと思ったが、シオンは気にせず、下に下りていくので僕もついていく。
下に下りると、石畳だ。
石壁のしっかりとした通路が続いている。
そこで僕は違和感を覚えた。
その正体を確かめるべく、リィナとルィナに視線を送ると、二人も顔を見渡して首を横に振る。
ふむ、どうやら僕の記憶違いではないようだ。
城自体に地下室はB2Fまである。
調理場や、ワインセラー、貯蔵庫などだ。
だが、先日見た城の見取り図には塔の下にこんな空間はなかったはずなのだ。
二人の反応から見ても、間違えないだろう。
とすると、隠しスペースか。
いざという時の脱出路などあってもおかしくはないが、よくこんなところ見つけたなぁと思う。
コツコツと石畳を歩く。
そういえば通路は嫌に明るい。
火・・・・・・似た何かが街灯のように通路に吊るされ、明るくなっている。
マジックアイテムか何かだろうか、そんなことをしていると、通路の風景が変わってきた。
石壁、それに頑丈そうな鉄格子が立ち並ぶスペース。
「これは・・・・・・」
「牢獄か」
リィナとルィナも反応する。
明かな牢獄。
鉄格子の中をのぞき込むが、光届かない深い闇が広がるばかりで何も見えないし、耳をすましてみるが、何も聞こえてはこなかった。
「何も入ってはいませんよ、今は。旦那様、こちらです」
とシオンが気にも留めずズンズン先に進むので、僕もそれを追った。
やがて牢獄とは別のエリアへとでた。
ちょっとしたドーム型の広間で、鉄の見るからに分厚そうな扉が3つほど並んでいる。
「旦那様こちらの扉です。・・・・・・あなたたちはこちらで待っていて」
シオンに手招きされて僕は一番左の扉に行くと、後ろをついてきたリィナとルィナが止められる。
そして、「ラフィ・・・・・・見張っておいて」とシオンが指示する。
「承知しました。シオンお嬢様」とラフィが二人と僕を遮るように間に立つ。
流石にカチンときたのか、「えらく物騒だな」とルィナが対抗してラフィも前に立つ。
「ええ、旦那様に何か危険なことがあるんじゃないかと心配だわ」とリィナもニコニコしているが目が笑っていないというやつだ。
「そのようなことは何もありません。少しお話でもしてましょう、メイド同士」とラフィがことなげにいう。
「話すことなど何もないがな」
「ええ、お話は食事の際にでもお聞きします」
「・・・・・・あなたたち。いい加減になさい」とラフィが金眼を細め、語気を強める。
「従者でしょシオンお嬢様の言うことが聞けないの?」
鋭いに眼光、僕が睨まれているわけでもないのに、背中に緊張が走る。
それをマジかで喰らっているリィナとルィナはたまったものじゃないのだろう。
二人で手をつないで震えている。
でも、「わ、私たち、だ、旦那様の従者です!」と震える唇で叫ぶ。
たれ目のリィナがぎゅっと唇を噛んで懸命にラフィを睨み返している。
す、すごい勇気だなと思う僕の耳に、命令が囁かれる。
「旦那様、あの娘に待つように言ってあげて」
「ま、待って!」と反射的に叫ぶ。
「聞いての通りよ、私たちは待機よ」とラフィが言うと、「承知しました」とリィナが悔しそうに下がる。
それを確認して、シオンが「さぁ行きましょう旦那様」と扉を開いた。
僕はシオンに案内されるまま、扉をくぐる。
扉の中は、真っ暗だ。
その闇の中から「ちっ、やっときたのかよ。早く飯を寄越せよ」という声が聞えてる。
声から察するに、女の子のようだが。
バタンと、扉が重くとざれるのを耳と背中で聞くと、ボゥという音ともに部屋に灯りが灯る。
そこには、――――。
「な、んだよ。そいつ・・・・・・はぁ飯じゃねーのかよ」
と不平そうに繋がれた鎖をジャラジャラと成らす赤毛の獣人族の少女がいた。
赤い瞳を細め、犬歯を剝き出しにして警戒からかうなりごえをあげている。
近付けば、噛みついてきそうだ。
尻尾の毛も、逆立っている気がするし。
ちらりとシオンを見る、この娘が見せたかったものだろうか。
「この娘、ミーアという名前で」
どうやら、そのようだ。
そして、次の一言で驚いた。
「ロガリエス盗賊の生き残りです」
な、なんだって!
淡々というシオン。
確か報告では、ロガリエス盗賊はほとんどが死んでいて、わずかな生き残りは帝都の詰め所に送ったという話だったが・・・・・・。
「ラフィが捕まえました。私の独自の判断で1か月ほど留置しておりました」
そ、そんなことして大丈夫なのか?!
犯罪者を匿っていることだろう?
こちらの帝国法がどうなっているか分からないが、あまりいいようには思えない。
だが、
シオンがこちらに頭を下げる。
「黙っていて申し訳ございません。旦那様の仕置きは、あとでいくらでも受けさせていただきます」
その言葉に、そんな不安が吹き飛ぶ。
いくらでもお仕置きしていいだと!!
ハァハァハァ、じゃあいつもなら出来ないあんなプレイも、こんなプレイも・・・・・・妄想が捗る。
「ごちゃごちゃ言ってないで、早く飯を寄越せよ!残飯ばかり寄越しやがってくそが!」
ジャラジャラと部屋に鎖がこすれる音が木霊する。
「ミーア、もう一度聞くわ。盗賊団の隠れ家全部言いなさい」
「ぺっ!」とミーアの唾がこちらの足元まで飛んでくる。
それが答えのようだ。
「実は今日、旦那様にお願いしたいことがあって、ここまでご足労頂きました」
というと、
「実はロガリエス盗賊の残党狩りをするべくアジトの場所を聞いているのですが」
グルゥルルルルルとミーアが唸る。
「この通り尋問がうまくいかず、今日は」
シオンの顔を近づけ、耳元で囁く。
それは、僕の脳を、魂を、揺らす。
「今日は、拷問を手伝っていただきたいのです」
ご、拷問?!
そのフレーズに、チンコが跳ねる。
そ、それは一体どんな奴だ?
言わないとハメる!みたいなのかな、ゴクリとつばを飲み込むとシオンの顔が笑った気がした。
ダイニングルームの扉が開くと、シオンの銀髪が揺れるのが見える。
今日のシオンはいつもと違う。
パーティにでも出かけるのか、ドレスを着てヒールを履いている。
それに続いて数名のメイドと従者ラフィが頭を下げて出迎えてくれる。
きれいなシオンを見ながら、その横を、リィナとルィナを連れて歩く。
「どうぞ、旦那様」とリィナが椅子を引いてくれるので座る。
「失礼致します」とルィナがナプキンを首に巻いてくれる。
美少女たちに出迎えられての食事とは、嬉しい限りだ。
僕が席につくと、「き、きれいだ」とシオンに話しかけると、皆が顔をあげる。
ダイニングテーブルの端所謂、お誕生日席に僕が座り、後ろにはリィナとルィナが控えるように壁際に立っている。
「ありがとうございます」とシオンが気にした風もなく淡々という。
見れば、昼食はシオンだけのようだ。
隣に座り、後ろにはリィナたちと同じようにラフィが控えている。
そして反対、空席の後ろの壁側にはメイドが二人ほど直立不動で立っている。
オードソックスなタイプのメイド服を着ており、一人は紅色の髪をアップにしてリボンを結んでいる。
もう一人は、茶髪のおさげ髪にした古き委員長タイプみたいな感じだ。
二人とも目を閉じ少し顔を俯かせていて顔は整っているから、お人形さんみたいだなぁと思っていると、リィナが耳元で囁いてきた。
「紅髪がサマー、茶髪がジェシカでございます。旦那様」
ほぅ、つまり
「暫定ランクは、Bのメイドです」
ふむ、確かに二人ともお堅さそうだ。
特にジェシカなんて、完全に委員長タイプだもんなぁ。
リィナが離れると、
「一奴隷ごときがお呼びたてしまい申し訳ございません」
なんてシオンが話しかけてきた。
僕は横に座るシオンの手を握る。
シットリとして冷たく、スベスベと滑らかな肌。
紅玉の瞳がこちらを見据える。
相変わらず、宝石のように綺麗な瞳だ。
射し込む陽光が当たれば、サラサラと流れる銀髪が、キラキラと雪の結晶のように輝き、まるでシオン自身が光り輝いてるように思えてしまう。
メイドは、みんな可愛い。
それは事実だ。
だが、シオンに比べればみんな一歩も二歩も劣る。
「いっ!いいい、い、つでもぉももも」
だからだろう、シオンが呼ぶならいつでも行くよ。そんな簡単な言葉もいつも以上に上づってしまう。
それでも、「ありがとうございます」とシオンがはにかむ。
おおう!これは。
シオンが珍しく笑った!
普段、いつも気だるそうに目を細めているか、しかめっ面(それでも美人だ)しか見せない、シオンがほほ笑んでいることは、滅多にない!
今日はすこぶる機嫌がいいのだろう。
こ、これは久しぶりにイチャイチャとエッチできるぞぉ!と先ほど2発したばかりだというのに、チンコが歓喜に踊りたつ。
しょ、食事なんて待ってられない!
僕はシオンの手を引き、股間へと導くが―――――触られることを嫌がる猫のようにするりと手を引き抜かれてしまう。
くっ、猫のようにしなやかで、そして気難しい。
「お食事前です」
正論だ。だけど・・・・・・。
「そんなお顔をしてもダメです」
どうやら顔に出てしまっているようだ。
どうにかシオンをその気にさせられないかな。
シオンの紅玉の瞳が僕を流し見るように細められる。
ふっと緩む口元が、「どうせなら栄養を取られた後のほうが楽しめんじゃないでしょうか」なんて嘯く。
そ、それって、OK?!ってことかな。
「ハァハァハァハァ」と犬のようにシオンを見つめると、ふぅーというシオンがいつものため息をつく。
「旦那様を連れていきたい場所があります。そこに行ってからです。そういうお約束です」とツンッと鼻をたてる。
そんなお約束なんてした覚えはないが、まぁやれるならなんでもいい。
さっさと要件を終わらせてベッドにGOだぁ!
ダイニングルームの両開き扉が開き、ワゴンで昼食が運ばれてくる。
僕は昼食をかきこむ準備をしつつも、ワゴンのメイドを見る!
髪色は、金髪。
髪型は、ツインテール?!
スレンダーな体つきがオードソックスなメイド服とよく似合っている。
金髪ツインテール、ツンデレ、貧乳ってところか。
テンプレートのてんこ盛りじゃないか、後で名前を確認しておこうと脳に刻む。
配膳は、サマーとジェシカが担当するようだ。
ワゴンに乗せられ来た様々な料理を僕とシオンの元へと運んでくれる。
大皿のそれを、リィナとルィナが食べたいものを取り分けてくれるようだ。
至れり尽くせり。
僕はそれをパクパクと食べ、数回のおかわりを経て昼食を終わらせる。
「では旦那様、昼食後の軽い運動と致しましょう」とシオンが席を立つ。
へっへへへ、待ってました!と僕はシオンの後をドタバタと追った。
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ベッドと腰振るだけの運動!と行きたかったが、シオンとの約束を守り、あとをついていく。
シオンにラフィ、僕それと途中までの同行を許されたリィナとルィナ。
とあるものを見せたいらしいが、それを見せるかは僕がみてから判断を任すということだった。
というわけでシュッサク城の西の端まで移動する。
シュッサク城の西と東にはそれぞれ塔があり、僕はてっきり見張りか飾りかと思っていたのだがそうじゃないらしい
塔の上は簡易的な居住スペースがあり、要人の軟禁として使われるとか・・・・・・。
そういえば、よくお姫様って塔の上に監禁されてるもんなと思った。
ということは、塔の上に何かいるのか!と思ったがそうじゃないらしい。
シオンとラフィは塔の地下へと進んでいった。
螺旋階段を目を回りそうになりながらぐるりと回ると、行き止まりになる。
「行き止まりだな」とルィナがつぶやいた声が反響する。
「仕掛けがあります」とラフィがこちらを振り返らずに
シオンが何もない壁に手をあて、「―――――」何事かを唱えると、壁がぐにゃりと変形した!?
壁が塔に解けるように消えていき、眼下にはいつの間にか階段が出現していた。
隠し扉というわけか。
なんでこんな仕掛けがと思ったが、シオンは気にせず、下に下りていくので僕もついていく。
下に下りると、石畳だ。
石壁のしっかりとした通路が続いている。
そこで僕は違和感を覚えた。
その正体を確かめるべく、リィナとルィナに視線を送ると、二人も顔を見渡して首を横に振る。
ふむ、どうやら僕の記憶違いではないようだ。
城自体に地下室はB2Fまである。
調理場や、ワインセラー、貯蔵庫などだ。
だが、先日見た城の見取り図には塔の下にこんな空間はなかったはずなのだ。
二人の反応から見ても、間違えないだろう。
とすると、隠しスペースか。
いざという時の脱出路などあってもおかしくはないが、よくこんなところ見つけたなぁと思う。
コツコツと石畳を歩く。
そういえば通路は嫌に明るい。
火・・・・・・似た何かが街灯のように通路に吊るされ、明るくなっている。
マジックアイテムか何かだろうか、そんなことをしていると、通路の風景が変わってきた。
石壁、それに頑丈そうな鉄格子が立ち並ぶスペース。
「これは・・・・・・」
「牢獄か」
リィナとルィナも反応する。
明かな牢獄。
鉄格子の中をのぞき込むが、光届かない深い闇が広がるばかりで何も見えないし、耳をすましてみるが、何も聞こえてはこなかった。
「何も入ってはいませんよ、今は。旦那様、こちらです」
とシオンが気にも留めずズンズン先に進むので、僕もそれを追った。
やがて牢獄とは別のエリアへとでた。
ちょっとしたドーム型の広間で、鉄の見るからに分厚そうな扉が3つほど並んでいる。
「旦那様こちらの扉です。・・・・・・あなたたちはこちらで待っていて」
シオンに手招きされて僕は一番左の扉に行くと、後ろをついてきたリィナとルィナが止められる。
そして、「ラフィ・・・・・・見張っておいて」とシオンが指示する。
「承知しました。シオンお嬢様」とラフィが二人と僕を遮るように間に立つ。
流石にカチンときたのか、「えらく物騒だな」とルィナが対抗してラフィも前に立つ。
「ええ、旦那様に何か危険なことがあるんじゃないかと心配だわ」とリィナもニコニコしているが目が笑っていないというやつだ。
「そのようなことは何もありません。少しお話でもしてましょう、メイド同士」とラフィがことなげにいう。
「話すことなど何もないがな」
「ええ、お話は食事の際にでもお聞きします」
「・・・・・・あなたたち。いい加減になさい」とラフィが金眼を細め、語気を強める。
「従者でしょシオンお嬢様の言うことが聞けないの?」
鋭いに眼光、僕が睨まれているわけでもないのに、背中に緊張が走る。
それをマジかで喰らっているリィナとルィナはたまったものじゃないのだろう。
二人で手をつないで震えている。
でも、「わ、私たち、だ、旦那様の従者です!」と震える唇で叫ぶ。
たれ目のリィナがぎゅっと唇を噛んで懸命にラフィを睨み返している。
す、すごい勇気だなと思う僕の耳に、命令が囁かれる。
「旦那様、あの娘に待つように言ってあげて」
「ま、待って!」と反射的に叫ぶ。
「聞いての通りよ、私たちは待機よ」とラフィが言うと、「承知しました」とリィナが悔しそうに下がる。
それを確認して、シオンが「さぁ行きましょう旦那様」と扉を開いた。
僕はシオンに案内されるまま、扉をくぐる。
扉の中は、真っ暗だ。
その闇の中から「ちっ、やっときたのかよ。早く飯を寄越せよ」という声が聞えてる。
声から察するに、女の子のようだが。
バタンと、扉が重くとざれるのを耳と背中で聞くと、ボゥという音ともに部屋に灯りが灯る。
そこには、――――。
「な、んだよ。そいつ・・・・・・はぁ飯じゃねーのかよ」
と不平そうに繋がれた鎖をジャラジャラと成らす赤毛の獣人族の少女がいた。
赤い瞳を細め、犬歯を剝き出しにして警戒からかうなりごえをあげている。
近付けば、噛みついてきそうだ。
尻尾の毛も、逆立っている気がするし。
ちらりとシオンを見る、この娘が見せたかったものだろうか。
「この娘、ミーアという名前で」
どうやら、そのようだ。
そして、次の一言で驚いた。
「ロガリエス盗賊の生き残りです」
な、なんだって!
淡々というシオン。
確か報告では、ロガリエス盗賊はほとんどが死んでいて、わずかな生き残りは帝都の詰め所に送ったという話だったが・・・・・・。
「ラフィが捕まえました。私の独自の判断で1か月ほど留置しておりました」
そ、そんなことして大丈夫なのか?!
犯罪者を匿っていることだろう?
こちらの帝国法がどうなっているか分からないが、あまりいいようには思えない。
だが、
シオンがこちらに頭を下げる。
「黙っていて申し訳ございません。旦那様の仕置きは、あとでいくらでも受けさせていただきます」
その言葉に、そんな不安が吹き飛ぶ。
いくらでもお仕置きしていいだと!!
ハァハァハァ、じゃあいつもなら出来ないあんなプレイも、こんなプレイも・・・・・・妄想が捗る。
「ごちゃごちゃ言ってないで、早く飯を寄越せよ!残飯ばかり寄越しやがってくそが!」
ジャラジャラと部屋に鎖がこすれる音が木霊する。
「ミーア、もう一度聞くわ。盗賊団の隠れ家全部言いなさい」
「ぺっ!」とミーアの唾がこちらの足元まで飛んでくる。
それが答えのようだ。
「実は今日、旦那様にお願いしたいことがあって、ここまでご足労頂きました」
というと、
「実はロガリエス盗賊の残党狩りをするべくアジトの場所を聞いているのですが」
グルゥルルルルルとミーアが唸る。
「この通り尋問がうまくいかず、今日は」
シオンの顔を近づけ、耳元で囁く。
それは、僕の脳を、魂を、揺らす。
「今日は、拷問を手伝っていただきたいのです」
ご、拷問?!
そのフレーズに、チンコが跳ねる。
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さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
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アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
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※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
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男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
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30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
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