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ダンジョン編
第31話 第六階層
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「よろしゅう頼むわー」
「・・・・・・はい」
肩をばんばん叩きながらに元気に挨拶するレナールに対して、シルフィーが静かに答える。
「後衛が多いと助かるわー」といいながら、八重歯を出して笑うレナール。
今日は妙に機嫌がいいな。
「・・・・・・ちょ、ちょっとあんた」
「・・・・・・はい」
リルが胸を張り、堂々とシルフィーの前に立つ。
身長差があり、見下げるシルフィーと見上げるリル。
リルは目をキッと吊り上げて、口を真一文字にしている。
堂々とした態度だが、虚勢だ。
見るからに緊張しているのが分かる。
対するシルフィーは、たれ目、見下げているからかどことなく暗い表情でリルを見ていて、感情の起伏を感じさせない感じが、若干怖い。
「わ、私はここの2番奴隷よ! あ、あんたより偉いの!」
「・・・・・・」
「だ、だから、私のことはリル姉様と呼びなさい!」
「まったく、おチビはそれに拘るなー」
「う、うるさい!あんたもそう呼びなさいよ!」
「うちは、奴隷ちゃうもんねーべぇーだ!」
下を出してバカにするレナールに、キッーと怒るリル。
それに「はい」と静かにシルフィーが答える。
それで注目が集まる。
果たして、
「よろしくお願いします。リル姉様」と静かに頭を下げるシルフィー。
それに一瞬ぽかんとした、リルだったが、間をまけて満面の笑みを浮かべる。
「そう、そうよ。それでいいのよ。私が魔法で敵を殲滅するんだからちゃんと守りなさいよね!」
「はい、そうさせていただきます」
感情の起伏を感じさせない表情のまま、シルフィーが淡々と答えるようだが、
むっふふとリルはご満悦したようにそれをない胸を張って受け取る。
まぁ仲良くやってもらう分には構わない。
「紹介は終わったんよな!つぎはうちのを見てーや!」
そういいながら、ボロボロの麻布で覆われたものを持ち出すレナール
麻布がボロボロなせいで剣だと分かった。
帰ってきた主人を出迎える犬のように珍しく尻尾がぶんぶん振られている。
「これや!」
じゃっ、じゃあーーーーーん!
という効果音が聞こえてきそうな感じで布が払われ、宙に投げ出される。
そこに現れたのは、一本の黒い剣
先端は三角錐にとがっているが、刀身は平でレイピアのようにまっすぐに伸びて刃は両側について、鍔がついていない独特な剣。
「すごいやろ、例の蜂の剣を鍛えたんや!」とレナールが満面の笑みで剣を渡してくる。
それを受け取る。
原型は針の根元を握り込んでいたが、ちゃんとグリップがついて手になじんだ。
振るとブゥン、という空気を震わすような羽音のような独特な風切り音がした。
剣のことなんて分からないが、それでも握った感じが心地よくてなんだが、剣士になった気分だ。
剣を正中に構えて刀身を見る。
マッドブラックな色合いは光を反射せず、僕の顔を映さない。
漆黒の剣。
一発で気に入った。
「とてもお似合いですよ」とシオンが隣で囁いてくれる。
「ふんっ、悪くないんじゃない!せいぜい自分の身ぐらい自分で守ってよね!!」とリルが言う。
「剣も旦那様を選んでいるようですね。そうそう巡り合えるものではないかと・・・・・・あの、思います」と上目遣いにシルフィーが言う。
それをニタニタと八重歯をむき出しにしてレナールが満更でもなくほほ笑んでいる。
「あ、あり、ありが―――」とうと言い切る前に、「せやろ!めっちゃいい剣やろ!!うちの今まで作ってきた剣の中でも一、二を争う出来やで!」とレナールが飛びついてきた。
デカい胸が当たる!
まぁ・・・・・・いいか。
手が揉もうと伸びるが、レナールが素早く離れて「シオンにも新しいの作ってきたで~」と違う麻布を漁っている。
うーん、まぁダンジョン攻略さえ終われば、毎日ズッコンバッコン出来るしいいか。
ちらりとシルフィーを見る・・・・・・ぽよんと風が吹くだけで、胸が揺れる。
うん、巨乳と爆乳の競演・・・・・・早く果たしたいな。
レナールが取り出したのは、どうやらすね当てのようだ。
金属が使われているのかピカピカと光っている。
「軽いわね」とシオンが受けっってまじまじと見ている。
「ミスリルとオリハルコンも実はちょっと混ぜってんねん。だから軽装化できるんやで」
と誇らしげに語るレナール。
ミスリルに、オリハルコン!
そんな希少金属があるのか。
「高いんじゃないのかしら?」とシオンが僕の疑問をそのまま口にする。
それはそうだな。ただでさえ、レナール工房は借金をしていたのにどこから。
「せ、せやなー。まぁーまぁーええ値段やったなー。・・・・・・そ、それより早く着けてみーや!これならストーンマンでも蹴り飛ばしても足に傷一つつかないと思うで!」
とレナールが強引に話題を変える。
怪しい・・・・・・が、そのうち聞くとしよう。
シオンが装備を付け替える。
軽いという理由で皮装備基本のシオンだが、すね当てだけ、ピカピカの輝きをしていると――――シオンが足を振り上げて近くの岩を躊躇なく蹴り上げる!
バァン!という音と共に亀裂を走らせ、岩が半分に砕ける。
「・・・・・・使えそうね。まったく痛くないわ」とシオンは何事もなくクールに言う。
「お、おう!せやろ。ぴったりやん、さぁー準備もできたいし、ダンジョン攻略に向かうでー」と追及されないようにかレナールがぴゅーとダンジョン入り口に走り出した。
「ちょっと、なんであんたが仕切ってるのよ!」とリルがそれを追う。
その様子を見ながら、ふぅーとため息をつきつつ、「私たちもいきましょうか」とシオンがクールに言う。
だが、体を上下してソワソワしているのが隣にいて分かった。
まったく猫のようで可愛い。
本当にシオンはダンジョンが好きだな。
「さぁ早く二人のところに行きましょう」とシオンに促されて、僕もついていく。
「あなたも、・・・・・・シルフィーにも期待しているわよ」とシオンの紅玉の瞳がシルフィーを見据える。
背の半分はありそうな大きな弓を背中に背負い、弦が胸を強調する。
いわゆるパイスラ状態のシルフィーがうつむき加減に「頑張ります」と覇気もなく淡々と答える。
戦闘民族って話だけど、大丈夫かな。
そんなことを思いながら、第六階層へと進んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あ、アトラクション???
そうとしか思えなかった。
狭い通路、暗闇に包まれたそこにクリスタルを思わせる石が、光源となってところどころ照らしている。
そんなくらい通路を歩くこと数分、ちゃぽんという水の音が聞こえてきた。
通路を抜けた先には、水路があり、そこに小舟が浮いて・・・・・・一人でに動いている!?
水路の先へと水流に乗ってなのか、暗闇へと消えていくと、再び同様のサイズの小舟が現れる。
まるでこれから遊園地の乗り物に乗る感覚だ。
当然目を瞑っているだけでは、終わってはくれないだろうが。
船はそこそこ大きく、6人は座れそうだ。
「で、誰がどこ座るん?」とレナールががプカプカと浮かぶ船を指さしながら、シオンに聞く。
ここは旦那様だろうが!と言いたいが、ダンジョンに関しては経験のあるシオンに任せているからな。
シオンは事前に考えてきたのか、
「前に私、真ん中にレナールと旦那様、後ろにシルフィーとリルで座りましょう」
「うちも前がええんやないか?」
「私とレナールが前だと立ち上がった時動くスペースがないから」
それもそうか!とレナールがプカプカ浮かぶ船に飛び乗る。
バシャーンと波が立ち、船が揺れる。
結構揺れそうだ・・・・・・船酔いしないといいんだけど。
「ほら、上様。はやく乗らんとおいてくでー」と、レナールが横に移動する。
・・・・・・いや、違う。
船が動き出しているのだ。
僕は慌てて走って、飛びのるとレナールが抱きとめてくる。
谷間にダイブだ!!・・・・・・くそ、胸当てで全然感触がない。
そんなことをしている間に、シオンが音もたてずにシュッと飛び乗る。
猫のような気軽さだ。
「私が照らしてあげるから、あんたは私はのことをちゃんと守りなさいよ」
「・・・・・・はい、リル姉様」
と後続の二人も飛び乗ってきた。
隣にはレナール、前にはシオン、後ろにはシルフィーとリル。
はぁ~これが遊園地のアトラクションならどんなにいいことだろうとそんな気持ちを持ちながら船はプカプカと進行していく。
目の前には、広がる闇。
僕は縁をつかむ。
ジェットコースターみたいにワンアクション来るかもしれない!
そう身構えていたが、ちゃぽんちゃぽんという水滴が落ちる音が鳴るばかりで特に何も起こらず、船は暗闇を静かに進んでいくだけだった。
みんなの息遣いを感じつつ、暗闇を進むと空気の感じで妙に広い空間に出たのが分かった。
「リル、そろそろお願い」とシオンが発声する。
反響しないことから相当広いエリアなんだろう。
「はい、シオン姉様。累積ファイアーボール」
リルの呪文とともに灯りが灯る。
ドデカイ、火の玉が水面に浮かんでいる。
リルのファイアーボールの累積とかいう魔法をストックしておけるスキルだ。
こんな風に灯りにもなるんだな。
リルが次々と呪文を唱えて、火球は合計で3つになった。
かなりの明るさだ。
「火花」と最後のダメ押しとばかりにリルが火花をはなち、船の穂先につるされたランタンに火が灯った。
ファイアーボールの光量が強すぎて、あんまり役に立っていないけど。
リルのおかげで先まで見通せるが、どうやらここは地底湖のようなものらしい。
上を見上げても暗闇が広がるばかりだ。
そして、下を見れば・・・・・・リルの炎の光が届く範囲は無色透明でその先にも暗闇が広がっている。
静かなダンジョンは、時おり、水が滴る音と自動で進む船が水面を揺らす音しか聞こえない。
暗闇、静けさ。
その二つがあいまって、水の底を覗いていると今にも醜悪な何かが飛び出してくるんじゃないかという気がしてくる
「何も出てきません」
シオンの囁くようなウィスパーボイスにハッとする。
「ここのモンスターは基本、コウモリです。水の下からは対に攻撃してくることはありませんので絶、パニックにならないでくださいね」
そう言いながら、リルの炎で照らせれた綺麗な紅玉の瞳が僕を見つめている。
そうだったな。ダンジョンの説明でシオンがそんなことを言っていた気がする。
「う、うん」と僕はシオンにうなづいてみせると、ふぅーといつものため息をつきながらシオンは再び前を向いた。
「しっかりしてよね、暴れて船を転覆させたら承知しないわよ!」と背中越しにリルから𠮟責される。
確かに船が転覆したら、大変だな。僕は暴れないようにしようと思った。
「大丈夫やで、上様はうちがしっかり守ったるから!」とレナールが隣で八重歯をニッと出してウィンクしてくれる。
頼もしい限りだ。
これでモンスターが出てこなければ遊園地でデートしている感じなのにと思っていると、
「あの・・・・・・」と静かにシルフィーが声をかけてきた。
「そろそろ、来ます」と後ろを振り返れば、シルフィーは立ちあげりすでに弓を構えていた。
それと同時にバッババババババと跳ね音が聞こえてきた。
見れば闇が蠢いている。
いや、あれはかなりの数のコウモリのモンスターのようだ!
きたか、と僕は黒い剣に手を伸ばして、鞘から出す。
暗闇そのものが具現化して剣になったかのような黒い剣がリルの炎の光で浮かびかがる。
さぁかかってきやがれ!
「・・・・・・はい」
肩をばんばん叩きながらに元気に挨拶するレナールに対して、シルフィーが静かに答える。
「後衛が多いと助かるわー」といいながら、八重歯を出して笑うレナール。
今日は妙に機嫌がいいな。
「・・・・・・ちょ、ちょっとあんた」
「・・・・・・はい」
リルが胸を張り、堂々とシルフィーの前に立つ。
身長差があり、見下げるシルフィーと見上げるリル。
リルは目をキッと吊り上げて、口を真一文字にしている。
堂々とした態度だが、虚勢だ。
見るからに緊張しているのが分かる。
対するシルフィーは、たれ目、見下げているからかどことなく暗い表情でリルを見ていて、感情の起伏を感じさせない感じが、若干怖い。
「わ、私はここの2番奴隷よ! あ、あんたより偉いの!」
「・・・・・・」
「だ、だから、私のことはリル姉様と呼びなさい!」
「まったく、おチビはそれに拘るなー」
「う、うるさい!あんたもそう呼びなさいよ!」
「うちは、奴隷ちゃうもんねーべぇーだ!」
下を出してバカにするレナールに、キッーと怒るリル。
それに「はい」と静かにシルフィーが答える。
それで注目が集まる。
果たして、
「よろしくお願いします。リル姉様」と静かに頭を下げるシルフィー。
それに一瞬ぽかんとした、リルだったが、間をまけて満面の笑みを浮かべる。
「そう、そうよ。それでいいのよ。私が魔法で敵を殲滅するんだからちゃんと守りなさいよね!」
「はい、そうさせていただきます」
感情の起伏を感じさせない表情のまま、シルフィーが淡々と答えるようだが、
むっふふとリルはご満悦したようにそれをない胸を張って受け取る。
まぁ仲良くやってもらう分には構わない。
「紹介は終わったんよな!つぎはうちのを見てーや!」
そういいながら、ボロボロの麻布で覆われたものを持ち出すレナール
麻布がボロボロなせいで剣だと分かった。
帰ってきた主人を出迎える犬のように珍しく尻尾がぶんぶん振られている。
「これや!」
じゃっ、じゃあーーーーーん!
という効果音が聞こえてきそうな感じで布が払われ、宙に投げ出される。
そこに現れたのは、一本の黒い剣
先端は三角錐にとがっているが、刀身は平でレイピアのようにまっすぐに伸びて刃は両側について、鍔がついていない独特な剣。
「すごいやろ、例の蜂の剣を鍛えたんや!」とレナールが満面の笑みで剣を渡してくる。
それを受け取る。
原型は針の根元を握り込んでいたが、ちゃんとグリップがついて手になじんだ。
振るとブゥン、という空気を震わすような羽音のような独特な風切り音がした。
剣のことなんて分からないが、それでも握った感じが心地よくてなんだが、剣士になった気分だ。
剣を正中に構えて刀身を見る。
マッドブラックな色合いは光を反射せず、僕の顔を映さない。
漆黒の剣。
一発で気に入った。
「とてもお似合いですよ」とシオンが隣で囁いてくれる。
「ふんっ、悪くないんじゃない!せいぜい自分の身ぐらい自分で守ってよね!!」とリルが言う。
「剣も旦那様を選んでいるようですね。そうそう巡り合えるものではないかと・・・・・・あの、思います」と上目遣いにシルフィーが言う。
それをニタニタと八重歯をむき出しにしてレナールが満更でもなくほほ笑んでいる。
「あ、あり、ありが―――」とうと言い切る前に、「せやろ!めっちゃいい剣やろ!!うちの今まで作ってきた剣の中でも一、二を争う出来やで!」とレナールが飛びついてきた。
デカい胸が当たる!
まぁ・・・・・・いいか。
手が揉もうと伸びるが、レナールが素早く離れて「シオンにも新しいの作ってきたで~」と違う麻布を漁っている。
うーん、まぁダンジョン攻略さえ終われば、毎日ズッコンバッコン出来るしいいか。
ちらりとシルフィーを見る・・・・・・ぽよんと風が吹くだけで、胸が揺れる。
うん、巨乳と爆乳の競演・・・・・・早く果たしたいな。
レナールが取り出したのは、どうやらすね当てのようだ。
金属が使われているのかピカピカと光っている。
「軽いわね」とシオンが受けっってまじまじと見ている。
「ミスリルとオリハルコンも実はちょっと混ぜってんねん。だから軽装化できるんやで」
と誇らしげに語るレナール。
ミスリルに、オリハルコン!
そんな希少金属があるのか。
「高いんじゃないのかしら?」とシオンが僕の疑問をそのまま口にする。
それはそうだな。ただでさえ、レナール工房は借金をしていたのにどこから。
「せ、せやなー。まぁーまぁーええ値段やったなー。・・・・・・そ、それより早く着けてみーや!これならストーンマンでも蹴り飛ばしても足に傷一つつかないと思うで!」
とレナールが強引に話題を変える。
怪しい・・・・・・が、そのうち聞くとしよう。
シオンが装備を付け替える。
軽いという理由で皮装備基本のシオンだが、すね当てだけ、ピカピカの輝きをしていると――――シオンが足を振り上げて近くの岩を躊躇なく蹴り上げる!
バァン!という音と共に亀裂を走らせ、岩が半分に砕ける。
「・・・・・・使えそうね。まったく痛くないわ」とシオンは何事もなくクールに言う。
「お、おう!せやろ。ぴったりやん、さぁー準備もできたいし、ダンジョン攻略に向かうでー」と追及されないようにかレナールがぴゅーとダンジョン入り口に走り出した。
「ちょっと、なんであんたが仕切ってるのよ!」とリルがそれを追う。
その様子を見ながら、ふぅーとため息をつきつつ、「私たちもいきましょうか」とシオンがクールに言う。
だが、体を上下してソワソワしているのが隣にいて分かった。
まったく猫のようで可愛い。
本当にシオンはダンジョンが好きだな。
「さぁ早く二人のところに行きましょう」とシオンに促されて、僕もついていく。
「あなたも、・・・・・・シルフィーにも期待しているわよ」とシオンの紅玉の瞳がシルフィーを見据える。
背の半分はありそうな大きな弓を背中に背負い、弦が胸を強調する。
いわゆるパイスラ状態のシルフィーがうつむき加減に「頑張ります」と覇気もなく淡々と答える。
戦闘民族って話だけど、大丈夫かな。
そんなことを思いながら、第六階層へと進んだ。
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あ、アトラクション???
そうとしか思えなかった。
狭い通路、暗闇に包まれたそこにクリスタルを思わせる石が、光源となってところどころ照らしている。
そんなくらい通路を歩くこと数分、ちゃぽんという水の音が聞こえてきた。
通路を抜けた先には、水路があり、そこに小舟が浮いて・・・・・・一人でに動いている!?
水路の先へと水流に乗ってなのか、暗闇へと消えていくと、再び同様のサイズの小舟が現れる。
まるでこれから遊園地の乗り物に乗る感覚だ。
当然目を瞑っているだけでは、終わってはくれないだろうが。
船はそこそこ大きく、6人は座れそうだ。
「で、誰がどこ座るん?」とレナールががプカプカと浮かぶ船を指さしながら、シオンに聞く。
ここは旦那様だろうが!と言いたいが、ダンジョンに関しては経験のあるシオンに任せているからな。
シオンは事前に考えてきたのか、
「前に私、真ん中にレナールと旦那様、後ろにシルフィーとリルで座りましょう」
「うちも前がええんやないか?」
「私とレナールが前だと立ち上がった時動くスペースがないから」
それもそうか!とレナールがプカプカ浮かぶ船に飛び乗る。
バシャーンと波が立ち、船が揺れる。
結構揺れそうだ・・・・・・船酔いしないといいんだけど。
「ほら、上様。はやく乗らんとおいてくでー」と、レナールが横に移動する。
・・・・・・いや、違う。
船が動き出しているのだ。
僕は慌てて走って、飛びのるとレナールが抱きとめてくる。
谷間にダイブだ!!・・・・・・くそ、胸当てで全然感触がない。
そんなことをしている間に、シオンが音もたてずにシュッと飛び乗る。
猫のような気軽さだ。
「私が照らしてあげるから、あんたは私はのことをちゃんと守りなさいよ」
「・・・・・・はい、リル姉様」
と後続の二人も飛び乗ってきた。
隣にはレナール、前にはシオン、後ろにはシルフィーとリル。
はぁ~これが遊園地のアトラクションならどんなにいいことだろうとそんな気持ちを持ちながら船はプカプカと進行していく。
目の前には、広がる闇。
僕は縁をつかむ。
ジェットコースターみたいにワンアクション来るかもしれない!
そう身構えていたが、ちゃぽんちゃぽんという水滴が落ちる音が鳴るばかりで特に何も起こらず、船は暗闇を静かに進んでいくだけだった。
みんなの息遣いを感じつつ、暗闇を進むと空気の感じで妙に広い空間に出たのが分かった。
「リル、そろそろお願い」とシオンが発声する。
反響しないことから相当広いエリアなんだろう。
「はい、シオン姉様。累積ファイアーボール」
リルの呪文とともに灯りが灯る。
ドデカイ、火の玉が水面に浮かんでいる。
リルのファイアーボールの累積とかいう魔法をストックしておけるスキルだ。
こんな風に灯りにもなるんだな。
リルが次々と呪文を唱えて、火球は合計で3つになった。
かなりの明るさだ。
「火花」と最後のダメ押しとばかりにリルが火花をはなち、船の穂先につるされたランタンに火が灯った。
ファイアーボールの光量が強すぎて、あんまり役に立っていないけど。
リルのおかげで先まで見通せるが、どうやらここは地底湖のようなものらしい。
上を見上げても暗闇が広がるばかりだ。
そして、下を見れば・・・・・・リルの炎の光が届く範囲は無色透明でその先にも暗闇が広がっている。
静かなダンジョンは、時おり、水が滴る音と自動で進む船が水面を揺らす音しか聞こえない。
暗闇、静けさ。
その二つがあいまって、水の底を覗いていると今にも醜悪な何かが飛び出してくるんじゃないかという気がしてくる
「何も出てきません」
シオンの囁くようなウィスパーボイスにハッとする。
「ここのモンスターは基本、コウモリです。水の下からは対に攻撃してくることはありませんので絶、パニックにならないでくださいね」
そう言いながら、リルの炎で照らせれた綺麗な紅玉の瞳が僕を見つめている。
そうだったな。ダンジョンの説明でシオンがそんなことを言っていた気がする。
「う、うん」と僕はシオンにうなづいてみせると、ふぅーといつものため息をつきながらシオンは再び前を向いた。
「しっかりしてよね、暴れて船を転覆させたら承知しないわよ!」と背中越しにリルから𠮟責される。
確かに船が転覆したら、大変だな。僕は暴れないようにしようと思った。
「大丈夫やで、上様はうちがしっかり守ったるから!」とレナールが隣で八重歯をニッと出してウィンクしてくれる。
頼もしい限りだ。
これでモンスターが出てこなければ遊園地でデートしている感じなのにと思っていると、
「あの・・・・・・」と静かにシルフィーが声をかけてきた。
「そろそろ、来ます」と後ろを振り返れば、シルフィーは立ちあげりすでに弓を構えていた。
それと同時にバッババババババと跳ね音が聞こえてきた。
見れば闇が蠢いている。
いや、あれはかなりの数のコウモリのモンスターのようだ!
きたか、と僕は黒い剣に手を伸ばして、鞘から出す。
暗闇そのものが具現化して剣になったかのような黒い剣がリルの炎の光で浮かびかがる。
さぁかかってきやがれ!
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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