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ダンジョン編
第33話 最後の問題
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その名も選択の間
石壁で囲まれた窓のない部屋。
まぁ、ダンジョンだから当然なのだけど。
そこにポツンと赤と青の石がはめ込まれた台座が置かれている。
それと同じ石が嵌められた扉が赤青それぞれあり、台座には文字が書かれていた。
「力あるものよ、赤を選べ」
「知恵あるものよ、青を選べ」
と文字は読めないので、リルに読んでもらう。
「聞いた話によりますと、どちらを選んでもあまり関係ないようです」
あれそうなの?
「ひたすら二択問題が出て外れるとモンスターが沸く仕様を4~5回あるそうです」
なるほど、クイズステージな訳か。
「まぁ、どっちでも同じなら上様が選べええやん。、はや終わらせて蜂蜜食べようや!」
狐って蜂蜜好きなのかな?と思いながら台座を見る。
大きさも全く同じ。。。使うか、
こと二択の選択においては、最強の能力と言えるんじゃないか。
ついに僕の能力がダンジョンで役に立つときがきた!
World after 1 minute――――1分後の未来をシミュレーションする。
力のほうだ。
赤を押す。
すると赤の宝玉がある扉がががーと開いた。
他には何の変化もない。
一分間を有効に活用するため、僕はダッシュで次の部屋に入る。
急に走り出したからだろう、驚いた「あっ、旦那様!」とシオンやみんなが追ってくる気配を感じながらも次の部屋に入ると、ぶぅううんと聞きなれた羽音が耳に入った。
複数の羽音、見ればビーが4体対空していて、一斉に襲いかかってきた!
――――そこでシミュレーションが切れる。
流石は、力のほうか。いきなりモンスターだ。
では青だな。
青もシミュレーションしてみると全く次の部屋も全く同じ作りで台座、それに蜂の針と思われるのが埋め込れているだけでなにかがおそってくるということはなかった。
こっちだな。
「あ、青」
僕はシミュレーションと同じく青を押すと青の扉が開いた。
「戦いは極力避けたいですから、無難かと」
「知恵があるようには思えないですけどね」
「う、うちには何も聞かんといてな」
「・・・・・・」
それぞれの反応を見せつつ、シオン、レナール、僕、リル、シルフィーという隊列で部屋を進む。
まぁそんな慎重なことしなくても入っても何もないんだけどね。
「・・・・・・特に問題ないようです」
「なんや、さっきと同じ部屋やんか」
「また台座・・・・・・」
「ふんっ、クイズなら任せないさい。えっーとなになに、この針はオスのものである〇(赤)か×(青)か。な、なによ、この問題!」とリルがぷんすか怒っている。
まさかのウル〇ラクイズ形式?!
なるほどだからこその二択の間か・・・・・・何それ、僕のスキルのためにあるような階層じゃないか。
「・・・・・・ふむ、雄のもんやな」
「なんで分かるのよ」
レナールが何か確信めいたことを言いだし、リルがきくとレナールは、( ー`дー´)キリッとした表情で、「勘や」と言った。
「シオン姉様、何か分かりますでしょうか?」
「無視すんなや!」
「動物の勘に用はないんだけど」
「うっ、一応根拠もあんねんで」
「ふーん」とリルが期待してなさそうなジト目でレナールを見つめるとレナールが頬をボリボリ書きながら、あんなと言い始める。
自信がないのか、しっぽが垂れ下がっている。
「雄は雌を守るために武器をつけるもんねんだから、雄やないかな・・・・・・と」
「はんっ」とリルが鼻で笑う。
「台座にほかの仕掛けやヒントはないんでしょうか?シオン姉様は何か分かりますでしょうか?」
「なんでや!うちの完ぺきな推論やったやろ」
「どこがよ」はぁーとリルは大きくため息をついていいことと続ける。
「雄が雌よりも大きいや武器を持っているなんていうのは間違えよ。例えばカマキリなんか雌のほうが雄より何倍も大きいじゃない」
「うっ!」
リルにビシッと指を突き付けられて、レナールが黙る。
「リル、やめなさい。・・・・・・それと私にもこれが雄のものか雌のものか分からないわ。そもそも性別があるとは思ってないもの」とシオンが冷静に二人を止める。
「そうですよね・・・・・・私も分かりません。シルフィーはどうなのよ?」
「・・・・・・・・・・・・分からないです」
シルフィーが一拍間をあけてからそう静かに答える。
「そう、なら」
紅玉の瞳がこちらに向く、心なしか期待が込めらている!・・・・・・気がする。
「旦那様の御意見に従うわ」
リルが・・・・・・こいつの意見?という疑わしい視線を送ってきている。
レナールは静かに「うちは、雄や思うんやけどな」ともじもじしている。
「・・・・・・」とシルフィーは静かにこちらを見ている。
ふっ、当ててやるぜ。
なにせ俺は2回以上解答が出来るからな!
我、2択において最強
World after 1 minute発動
まずは雄(赤)を押すと赤の扉が開き、続いていった部屋も同様の部屋が続いていた。
どうやら、正解・・・・・・ぽい?
いちおうもう一度発動させて、青を押すと――――針が飛び出してきた!!
運よくそれた針は台座が壊れると、中から将軍蜂が飛び出してきた。
さらにどこからともなく兵隊蜂が数体こちらを囲むように現れて、襲い掛かってきた!!
―――たぶん、不正解。
間違えた先にはあるのはドロプールではなく戦闘のようだ、とんでもねぇな。
「旦那様、どちらに致しましょうか?」とシオンが柔らかく聞いてくる。
まるで僕が正解を知っているかのようだ。というのは想像しすぎだろうか?
「あっ、あかで」
「赤でよろしんですね?」とシオンの念押しにコクリと頷くと―――背中から柔らかな感触がした。
「せやな!せやな!上様もやっぱり雄だと思うんよな!」とレナールが抱き着いてきた。
うひょうひょ。―――後頭部にあたる柔らかなおっぱいの感触。
「ふんっ、戦闘の準備はしておいたほうがよさそうね」とリルが憎まれ愚痴を叩く。
残念ながら、その必要はないんだよ
シオンが赤い宝玉を押すと赤の扉が開く。
「正解やん!」とレナールのふさふさの尻尾がブンブン振られている。
「まだ分からないわよ。次の部屋次第でしょ」とリルが悔しそうにつぶやく。
まぁ正解なんだよな。
次の部屋に行くと同じ部屋が当然のようにあり、台座があった。
「ほら、みてみぃー、正解やったやん」
「ちっ、たまたまでしょ。動物の勘なんて根拠のない」
「なんや、選びもせーへんかったくせに、偉そうになにいうてんねん」
「う、うるさい!!」
ぴょんぴょん跳ねるレナールとキィーキィー騒ぐリル。連続三階層突破中だというのに元気なことだ。
「元気があるようで何よりですね」とシオンは二人の騒ぎにも動じず相変わらずクールビューティーだ。
「このダンジョンは100年以上存在している赤(〇)か青(×)か」とシオンが問題を読み上げてくれる。
「本当に脈絡もない2択問題が出るのですね」とシオンが顎に手をやりながら考える。
長いまつげを傅ずかせて、紅玉の瞳を半分閉じて、顎を乗せた指がその唇に当たられてる。
ただ考え事をしているそれだけのポーズ。
だというのにシオンがそうするだけでまさに絵になる。
相変わらず、変わらずシオンは美しい。美人は3日で飽きるわは大ウソだ。
いつまでも見ていられる。
その美しい横顔に見とれていると、―――「博識な旦那様でしたら分かるのでしょうか?」と紅玉の瞳と目があった。
「えっ、うっあ、も、ももももちろん」
ふっと表情がやわらぐそれだけで花が咲くような艶やかな顔で「さすがです、旦那様」と天使の囁き声が僕の魂を揺さぶる。
World after 1 minute発動、すぐに答えなんて見つけてやる。
結果また、赤だ。
「し、シオンとおな、同じ」
「???」
「ひ、瞳」
クスッと小さく鼻がなり、「赤ですね」とシオンが迷いなく赤を押す。
「・・・・・・あっ、私いきます」とシルフィーが斥侯を買ってでる。
扉に迷いなく入っていき、「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫、みたいです」といつもの抑揚のない声が返ってきた。
「へっー、さすが上様やんな。頭ええんやな!」と無邪気に褒めてくれるレナール。
「ふんっ、少しはやるみたいじゃない。まぁ普段戦闘で役に立たない分これぐらいしてもらわないと困るけど」とツンデレぷりをはっきりするリル。
「おいていくわよ」とシオンはこちらを少し褒めたかと思うと猫のようにスッと離れて、ぷいっと言ってしまう。
まったくみんな素直に、さすがです、旦那様!ていう感じで抱き着いてくるぐらいのハーレムでいいんだけどな。
そう思いながら、僕たちは正解の道を進んだ。
それから、答えのあるようなものから、意味不明な二択まで様々なものがあったが、所詮は二択。
僕のスキルの前では答えが透けているようなものだ。
一度もトラップも戦闘もないままいよいよ第5問まで来ていた。
「平均的にはここで最後ですね。一度も間違えないとはさすがです、旦那様」
「いやここまで全問正解とか上様、すごすぎひん?」
「に、二択を4回連続で当てただけでしょ。コインだって4回連続当たることだってあるんだし」
「・・・・・・すごいと思います」
ふっふふふ、この二択の間で僕の株は急上昇のようだ。
これは最後の問題もサクッと当てて示させてもらいますか。
黒剣を腰に携えて僕は騎士のごとく、シオン、リル、レナール、シルフィーに見られながら、堂々と間を抜けて台座の前に出る。
ほれ。そこの君、読み上げたまえ。
「正解を導きだせし、智慧ある者よ。ここに最後の問題を課す。読み解くがいい。後悔のないように」
やはり最後の問題のようだ。
それよりもさっきまで〇か×か?みたいなフランクな感じだったのに、急に仰々しくなりやがったな。
続きは、
「問題。後ろからは“最悪”が迫っている。考える限りとてつもない脅威である」
最悪、とてつもない脅威。
何かの隠語か・・・・・・なんとなくだが、先を読み上げれるのが怖い。
な、なんか、今までと明らかに雰囲気が違くないですかね?
額から汗が吹き上がるのを感じた。
「逃げなければならない。だが赤の扉は2人しか通れない。青の扉も2人しか通れない」
赤は2人、青は2人・・・・・・つまりは4人だが・・・・・・。
ここには、僕、シオン、リル、レナール、シルフィーと4人いる!!
思わず全員が顔を見合わす。
いややべぇなんか、やばい感じの奴だ。
「通るものを選べ。“最悪”はすぐそこに迫っている。そうこの砂粒が落ち切った時、それは現れる」とリルが読み切った時、台座の上に突如として砂時計が現れる。
星空のような青くキラキラした綺麗な砂が、サラッーとキレイに落ちる。
それはとても幻想的なまでにきれいで、思わず見とれて――――いる暇はない!!
な、なんだ、それ!
通る人は4人しか選べない。
つまり一人は置き去りということだ。
見捨てる必要がある。
じゃあ誰を・・・・・・え、選べるわけがない。
これ、正解は・・・・・・沈黙。
なんてことはないよね。
額から溢れた汗がつっーと雫となって落ちていった。
「ちょいまちーや。赤は2人で青も2人」とレナールが指折り数える「・・・・・・つまりどういうことや?」
「あんたバカなの?!ここには5人いて、4人しか通れないじゃ。一人は置いてきぼりってことでしょ!」
「う、うちやてそんなことはわ、分かってるわぁ!問題は――――」
「―――誰が残る、か・・・・・・てことね」
シオンの静かで、それでいて魂が震えるような響く、ウィスパーボイスが二人の喧騒を切り裂く。
宝石のような紅玉の瞳が僕を、いやリルも、レナールも、シルフィーも、それぞれが僕を見つめた。
張りつめた空気にシオンの声が響く。
「選んでもらうしかないわね。・・・・・・旦那様に」
誰かを選ぶ?
それは誰かを犠牲にするってこと。
冷や汗が流れる。
そうしている間にも、青い砂はサラサラと気にした風もなく流れていく。
僕は、どうしたら――――
石壁で囲まれた窓のない部屋。
まぁ、ダンジョンだから当然なのだけど。
そこにポツンと赤と青の石がはめ込まれた台座が置かれている。
それと同じ石が嵌められた扉が赤青それぞれあり、台座には文字が書かれていた。
「力あるものよ、赤を選べ」
「知恵あるものよ、青を選べ」
と文字は読めないので、リルに読んでもらう。
「聞いた話によりますと、どちらを選んでもあまり関係ないようです」
あれそうなの?
「ひたすら二択問題が出て外れるとモンスターが沸く仕様を4~5回あるそうです」
なるほど、クイズステージな訳か。
「まぁ、どっちでも同じなら上様が選べええやん。、はや終わらせて蜂蜜食べようや!」
狐って蜂蜜好きなのかな?と思いながら台座を見る。
大きさも全く同じ。。。使うか、
こと二択の選択においては、最強の能力と言えるんじゃないか。
ついに僕の能力がダンジョンで役に立つときがきた!
World after 1 minute――――1分後の未来をシミュレーションする。
力のほうだ。
赤を押す。
すると赤の宝玉がある扉がががーと開いた。
他には何の変化もない。
一分間を有効に活用するため、僕はダッシュで次の部屋に入る。
急に走り出したからだろう、驚いた「あっ、旦那様!」とシオンやみんなが追ってくる気配を感じながらも次の部屋に入ると、ぶぅううんと聞きなれた羽音が耳に入った。
複数の羽音、見ればビーが4体対空していて、一斉に襲いかかってきた!
――――そこでシミュレーションが切れる。
流石は、力のほうか。いきなりモンスターだ。
では青だな。
青もシミュレーションしてみると全く次の部屋も全く同じ作りで台座、それに蜂の針と思われるのが埋め込れているだけでなにかがおそってくるということはなかった。
こっちだな。
「あ、青」
僕はシミュレーションと同じく青を押すと青の扉が開いた。
「戦いは極力避けたいですから、無難かと」
「知恵があるようには思えないですけどね」
「う、うちには何も聞かんといてな」
「・・・・・・」
それぞれの反応を見せつつ、シオン、レナール、僕、リル、シルフィーという隊列で部屋を進む。
まぁそんな慎重なことしなくても入っても何もないんだけどね。
「・・・・・・特に問題ないようです」
「なんや、さっきと同じ部屋やんか」
「また台座・・・・・・」
「ふんっ、クイズなら任せないさい。えっーとなになに、この針はオスのものである〇(赤)か×(青)か。な、なによ、この問題!」とリルがぷんすか怒っている。
まさかのウル〇ラクイズ形式?!
なるほどだからこその二択の間か・・・・・・何それ、僕のスキルのためにあるような階層じゃないか。
「・・・・・・ふむ、雄のもんやな」
「なんで分かるのよ」
レナールが何か確信めいたことを言いだし、リルがきくとレナールは、( ー`дー´)キリッとした表情で、「勘や」と言った。
「シオン姉様、何か分かりますでしょうか?」
「無視すんなや!」
「動物の勘に用はないんだけど」
「うっ、一応根拠もあんねんで」
「ふーん」とリルが期待してなさそうなジト目でレナールを見つめるとレナールが頬をボリボリ書きながら、あんなと言い始める。
自信がないのか、しっぽが垂れ下がっている。
「雄は雌を守るために武器をつけるもんねんだから、雄やないかな・・・・・・と」
「はんっ」とリルが鼻で笑う。
「台座にほかの仕掛けやヒントはないんでしょうか?シオン姉様は何か分かりますでしょうか?」
「なんでや!うちの完ぺきな推論やったやろ」
「どこがよ」はぁーとリルは大きくため息をついていいことと続ける。
「雄が雌よりも大きいや武器を持っているなんていうのは間違えよ。例えばカマキリなんか雌のほうが雄より何倍も大きいじゃない」
「うっ!」
リルにビシッと指を突き付けられて、レナールが黙る。
「リル、やめなさい。・・・・・・それと私にもこれが雄のものか雌のものか分からないわ。そもそも性別があるとは思ってないもの」とシオンが冷静に二人を止める。
「そうですよね・・・・・・私も分かりません。シルフィーはどうなのよ?」
「・・・・・・・・・・・・分からないです」
シルフィーが一拍間をあけてからそう静かに答える。
「そう、なら」
紅玉の瞳がこちらに向く、心なしか期待が込めらている!・・・・・・気がする。
「旦那様の御意見に従うわ」
リルが・・・・・・こいつの意見?という疑わしい視線を送ってきている。
レナールは静かに「うちは、雄や思うんやけどな」ともじもじしている。
「・・・・・・」とシルフィーは静かにこちらを見ている。
ふっ、当ててやるぜ。
なにせ俺は2回以上解答が出来るからな!
我、2択において最強
World after 1 minute発動
まずは雄(赤)を押すと赤の扉が開き、続いていった部屋も同様の部屋が続いていた。
どうやら、正解・・・・・・ぽい?
いちおうもう一度発動させて、青を押すと――――針が飛び出してきた!!
運よくそれた針は台座が壊れると、中から将軍蜂が飛び出してきた。
さらにどこからともなく兵隊蜂が数体こちらを囲むように現れて、襲い掛かってきた!!
―――たぶん、不正解。
間違えた先にはあるのはドロプールではなく戦闘のようだ、とんでもねぇな。
「旦那様、どちらに致しましょうか?」とシオンが柔らかく聞いてくる。
まるで僕が正解を知っているかのようだ。というのは想像しすぎだろうか?
「あっ、あかで」
「赤でよろしんですね?」とシオンの念押しにコクリと頷くと―――背中から柔らかな感触がした。
「せやな!せやな!上様もやっぱり雄だと思うんよな!」とレナールが抱き着いてきた。
うひょうひょ。―――後頭部にあたる柔らかなおっぱいの感触。
「ふんっ、戦闘の準備はしておいたほうがよさそうね」とリルが憎まれ愚痴を叩く。
残念ながら、その必要はないんだよ
シオンが赤い宝玉を押すと赤の扉が開く。
「正解やん!」とレナールのふさふさの尻尾がブンブン振られている。
「まだ分からないわよ。次の部屋次第でしょ」とリルが悔しそうにつぶやく。
まぁ正解なんだよな。
次の部屋に行くと同じ部屋が当然のようにあり、台座があった。
「ほら、みてみぃー、正解やったやん」
「ちっ、たまたまでしょ。動物の勘なんて根拠のない」
「なんや、選びもせーへんかったくせに、偉そうになにいうてんねん」
「う、うるさい!!」
ぴょんぴょん跳ねるレナールとキィーキィー騒ぐリル。連続三階層突破中だというのに元気なことだ。
「元気があるようで何よりですね」とシオンは二人の騒ぎにも動じず相変わらずクールビューティーだ。
「このダンジョンは100年以上存在している赤(〇)か青(×)か」とシオンが問題を読み上げてくれる。
「本当に脈絡もない2択問題が出るのですね」とシオンが顎に手をやりながら考える。
長いまつげを傅ずかせて、紅玉の瞳を半分閉じて、顎を乗せた指がその唇に当たられてる。
ただ考え事をしているそれだけのポーズ。
だというのにシオンがそうするだけでまさに絵になる。
相変わらず、変わらずシオンは美しい。美人は3日で飽きるわは大ウソだ。
いつまでも見ていられる。
その美しい横顔に見とれていると、―――「博識な旦那様でしたら分かるのでしょうか?」と紅玉の瞳と目があった。
「えっ、うっあ、も、ももももちろん」
ふっと表情がやわらぐそれだけで花が咲くような艶やかな顔で「さすがです、旦那様」と天使の囁き声が僕の魂を揺さぶる。
World after 1 minute発動、すぐに答えなんて見つけてやる。
結果また、赤だ。
「し、シオンとおな、同じ」
「???」
「ひ、瞳」
クスッと小さく鼻がなり、「赤ですね」とシオンが迷いなく赤を押す。
「・・・・・・あっ、私いきます」とシルフィーが斥侯を買ってでる。
扉に迷いなく入っていき、「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫、みたいです」といつもの抑揚のない声が返ってきた。
「へっー、さすが上様やんな。頭ええんやな!」と無邪気に褒めてくれるレナール。
「ふんっ、少しはやるみたいじゃない。まぁ普段戦闘で役に立たない分これぐらいしてもらわないと困るけど」とツンデレぷりをはっきりするリル。
「おいていくわよ」とシオンはこちらを少し褒めたかと思うと猫のようにスッと離れて、ぷいっと言ってしまう。
まったくみんな素直に、さすがです、旦那様!ていう感じで抱き着いてくるぐらいのハーレムでいいんだけどな。
そう思いながら、僕たちは正解の道を進んだ。
それから、答えのあるようなものから、意味不明な二択まで様々なものがあったが、所詮は二択。
僕のスキルの前では答えが透けているようなものだ。
一度もトラップも戦闘もないままいよいよ第5問まで来ていた。
「平均的にはここで最後ですね。一度も間違えないとはさすがです、旦那様」
「いやここまで全問正解とか上様、すごすぎひん?」
「に、二択を4回連続で当てただけでしょ。コインだって4回連続当たることだってあるんだし」
「・・・・・・すごいと思います」
ふっふふふ、この二択の間で僕の株は急上昇のようだ。
これは最後の問題もサクッと当てて示させてもらいますか。
黒剣を腰に携えて僕は騎士のごとく、シオン、リル、レナール、シルフィーに見られながら、堂々と間を抜けて台座の前に出る。
ほれ。そこの君、読み上げたまえ。
「正解を導きだせし、智慧ある者よ。ここに最後の問題を課す。読み解くがいい。後悔のないように」
やはり最後の問題のようだ。
それよりもさっきまで〇か×か?みたいなフランクな感じだったのに、急に仰々しくなりやがったな。
続きは、
「問題。後ろからは“最悪”が迫っている。考える限りとてつもない脅威である」
最悪、とてつもない脅威。
何かの隠語か・・・・・・なんとなくだが、先を読み上げれるのが怖い。
な、なんか、今までと明らかに雰囲気が違くないですかね?
額から汗が吹き上がるのを感じた。
「逃げなければならない。だが赤の扉は2人しか通れない。青の扉も2人しか通れない」
赤は2人、青は2人・・・・・・つまりは4人だが・・・・・・。
ここには、僕、シオン、リル、レナール、シルフィーと4人いる!!
思わず全員が顔を見合わす。
いややべぇなんか、やばい感じの奴だ。
「通るものを選べ。“最悪”はすぐそこに迫っている。そうこの砂粒が落ち切った時、それは現れる」とリルが読み切った時、台座の上に突如として砂時計が現れる。
星空のような青くキラキラした綺麗な砂が、サラッーとキレイに落ちる。
それはとても幻想的なまでにきれいで、思わず見とれて――――いる暇はない!!
な、なんだ、それ!
通る人は4人しか選べない。
つまり一人は置き去りということだ。
見捨てる必要がある。
じゃあ誰を・・・・・・え、選べるわけがない。
これ、正解は・・・・・・沈黙。
なんてことはないよね。
額から溢れた汗がつっーと雫となって落ちていった。
「ちょいまちーや。赤は2人で青も2人」とレナールが指折り数える「・・・・・・つまりどういうことや?」
「あんたバカなの?!ここには5人いて、4人しか通れないじゃ。一人は置いてきぼりってことでしょ!」
「う、うちやてそんなことはわ、分かってるわぁ!問題は――――」
「―――誰が残る、か・・・・・・てことね」
シオンの静かで、それでいて魂が震えるような響く、ウィスパーボイスが二人の喧騒を切り裂く。
宝石のような紅玉の瞳が僕を、いやリルも、レナールも、シルフィーも、それぞれが僕を見つめた。
張りつめた空気にシオンの声が響く。
「選んでもらうしかないわね。・・・・・・旦那様に」
誰かを選ぶ?
それは誰かを犠牲にするってこと。
冷や汗が流れる。
そうしている間にも、青い砂はサラサラと気にした風もなく流れていく。
僕は、どうしたら――――
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本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
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【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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