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停滞、そして

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「剣、盾、槍、砂ガード」

鍾乳洞に響くタイチの声。

それに合わせてスラオが次々にその形を変える。

「……よし、食っていいぞ」

スラオは手短なベビースライムを飲み込み、一瞬のうちに消化する。

(もう一度、剣、盾、槍、砂ガード) 

タイチが頭の中で描くとスラオがそれに反応して形を変えいく。

砂ガード、空中に砂が浮かんでいるような形状マントプラス砂というタイチ考案のオリジナルスキルだ。を形作ったところで満足してタイチは再度、良しっという!

スラオは形を通常のスライムに戻して再びスライムに食らいついた。

ぶるぶるぶると歓喜に体を震わせる。

そんなスラオを撫でながら、タイチは嘆息した。

ゴブリン襲撃から3日が経とうとしていた。

あれからまだ新種の作成に至っていないのだ。

スライムを精製しては、スライム蠱毒を用いて進化を繰り返すも、ストーンスライムやサンドスライムばかりだ。

しかし他に手立てもなく、とりあえず前回のゴブリン戦を生かして、スラオに芸を仕込んでいた。

おかけでこの通り、口でも念でも問題なく戦闘態勢を作れるようになった。

口に出すとも念じればいい。

これはスラオとタイチとが育んできた絆がもたらしてきた奇跡、とタイチは最初感動していたが、どうやらこれはそんな奇蹟ではなくスキルの力であることが分かった。

【スライムパシー】

スライムオンリーに通じるテレパシーの力であることが分かった。

しかも送信専用でタイチからスラオへと送ることは出来てもスラオの気持ちが送られてくることもない。

ほかのスライムも同様だ。

微妙に使いづらいなんだよなー、美少女ちゃんがくれる力は、しかも……………スライム限定だし。

そんな愚痴を零すタイチに、あの不快な声が聞こえてきた。


ギャアギャア!

ゴブリンだ。

それを見て、タイチはまたかと嘆息した。

最初見た時は、恐怖にパニックとなったものだが、ここ連日数体ずつ現れ、そのたびにスラオと共に撃退するうちにもはやゴブリンは敵でないと分かったためだ。

5体という数が、一斉にこちらに向かってギャアギャア!というかなぎり声を上げながら突進してきた。

「ストーンバレット」

スラオの周りに浮遊した石が礫となってゴブリンに投擲されていく。

次々とその威力を前に悲痛な声を上げて倒れていくところを―――一体だけが仲間を盾にしながら近づいてきた。

多少は賢い奴がいるみたいだ。

そいつは、ある程度近づくと死体と化した仲間を放り捨てて、錆びついたショートソードで切りかかってきた。


――――しかし、それがタイチの体に触れることはない。

バァン!という乾いた音が鍾乳洞に響く。

もはや、念じて指示するまでもないほどに熟練した動きになりつつある。

【砂ガード】

マント状に広がったスラオが砂に化して、錆びついたショートソードの攻撃をからめとるように防ぎ、

ギャアアアアアアアアアアアア!

舞い上がった砂が、目を入ったのだろう、頭を抱えるようにゴブリンは飛び退いた。

「うーん、スラオを石剣で」

形質を石へと変え、形状を剣というよりは長い棒のような形となって、そのままゴブリンの脳天へと振り落とされる。

ゴキッ、グチャとゴブリンの頭がスイカを割るように潰れて、そのまま体が重量に従って倒れていく。

というようにゴブリン5体との戦闘もあっけないほどに簡単に終わった。

死屍累々の鍾乳洞には掃除屋、スライムたちが颯爽と死体を吸収しようとのかかっていた。

タイチはそれを一瞥してスラオを軽くプールで洗い(なぜかスラオは吸収スキルを使用しようとしないのだ。スライムオンリーの偏食野郎なのだろう)、その場を去った。

理由は単純にゴブリンがスライムの半透明な体内で解かされていくというグロテスクなものを見たくないからというものだった。


青白い光を放つ鍾乳洞をスラオを羽織ってタイチは歩く。

美少女ちゃん銅像がある区画とは反対方向に下るように歩く、時間にして5分程度歩くとだんだんと足の裏の感触が岩から土へと変わっていくのを感じ始めると青白い光も弱まり――――太陽の光が差し込んできた。

むわっと湿気を帯びた亜熱帯を思わせる気温。

周りは上で見た時同様にジャングルを思わせる背の高い樹がそびえたち、蔓が巻かれた苔むしった木や胴体よりも太い根がせり出してうねっている。

生い茂った草花や、見るからに毒を持ってそうなまさに毒々しい実がなっているものある

ちなみに【スライム鑑定】によって、これはスライムではないことが分かっている。

タイチは何度か外に出たことがあるが、迷子になって鍾乳洞に戻ってこれないことを恐れて近場を巡回する程度だが、時折ゴブリンに遭遇するぐらいで目立った成果は上がっていない。

そしてこの日もいつもと同じく近場を巡回しようとタイチが一歩を踏み出した時、

うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

という高めだが、男のものと思われる叫び声があがる。

「野郎か……………でも見るだけ見に行ってみるか」

恩を売れるなら売った方がいいだろうし、襲われているのがヤバ気なモンスターとかなら、申し訳ないが犠牲になってもらおう。

そんなことを考えながら、声の聞こえたほうに慎重に向かっていく。

幸い、定期的に叫び声があがるので見失わないですみそうだ。

巨人の腕のように太い木の根を時にはよじ登り、時にはくぐったりしながらもジャングルが少しだけ開けた場所がありそうだ。

草の間からこっそりと覗き見てみる。

ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!ギャアギャア!

どうやらゴブリンに襲われているようだ。

それも10体ぐらいの数に包囲されている。

でかい木を背中に一人は大きなリュックサックを腕で抱えながら、泣きべそをかいている金髪の青年。

「あ、アウさん血が!……………もうだめだ、おしまいだぁ!」

もう一人の青年にアウと言われた

「……………ウルサイ。オマエ、スコシ、ダマル」

片言の少女だ!

二人は今命の危機に瀕しているというのに、タイチはよかったこの世界は日本語が通じるんだ!

よかった言語スキルとかなくて、あったとしたら、絶対美少女ちゃんがくれるのはスライム言語LV1とかだし。

などと暢気にもほっとしていた。

それにはタイチにとって強力な武器を持たないゴブリンなど物の数ではないというのもあるが。


ギャアギャア!

「ウラァアアア!」

迫ってきたゴブリンを青年を庇うように前にたった少女が槍を振り回して牽制している。

しかし、多勢に無勢だ。

体力が尽きるか、数の利を生かして全員で突進していけば容易く葬られしまうだろう。

まぁそんなこと俺がさせないがな!

タイチは襲われている二人組を助けることにした。

それは勿論、

片言の少女。

なんらかの部族を思わせる格好だ。

小麦色の健康的な肌をキャンバスにして、踊るようにクネクネと白い塗料が紋様を描いている。

琥珀色の瞳は、獲物を狙う獣のように煌めいていて野性味帯びた印象を受ける。

それに黒髪の頭には何らかのモンスターだろうか牙が突き出た獣骨を帽子のように被っているという人食い部族と言われても納得しそうなヤバさを醸し出していた。

ジャングルで獣の次に出会っては行けない類の、いや獣よりタチが悪いかもしれないものであったが、少女のような幼げな容姿だ。身長はタイチの頭2つ分は小さいというのと隣に明らかな文明人じみた白人がいるというのもあるが、何よりもその部族ガールが、可愛い女の子だからだ!

タイチが出るタイミングを見計らっていた時、

アウと呼ばれた部族ガールの薄い生地の麻のワンピースから、ゴブリンに攻撃された時に出来たのか、スリットのように一部がやぶれており、健康的な小麦色の太ももがちらつく。

……………頑張れ、ゴブリンさん!と一瞬タイチは時代劇で悪代官を応援する少年の心を思い出したが、ゴブリンの一体が石を持ち、投石の準備をし始めたのをみてタイチは慌てて飛び出した。

タイチが茂みから飛び出すと、アウと目が合う。

驚いたように目を見開くが、戦闘態勢を緩めたりはしない。槍を振り回してゴブリンをけん制している。

そのおかげか、ゴブリンはアウ達に夢中でこちらに気づいた様子はない。

まぁ奇襲するほどのこともないんだけど、ね!

(ストーンバレット!)

奇襲の利を活かすためにスライムパシーにて念を飛ばす。

すると、周りに石がなかったたかもしれない。

何もない空間から、半透明な何かが集まり、それが丸まり固まり石になった!

ストーンバレットは、石の投擲スキルではないようだ、石が周りにない場合は魔法を生み出せると、すごいぞスラオ!

タイチが初めてみる魔法に感動して褒めると、スラオはぶるっ!と歓喜に見を震わせて次々に石を生み出した。

(いけぇ!スラオ)

タイチの合図にスラオが生み出した石を投擲する。

ぐきゃ!がきゃ!どきゃ!ばきゃ!

と次々にアウの肢体を舌なめずしながら見ていたであろうゴブリンたちが後頭部に拳大の石を食らい、倒れていく。

いかんせん数が多く、うち何体かには当たらずこちらに気づいた。

ゴブリンの一体が仲間を穿った石を拾い上げ、こちらに投擲するも。

当然、スラオが盾となり石を弾き返す。

ギャア!

ゴブリンの一体が悲痛な叫びを上げる。

どうやらゴブリン共がこちらに注意を向けた瞬間にアウという少女がゴブリンの背に槍を突きつけたようだ。

ゴブリンの数はこれで五体となった。

こちらの三人に対して数は多いが前と後ろとで挟撃される形となって、ゴブリンたちは互いの背を向け合い円状に固まった。

もはやこちらは、勝勢。
もとよりゴブリン程度に後れを取ることなどないが、後はどう勝つか、もといどうアウちゃんにカッコよく映るかだ!

こんなとき、俺tueee主人公がどうチョロインを惚れさせていたのか、タイチはゲームや漫画、小説の様々シーンを思い出していた。

そのため、茂みから現れた一体のゴブリンに気づかなかった。

杖を構えたゴブリンが聞き取れない何かをつぶやくと、杖の先に火が灯り、それが徐々に大きくなっていく。

うーん、魔法でばぁーんと出来たら、あれっ僕何かしましたか?キョトンとかありだっだか、ストーンバレットってただの投石だからな。やはりここは剣でズバッと

「アッ、マホウ!」

アウが叫んだことでタイチの思考が現実に戻る。

ん、アウちゃんが何事か焦った様子だ、

体を上下に揺らし、そのため木彫りや石、色とりどりの装飾が音を立てている。

「ウシロ!」
「うわあああ!ファイアボールだ!」



なかなかにファンキーな格好、だが、やはり顔は可愛いアウちゃんの後ろで金髪が叫んでいる。

タイチはうるせーなと思いながらも後ろをチラリと後ろを伺うと、一体のゴブリンがめに入った。


伏兵がいたのだろうなかなかに小賢しい奴らだ!あれにもストーンバレットをかましてや

るぅ!

タイチの視界に写ったのは、
スイカ大はあろう炎の玉が、亜熱帯の熱をより熱い熱気でもって退けながら、迫ってきていた。

触れれば火傷などでは当然済まないであろうことは、ファイアボールが放つ火花で分かる。

マズイ!

タイチが自然と足を一本後ろに引いたとき、すでにファイアボールはタイチの吹きでる汗を蒸発させるほど近くにきて、


触れた瞬間、爆発。

魔法で持って練り込まれた熱量が四散した。


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スラオ保持スキル
・スライム喰極
・擬態(砂、石、皮、葉)・形成(砂、石)限界+突破
・吸収
・ストーンバレット
・スライムポケット


スライム図鑑 5/151
美少女ちゃん封印解除まであと146種。
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