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蟲毒
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全裸に装飾のない皮のマントを羽織っただけの男。そのマントは短く太ももにしか達せず、ときより何かが揺れているのが見える。
そんな男が白昼夢堂々とバナナを片手に鍾乳洞を闊歩していた。
俺じゃないと思いたいとタイチは考えながら残ったバナナを口に押し込んだ。
あの美少女ちゃんとの邂逅から実に5日は過ぎようとしていた。
当初、スライム鑑定3thにより、スライムの育成方法に見当がついて一気に新種が生み出せる!と思っていたタイチであったが現実とはバナナのように甘くはなかった。
最初こそ上手くいったのだ。
ベビースライム、その説明にある通り、最初に食べたもので派生が決まると。
つまり赤ちゃんのうちから単一のものを食べさせていけばすぐに特殊な能力を持ったスライムへと派生していくだろうと。
だから、まずはベビースライムを量産、これは頑張れば一日10体は行けることがわかった。
石専門や葉っぱ専門、水オンリーなど様々に試す。
いきなり進化はしないだろうと、手持ち無沙汰になったので、次はスライムの成体を作ろうと思ったのだ。
これは失敗した。
魔力を全開まで絞り出してたみたものの、バレーボール大の大きさが限界だった。
また立ちくらみなど消耗も激しく一日2体が限界だ。
なのでベビースライムを量産するの方向へと完全移行した。
そのおかげでいまや、鍾乳洞は半透明なゲル状の物質があちらには垂れ下がり、こちらには張り付いているというスライムの巣窟と化していた。
精製したベビースライムにも個性と言うのはあるようで、各々に好きなものを食し、吸収し独自の生態系を作っていた。
それをタイチは日課となりつつあるスライム鑑定3thで確認しながら新種や新スキルを持っていないを見る。
【ベビースライム】
スキル:吸収
擬態(石)
【ベビースライム】
スキル:吸収
擬態(水)
【スライム】
スキル:吸収
擬態(砂)
どれも見慣れたものばかりで目新しいものはなかった。
タイチの羽織ったマントの一部がにゅーと触手のように変化してちょいちょいとタイチの肩をたたいた。
目と目が合う。
スライムにはたして目があるのかどうか分からないが、飼い犬のポチがおやつが欲しくてじっとこちらを見つけているような視線を感じるのだった。
「……………だめだ、進化するかもしれないし」
「…………………………」
「……………だめだって」
「……………」
「……1体だけだぞ、スラオ」
ブルブルブルブルとマント全体が震え、触手が手短なベビースライムを捉え、丸吞みにした。
マントに見えるこれは実は擬態:皮のスキルを使ったスラオだったのだ。
たぶん獣の死骸が何かがどこかにあったのだろう、擬態:皮を持ったベビースライムを食べたらスラオのそのスキルを身につけたのだ。
ほかにも(石)、(水)、(砂)、(葉)と目新しいものを見つけてはスラオに覚えさせてきた。
スラオはスライム喰極のおかげでスライムが持つスキルは1体でも食べれば完全に会得できるようだ。
ただちょっと残念のが、タイチが皮のマントにしか見えないそれを触ると、ぶにっと沈み弾いていく弾力を指に感じた。
擬態はあくまで擬態であり、材質を再現しているわけではないのであくまでもスライムはスライムだった。
きっとそれは別のスキルがいるのだろう。
やはりあの実験にかけるしかないか。
タイチは、ため息交じりに足早にそこに向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
美少女ちゃん銅像のある区画。
長年の鍾乳洞から滴る水滴が気の遠くなるほどの年月をかけて穿ったのだろう真ん中がくり抜かれた岩々に水が溜まりプールのようになっている。
だがいくつかは枯れて空になっているところもあるのだが、そうしたところにタイチはベビースライム数体ずつを投じていた。
ベビースライム個々に特性が加わっているのは擬態のスキルを見れば分かるが、ここで一つ問題が発生した。
成長と言うべきか進化というべきかは分からないが、とにかく大きくはならないのだ。
成長しなければ派生もしない。
そこでタイチは考えた結果、スライムをつまみ食いしていたスラオを見て思ったのだ。
スライムを食べると大きくなると。
そうしてタイチはこの実験を思いついた。
枯れた岩穴の一つ、タイチが体育座りすれば入れそうな程の大きさのそこには二体のスライムが互いの体にひっついていた。
両方ともがバレーボール大、……………いやそれよりも大きいスイカ大に近い存在だ。
だてに同胞を喰らってきた奴らじゃない。
そうタイチはスライムとスライム同志を互いに食べさせあうという蟲毒ともいうべきものを思いついた。
悪魔とも鬼畜ともなんとでも罵ってくれていい。
俺はそれでも美少女ちゃんの封印を解き解きたいんだ!とタイチは自身を肯定した。
複数体入ったスライムたちもついにこの2体のスライムに絞られた。
互いが混じり合うようほどにひっつき、そして上に乗っかっていたスライムが下のスライムを飲み込むように押さえつけやがて完全に取り込んだ!
「おおっ、ついに」
一体のスライムが生き残り、半透明なボディーはつつけば今にも破裂しそうなほどに膨らみ、――――そして、ついにタイチは進化の神秘を目撃する。
生き残ったスライムが燐光に包まれ、駒かい光の粒子となり、それが一気に収束する。
時間にしては瞬きほどの間で一瞬だ。
しかし燐光の余韻か、光の粒子が線香花火のようにスライムの体でバチバチと弾け消えていった。
あとに残ったのはスイカ大のまん丸の石だ。
い、石?!
スライムが石になった。なぜだ、蟲毒作戦は失敗なのか!
熱いかと思って、指でちょんとちょんと触った石はひんやりとしていてそこらに転がっているものと代わりはしない。
そんなまさか、化石にでなってしまったのかとノックするようにタイチは叩いてみた。
固くて手がジンジンと痛む。
これ死んでるのか?とタイチが思ったとき、石がもぞっと動いた!
タイチは、まさか!とスキルを発動させる。
「スライム鑑定3th」
【ストーンスライム】
図鑑NO:009
石に擬態したスライムが長年体内に石を取り続けることにより、自らの体を石そのものへと変化できるようになった個体。
スキル 吸収
スキル 擬態(石)
スキル 石形成 体の一部を石へと変える
スキル ストーンバレット 石へと変えた体の一部を礫として放つ魔弾の一種
ナンバー9.きたぁぁぁ!
新種だ!!
苦節5日。
蠱毒という魔女の秘術を用いた悪魔の所業を成して、ついに新種開発に成功した。
タイチが歓喜に震えるとマントもといスラオも同時に鳴動した。
マントの一部が触手のように伸び、ストーンスライムに覆いかぶさるよるに広がる。
それを「待て!」と声でスラオを制止した。
ニュルといいでしょ?と言わんばかりに触手のように伸ばした体をこちらに向ける。
それにタイチは手のひらを向けた。
「お手」
スラオの触手風に伸ばした体がタイチの手のひらにすばやく添えられる。
「おかわり」
スラオは別の箇所から触手風に体を伸ばしてすばやく手のひらに添える。
これでいいでしょ!と言わんばかりにぶるぶるぶると細かく振動しているのが触手的な体から伝わる。
タイチはそれをひとしきり楽しむと、「よしっ!」と勢いよく告げる。
スラオは待ちきれはいとばかりにマント化を解除して文字通り、ストーンスライムへと踊りかかった。
5日とは膨大な時間だ、それうえにスラオには芸を覚えさせてしまった。次は何を覚えさせようかなんてことを考えながらタイチはスラオの食事を眺めた。
進化の余韻か石ゆえの特性なのかは分からないが動きの鈍いストーンスライムはスラオに一息に飲み込まれる。
しばらくスラオから逃れようと暴れ、スラオの体をぶち破ろうと石礫に引っ貼られてびょ~んと伸びるがすぐに元の体に戻る。
やがてそれも収まり、そして―――視界のすべてを強烈な光が埋め尽くした。
ああっ、久しぶりの美少女ちゃんとの邂逅だ!
「来ます! 普段は柔らかくてブヨブヨしているそれが固くなって、それが、私の、私の中に、入ってくるぅううううううううううううううううううううう!」
という際どい台詞を扇情的に叫ぶ美少女ちゃん。
その絶頂とともに岩の一部が弾ける。
現れたのは細く華奢でありながらきれいな曲線美を持つ鎖骨。
それは一つの芸術であり、その首筋との間に出来た窪みに水を注いで飲みたくなるほどの美しさだ。
ストーンスライム、それを作り出すのに糧になった者たちよ、お前らの犠牲には意味があったぞと目尻に汗が浮かぶ。
なぁ、お前もそう思うだろう、スラオ。
うん、スラオ?
いつも下半身に張り付いているスラオへと目を向けると、スラオはおらず、代わりにマイサンがこんにちわは揺れていた。
「きゃん!」
そういえば、ストーンスライムを食べるのに離れたんだった!!
「スラオ、マント化!」
タイチの叫びに呼応してどこからともなく現れたスラオがバサリと革のマントに擬態化する。
ブニブニとしたスライム特有の感触に包まれてタイチは、一安心した。
「ふっふふ、ずいぶんと、仲良くなったものですね」
力の流入が収まったのだろう。
その余韻か美少女ちゃんは肩で息をしながらこちらに微笑みかけてくれた。
惜しむらくはそれによって揺れていただろう2つの果実は、岩が城壁のような堅牢さで覆いかぶさっていることだろう。
くそっ、絶対に封印を解除してみせる!タイチは決意を新たにするのだった。
「いい目をしていますね。さすがはスライムを信望する者。そのマントもなかなかイカしてます」
「そうかな~、ちょっと地味じゃない?」と美少女ちゃんに褒められタイチはついつい嬉しくなってしまう。
「いえいえ、素材そのものもいいものですよ。肌触りがスライムそのものというのがいいですよね」
はぁーと美少女ちゃんは切なげに息を漏らし、ブルーの瞳がとじられ、長いまつげを震えさせる。
「早くわたしもスライムを全身で感じたいものです」
切実なる美少女ちゃんの願いだ。タイチは美少女ちゃんは本当にスライムが好きなんだな~と思う。
「任せてくれ、絶対に君の封印を解除してみせる!」
タイチがそう言うとまつ毛はわななき、ブルーの瞳が現るになる。
蒼穹の空のような輝きを持って美少女ちゃんは微笑んだ。
「ありがとう、あなたには更なる慈悲を与えます。次にお会いできるのを楽しみにしています」
美少女ちゃんの笑みは、強烈な光に包まれ、そして収束していく。
収まった後にはもはや見慣れた青白い光に包まれている静かなる鍾乳洞。
いやいまやそこは鍾乳石だけではなく、様々なスライムの幼体があちらこちらにいた。
「よしっ、ちゃちゃっと次のスライムを作るぞ!」
誰もいない鍾乳洞にタイチの声が決意がこだました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
スラオ保持スキル
・スライム喰極
・擬態(土、石、皮、葉)・形成(石)限界+突破
・吸収
・ストーンバレット
スライム図鑑 3/151
美少女ちゃん封印解除まであと148種。
そんな男が白昼夢堂々とバナナを片手に鍾乳洞を闊歩していた。
俺じゃないと思いたいとタイチは考えながら残ったバナナを口に押し込んだ。
あの美少女ちゃんとの邂逅から実に5日は過ぎようとしていた。
当初、スライム鑑定3thにより、スライムの育成方法に見当がついて一気に新種が生み出せる!と思っていたタイチであったが現実とはバナナのように甘くはなかった。
最初こそ上手くいったのだ。
ベビースライム、その説明にある通り、最初に食べたもので派生が決まると。
つまり赤ちゃんのうちから単一のものを食べさせていけばすぐに特殊な能力を持ったスライムへと派生していくだろうと。
だから、まずはベビースライムを量産、これは頑張れば一日10体は行けることがわかった。
石専門や葉っぱ専門、水オンリーなど様々に試す。
いきなり進化はしないだろうと、手持ち無沙汰になったので、次はスライムの成体を作ろうと思ったのだ。
これは失敗した。
魔力を全開まで絞り出してたみたものの、バレーボール大の大きさが限界だった。
また立ちくらみなど消耗も激しく一日2体が限界だ。
なのでベビースライムを量産するの方向へと完全移行した。
そのおかげでいまや、鍾乳洞は半透明なゲル状の物質があちらには垂れ下がり、こちらには張り付いているというスライムの巣窟と化していた。
精製したベビースライムにも個性と言うのはあるようで、各々に好きなものを食し、吸収し独自の生態系を作っていた。
それをタイチは日課となりつつあるスライム鑑定3thで確認しながら新種や新スキルを持っていないを見る。
【ベビースライム】
スキル:吸収
擬態(石)
【ベビースライム】
スキル:吸収
擬態(水)
【スライム】
スキル:吸収
擬態(砂)
どれも見慣れたものばかりで目新しいものはなかった。
タイチの羽織ったマントの一部がにゅーと触手のように変化してちょいちょいとタイチの肩をたたいた。
目と目が合う。
スライムにはたして目があるのかどうか分からないが、飼い犬のポチがおやつが欲しくてじっとこちらを見つけているような視線を感じるのだった。
「……………だめだ、進化するかもしれないし」
「…………………………」
「……………だめだって」
「……………」
「……1体だけだぞ、スラオ」
ブルブルブルブルとマント全体が震え、触手が手短なベビースライムを捉え、丸吞みにした。
マントに見えるこれは実は擬態:皮のスキルを使ったスラオだったのだ。
たぶん獣の死骸が何かがどこかにあったのだろう、擬態:皮を持ったベビースライムを食べたらスラオのそのスキルを身につけたのだ。
ほかにも(石)、(水)、(砂)、(葉)と目新しいものを見つけてはスラオに覚えさせてきた。
スラオはスライム喰極のおかげでスライムが持つスキルは1体でも食べれば完全に会得できるようだ。
ただちょっと残念のが、タイチが皮のマントにしか見えないそれを触ると、ぶにっと沈み弾いていく弾力を指に感じた。
擬態はあくまで擬態であり、材質を再現しているわけではないのであくまでもスライムはスライムだった。
きっとそれは別のスキルがいるのだろう。
やはりあの実験にかけるしかないか。
タイチは、ため息交じりに足早にそこに向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
美少女ちゃん銅像のある区画。
長年の鍾乳洞から滴る水滴が気の遠くなるほどの年月をかけて穿ったのだろう真ん中がくり抜かれた岩々に水が溜まりプールのようになっている。
だがいくつかは枯れて空になっているところもあるのだが、そうしたところにタイチはベビースライム数体ずつを投じていた。
ベビースライム個々に特性が加わっているのは擬態のスキルを見れば分かるが、ここで一つ問題が発生した。
成長と言うべきか進化というべきかは分からないが、とにかく大きくはならないのだ。
成長しなければ派生もしない。
そこでタイチは考えた結果、スライムをつまみ食いしていたスラオを見て思ったのだ。
スライムを食べると大きくなると。
そうしてタイチはこの実験を思いついた。
枯れた岩穴の一つ、タイチが体育座りすれば入れそうな程の大きさのそこには二体のスライムが互いの体にひっついていた。
両方ともがバレーボール大、……………いやそれよりも大きいスイカ大に近い存在だ。
だてに同胞を喰らってきた奴らじゃない。
そうタイチはスライムとスライム同志を互いに食べさせあうという蟲毒ともいうべきものを思いついた。
悪魔とも鬼畜ともなんとでも罵ってくれていい。
俺はそれでも美少女ちゃんの封印を解き解きたいんだ!とタイチは自身を肯定した。
複数体入ったスライムたちもついにこの2体のスライムに絞られた。
互いが混じり合うようほどにひっつき、そして上に乗っかっていたスライムが下のスライムを飲み込むように押さえつけやがて完全に取り込んだ!
「おおっ、ついに」
一体のスライムが生き残り、半透明なボディーはつつけば今にも破裂しそうなほどに膨らみ、――――そして、ついにタイチは進化の神秘を目撃する。
生き残ったスライムが燐光に包まれ、駒かい光の粒子となり、それが一気に収束する。
時間にしては瞬きほどの間で一瞬だ。
しかし燐光の余韻か、光の粒子が線香花火のようにスライムの体でバチバチと弾け消えていった。
あとに残ったのはスイカ大のまん丸の石だ。
い、石?!
スライムが石になった。なぜだ、蟲毒作戦は失敗なのか!
熱いかと思って、指でちょんとちょんと触った石はひんやりとしていてそこらに転がっているものと代わりはしない。
そんなまさか、化石にでなってしまったのかとノックするようにタイチは叩いてみた。
固くて手がジンジンと痛む。
これ死んでるのか?とタイチが思ったとき、石がもぞっと動いた!
タイチは、まさか!とスキルを発動させる。
「スライム鑑定3th」
【ストーンスライム】
図鑑NO:009
石に擬態したスライムが長年体内に石を取り続けることにより、自らの体を石そのものへと変化できるようになった個体。
スキル 吸収
スキル 擬態(石)
スキル 石形成 体の一部を石へと変える
スキル ストーンバレット 石へと変えた体の一部を礫として放つ魔弾の一種
ナンバー9.きたぁぁぁ!
新種だ!!
苦節5日。
蠱毒という魔女の秘術を用いた悪魔の所業を成して、ついに新種開発に成功した。
タイチが歓喜に震えるとマントもといスラオも同時に鳴動した。
マントの一部が触手のように伸び、ストーンスライムに覆いかぶさるよるに広がる。
それを「待て!」と声でスラオを制止した。
ニュルといいでしょ?と言わんばかりに触手のように伸ばした体をこちらに向ける。
それにタイチは手のひらを向けた。
「お手」
スラオの触手風に伸ばした体がタイチの手のひらにすばやく添えられる。
「おかわり」
スラオは別の箇所から触手風に体を伸ばしてすばやく手のひらに添える。
これでいいでしょ!と言わんばかりにぶるぶるぶると細かく振動しているのが触手的な体から伝わる。
タイチはそれをひとしきり楽しむと、「よしっ!」と勢いよく告げる。
スラオは待ちきれはいとばかりにマント化を解除して文字通り、ストーンスライムへと踊りかかった。
5日とは膨大な時間だ、それうえにスラオには芸を覚えさせてしまった。次は何を覚えさせようかなんてことを考えながらタイチはスラオの食事を眺めた。
進化の余韻か石ゆえの特性なのかは分からないが動きの鈍いストーンスライムはスラオに一息に飲み込まれる。
しばらくスラオから逃れようと暴れ、スラオの体をぶち破ろうと石礫に引っ貼られてびょ~んと伸びるがすぐに元の体に戻る。
やがてそれも収まり、そして―――視界のすべてを強烈な光が埋め尽くした。
ああっ、久しぶりの美少女ちゃんとの邂逅だ!
「来ます! 普段は柔らかくてブヨブヨしているそれが固くなって、それが、私の、私の中に、入ってくるぅううううううううううううううううううううう!」
という際どい台詞を扇情的に叫ぶ美少女ちゃん。
その絶頂とともに岩の一部が弾ける。
現れたのは細く華奢でありながらきれいな曲線美を持つ鎖骨。
それは一つの芸術であり、その首筋との間に出来た窪みに水を注いで飲みたくなるほどの美しさだ。
ストーンスライム、それを作り出すのに糧になった者たちよ、お前らの犠牲には意味があったぞと目尻に汗が浮かぶ。
なぁ、お前もそう思うだろう、スラオ。
うん、スラオ?
いつも下半身に張り付いているスラオへと目を向けると、スラオはおらず、代わりにマイサンがこんにちわは揺れていた。
「きゃん!」
そういえば、ストーンスライムを食べるのに離れたんだった!!
「スラオ、マント化!」
タイチの叫びに呼応してどこからともなく現れたスラオがバサリと革のマントに擬態化する。
ブニブニとしたスライム特有の感触に包まれてタイチは、一安心した。
「ふっふふ、ずいぶんと、仲良くなったものですね」
力の流入が収まったのだろう。
その余韻か美少女ちゃんは肩で息をしながらこちらに微笑みかけてくれた。
惜しむらくはそれによって揺れていただろう2つの果実は、岩が城壁のような堅牢さで覆いかぶさっていることだろう。
くそっ、絶対に封印を解除してみせる!タイチは決意を新たにするのだった。
「いい目をしていますね。さすがはスライムを信望する者。そのマントもなかなかイカしてます」
「そうかな~、ちょっと地味じゃない?」と美少女ちゃんに褒められタイチはついつい嬉しくなってしまう。
「いえいえ、素材そのものもいいものですよ。肌触りがスライムそのものというのがいいですよね」
はぁーと美少女ちゃんは切なげに息を漏らし、ブルーの瞳がとじられ、長いまつげを震えさせる。
「早くわたしもスライムを全身で感じたいものです」
切実なる美少女ちゃんの願いだ。タイチは美少女ちゃんは本当にスライムが好きなんだな~と思う。
「任せてくれ、絶対に君の封印を解除してみせる!」
タイチがそう言うとまつ毛はわななき、ブルーの瞳が現るになる。
蒼穹の空のような輝きを持って美少女ちゃんは微笑んだ。
「ありがとう、あなたには更なる慈悲を与えます。次にお会いできるのを楽しみにしています」
美少女ちゃんの笑みは、強烈な光に包まれ、そして収束していく。
収まった後にはもはや見慣れた青白い光に包まれている静かなる鍾乳洞。
いやいまやそこは鍾乳石だけではなく、様々なスライムの幼体があちらこちらにいた。
「よしっ、ちゃちゃっと次のスライムを作るぞ!」
誰もいない鍾乳洞にタイチの声が決意がこだました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
スラオ保持スキル
・スライム喰極
・擬態(土、石、皮、葉)・形成(石)限界+突破
・吸収
・ストーンバレット
スライム図鑑 3/151
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