Bloom of the Dead

ロータス

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10話 歓迎会

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「それでは、ヨハクとアイリスちゃんの歓迎を祝しまして」

「「「「「かんぱーい」」」」

ゴンの祝辞とともにヨハク達はコップをたかだがと掲げる。

あのあとしばらくしてから、水道・ガス、電気などはまだ使えるようで久しぶりに風呂に入ってさっぱりした後、ミリオ達が簡単にだが祝賀会を開いてくれるとのことだ。お菓子やジュース、缶詰、ミリオ秘蔵の戦闘糧食(レーション)など食べておおい盛り上がった。そこでは電話で話しきれなかった今までどう過ごしていたのかや、アイリスのこと、ヨハクの能力のことなどで盛り上がった。

ちなみに、アイリス曰く能力者、いわゆる花人(フロリアン)はヨハクしかおらず、グリとゴンは雑草(ウィード)、ミリオは土壌(プランター)というもしかしらら花人(フロリアン)になれるかもしれない存在とのことだった、それを聞いて2人はがっかりしていたが、ミリオはピンと来ていないようでまぁ、使えないものはしょうがないなと言っていた。

だんだんと用意されたものもなくなり、会も終盤に差し掛かったころ、ミリオが隣へと来て小声で聞いてきた。

「なぁ、ヨハク。聞いてもいいか」

 ミリオの険しい態度にヨハクはミリオが聞きたいことがなんとなくわかった。

「うん、なにかな」
「マスターは、どうしていたかなと思ってな」

やっぱりかとヨハクは思う。店長さんの最後を思い浮かべようとして、胃から酸っぱい何かがせり上げってきた。
ヨハクはそれを手で押させて辛うじてこらえた。ごめん、それしかヨハクは言うことが出来なかった。
それにミリオは「そうか」とだけうつむき、すぐに朗らかなに笑った顔を上げて、ヨハクの肩を叩いた。

「すまんな、ヨハク。お前が何も言わないんだ。分かっていたんだがな、やっぱりはっきりと聞いておきたくてな!」

はっきりと答えられたわけでないのに、そうヨハクは自分が情けなく思った。
店長さんとの思い出はヨハクなんかよりよっぽどミリオのほうが多いだろうに、ミリオは豪快に笑っている。

「ミリオ、僕は――――」
「はい!天使のように可愛いアイリスたんに質問があるであります!」

ヨハクの声は、まるで宣誓するかのように立ちあがり腕を上げるグリの声で遮られた。

「ふん、聞いてあげようじゃない。言ってみなさい」

天使と言われて殊更上機嫌なアイリスは満更でもなさそうにグリの質問の許可を出した。
 その宝石のようにきれいな金色の瞳に見つめられ、グリはビクッと体を硬直させるが、「お年はおいくつでしょうか?」と高らかに声を上げた。

「年?……年っていのうは?」とアイリスは、どういう意味なの?という感じでヨハクに目線を送ってきた。
「年ていうのは年齢だよ。生まれてからどれくらい経っているのかっていう」とヨハクは答えた。
 「そうね……ひぃ、ふぅ、みぃの」と小枝のように可愛い指を折ってアイリスは数え始めた。

ヨハクもその質問には興味があった。背格好からしたら小学生だが、雰囲気とか落ち着きとかが、大人のように感じることもあり、年齢不詳なところがあるからだ。
 しかし、アイリスからはとんでもない答えが返ってきた。

「うん、11日歳ていうことになると思うわ!」
 じゅ、11日歳?! 生まれてから11日しか経っていないていうこと?ヨハクは思わずアイリスの顔を見つめてしまう。

 アイリスは何か間違ったこといったという感じで首をかしげている。
  自称妖精、背中から光る羽を生やし、自分に異能を与えた少女は確かに普通とは違う力があるのは確かなのだが、ヨハクはまだアイリスが人ではないということを信じてはいなかった。

ということは、

「そ、そっか、アイリスたんは妖精さんだからね」とグリが合わせ、
「ちっこいけど、11歳かぁ、まぁまだ成長期だからな」とゴンが納得し、
「人は見た目で判断は出来ないからな。ほら、これでも食って大きなれ」とミリオが干し芋スティックをアイリスに勧めた。

「いらないわ、わたし人の食べ物は食べないの」とアイリスが断ると、
「そんなことじゃ、大きくなれんぞ!」とミリオがアイリスの頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
「ちょっ、やめっ、やめなさい!この、無礼者!!やっ!めっ!ろっ!」

アイリスは、ミリオの腕から逃れるとヨハクの背へと隠れた。

「こ、このミリオね!アイリスたんに何を!!うらやまけしからん。その手を触らせろ」
「はっはははは、俺も昔は兄貴にやられたもんだな、グリそれは普通に俺でも気持ち悪いぞ」

アイリスはうぅううううと警戒した猫のように唸りながら、ヨハクの背にしがみつき、当のヨハクは取っ組み合いを始めた二人をどう止めようかゴンに視線を向けるが、ゴンはやれやれと顔を振っている。

ヨハクの前についこの間までは確かにあった。変わり映えのないいつもの光景が広がり、それが次第に滲んでいく。まるで害虫(ペスター)など現れず、世界の崩壊など何かの間違えであるように感じた。

 ああっ、この光景をずっと見えていた。でもぬぐってもぬぐっても景色はすぐに滲んでいってしまう。ああっ、だめだ、泣いているところなんて見せたらまたバカにされてしまうのにそう思うのだが、ついに瞼から溢れ、頬を伝い始めた。

「ご、ごめん。ちょっとトイレに言ってくる」と見られないよう腕で顔を隠して、立ち上がる。

「ああんっ」としがみついていたアイリスを振り落としてしまったが、そんなことを気にしている余裕はヨハクにはなかった。

 扉をしめ、静かな廊下に出ると、誰にも見られない安心感からか溢れた涙が、頬を流れ水滴となって下に落ちていくのがわかる。背中には友達が笑う喧騒を感じながら、その場にぺたんとしりをつけた。

こうして、ヨハクの目覚めてからの壮絶な一日は終わった。

「え、食料がない?」

 ヨハクはその言葉に洗っていた顔をあげた。

「ああっ、昨日のパーティーでしまいだ」

 そういってミリオは肩を竦めた。

「非常食も1週間分はあったがな、もう全部食ってしまってな。一応ミネラルウオーターはペットボトルが5本はあるから、一人1本はある」
「でも、水道は出ってるよね?」
「ああっ、でも飲む気になるか?」

そうミリオに言われるとヨハクも今両手ですくっている水がなんだがおぞましいものに思えてきた。確かにどこで、何が入っているか分からない。

「その、ごめんミリオ。僕たちが」来たから、と続けてようとして、
「いや、それは違うぞヨハク」とミリオは遮った。
「どちらにしても足りないんだ、どうぜ無くなるならぱあっーとやったほうがいい、それにヨハクのお陰で活路は見えている」
「えっ、僕のおかげで?」
「そうだ、ヨハク。お前とアイリスのおかげだ。作戦会議を始めるぞ」

そう力強く言うミリオに、なんだが自信づけられヨハクは顔を拭いてリビングに戻った。


リビングに戻ると、グリもゴンがソファーに座っており、アイリスはリビングテーブルの椅子に座り、足をぷらぷらとさせていた。

「あっ、ヨハク。おはよう!げぇっ」

 アイリスはヨハクを見かけるとにっこりとして挨拶をしてきたが、ミリオを見つけると椅子から飛び降り、頭を抑えながら後ずさった。

「ははっ、アイリスおはよう」
「むぅ~、すっかり嫌わってしまった」とミリオは困った顔した。
「まぁ、後でフォローしておくよ」
「おう、頼むぞヨハク。ではみんな作戦会議を始めよう」

ミリオのその一言で作戦会議が始まった。

ミリオは何をする気だろうか、でもミリオは任せておけば大丈夫だ。そんな安心感の中でヨハクはリビングテーブルの席についた。
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