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1話:リザードマンとエルフ
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「イチゴとな? 聞いたことがない。薬草か何かなのか、・・・毒草ではあるまいな」
「―――ひぃ、ち、ちが、違います。これは赤い実をつけて食べられるやつで、僕の国ではデザートして出されるんです!」
ワニ顔でこちらを睨まれると怖い。
「ふん、どことなく甘い香りがする草だ。毒であるはずがない。これだから湿地の蜥蜴は―――ひぃ、なん、なんだ。やろうというのか、すぐに手を出すこれだから野蛮人とは関わり合いになりたくないのだ」
どうやら、ワニ顔で睨まれるとエルフでも怖いらしい。
しかし、ワニ顔は見た目に反して紳士的らしくその鋭い牙と爪で襲い掛かってくることはなかった。
「しかし、持ち物がその奇妙な草だけとは、ほかにはないのか」
そう高慢なエルフに言われ、ポケットに手を入れたかが何もなかった。
そう言えば、汚れたり落としたりしたら嫌だからとホムセンから帰ってきてベットの上にスマホやケータイを投げた気がする。
そんな俺の態度を見たのか、エルフが「はぁー」とため息をついてきた。
それにかちんとした俺はエルフに言ってやった。
「じゃ、じゃあお前は何を持ってるんだ!」
切れ長の瞳が、こちらを見る。
ただそれだけだが、イケメンがそうするだけでなんだか、凄みがある。
エルフは何も言わず懐に手を入れると、一本の木の棒を取り出した。
まさか、
「笛だ」
タクトじゃないんかい!
「ふむ、弓などは持っていないのか?見たところシャーマンでもなさそうだが」
「狩猟など下賤な輩がすること。私たちがそんなことをするわけがないだろう」
髪をかき上げ、自信満々に言うエルフに騙されそうになるが、こいつも笛しか持ってないじゃないか!
「ふむり」と呟きつつ、あごに手を載せ、思案するように下をチロチロと出しているリザードマンにあとは託すしかない。
俺とエルフの視線を感じたのか、ワニ顔は腰に手を回すとおもむろに取り出した。
「網だ」
網? そんな俺の心の疑問に答えてくれたのか、ワニ顔の言葉が続く。
「魚を捕りに行こうと思っていたところだったのでな」
チロリとまるでてへぺろと言わんばかりに舌が躍るが、ワニ顔のため可愛くはない。
「「「・・・・・・」」」
三者三様に役に立たないものを持っているための微妙な空気に押し黙ってしまう。
「えっと・・・軽く自己紹介しない? 俺の名前は園田 拓海、日本って国からえっとこのイチゴの苗を植えようしているときに光に包まれて、来ました」
重苦しい空気を破り、俺は発言してみた。
「ふむ。情報共有はしておくべきだろう。我はスワンゴの戦士、アリバだ。種族は見ての通り、リザードマンである。我もここに来る際は見たことのない魔法陣の光が当てられてここに来た。ちょうど湖に入る前の木陰であった」
それにこたえるのは2mを超える巨体のワニ顔、やはりリザードマンだったか。
そして、光によって来たようだ。足元なんて見る暇がなかったから魔法陣かどうかは判らないけど。
さて、残るは、とリザードマンのアリバと俺とが視線を送ると、
高慢なエルフは不愉快そうに髪をかき上げる。
「ふんっ、仕方がない。無知蒙昧たる諸君らに教えてやろう。私はワリウネクルの森の民である。あれはそう、私が小鳥たちに笛の音を聞かせてやろうと木へと登った時だったな」
以上だ、と言わんばかりに髪をかき上げる。
こいつは、髪をかき上げないとしゃべれないのか。
「で、名はなんと申す」
「ふん、貴様らに名乗るような名などはないわ!」
そうエルフはアリバに啖呵を切る!なかなかの勇気だ。
しかし、アリバは気にした風もなく(というか表情が分からない)、チロリと舌を出す。
「ふむ、ではこれからどうするか。種族も、来たところも、共通項もなくここがどこかも分からない。人の子の・・・」
「拓海でいいよ」
「ん、では拓海に、長耳の意見を聞かせてくれ」
「おい、ちょっと待って私のことを長耳というな!」
「と言っても、名もわからんしな。笛とでも呼ぼうか?」
「くっ、ヴィーラスだ!! 分かったか!」
「最初からそう素直に言えばいいのだ。ヴィーラス」
シューシューと蛇のような笑い声?を挙げるアリバに、不愉快そうに髪をかき上げるヴィーラス。
「さて、じゃれ合いもすんだ。モンスターに襲われるとも限らん。どうするかそろそろ決めようではないか」
げっ、モンスターとかいるの?! ってリザードマンやエルフがいる時点でそりゃいるよね。
イチゴの苗を持ったひ弱な男と、高慢なエルフで笛を持った男、リザードマンの戦士を名乗る網を持った男。
奇妙な三人組の異世界活動が始まった。
本当どうすればいいの。
「―――ひぃ、ち、ちが、違います。これは赤い実をつけて食べられるやつで、僕の国ではデザートして出されるんです!」
ワニ顔でこちらを睨まれると怖い。
「ふん、どことなく甘い香りがする草だ。毒であるはずがない。これだから湿地の蜥蜴は―――ひぃ、なん、なんだ。やろうというのか、すぐに手を出すこれだから野蛮人とは関わり合いになりたくないのだ」
どうやら、ワニ顔で睨まれるとエルフでも怖いらしい。
しかし、ワニ顔は見た目に反して紳士的らしくその鋭い牙と爪で襲い掛かってくることはなかった。
「しかし、持ち物がその奇妙な草だけとは、ほかにはないのか」
そう高慢なエルフに言われ、ポケットに手を入れたかが何もなかった。
そう言えば、汚れたり落としたりしたら嫌だからとホムセンから帰ってきてベットの上にスマホやケータイを投げた気がする。
そんな俺の態度を見たのか、エルフが「はぁー」とため息をついてきた。
それにかちんとした俺はエルフに言ってやった。
「じゃ、じゃあお前は何を持ってるんだ!」
切れ長の瞳が、こちらを見る。
ただそれだけだが、イケメンがそうするだけでなんだか、凄みがある。
エルフは何も言わず懐に手を入れると、一本の木の棒を取り出した。
まさか、
「笛だ」
タクトじゃないんかい!
「ふむ、弓などは持っていないのか?見たところシャーマンでもなさそうだが」
「狩猟など下賤な輩がすること。私たちがそんなことをするわけがないだろう」
髪をかき上げ、自信満々に言うエルフに騙されそうになるが、こいつも笛しか持ってないじゃないか!
「ふむり」と呟きつつ、あごに手を載せ、思案するように下をチロチロと出しているリザードマンにあとは託すしかない。
俺とエルフの視線を感じたのか、ワニ顔は腰に手を回すとおもむろに取り出した。
「網だ」
網? そんな俺の心の疑問に答えてくれたのか、ワニ顔の言葉が続く。
「魚を捕りに行こうと思っていたところだったのでな」
チロリとまるでてへぺろと言わんばかりに舌が躍るが、ワニ顔のため可愛くはない。
「「「・・・・・・」」」
三者三様に役に立たないものを持っているための微妙な空気に押し黙ってしまう。
「えっと・・・軽く自己紹介しない? 俺の名前は園田 拓海、日本って国からえっとこのイチゴの苗を植えようしているときに光に包まれて、来ました」
重苦しい空気を破り、俺は発言してみた。
「ふむ。情報共有はしておくべきだろう。我はスワンゴの戦士、アリバだ。種族は見ての通り、リザードマンである。我もここに来る際は見たことのない魔法陣の光が当てられてここに来た。ちょうど湖に入る前の木陰であった」
それにこたえるのは2mを超える巨体のワニ顔、やはりリザードマンだったか。
そして、光によって来たようだ。足元なんて見る暇がなかったから魔法陣かどうかは判らないけど。
さて、残るは、とリザードマンのアリバと俺とが視線を送ると、
高慢なエルフは不愉快そうに髪をかき上げる。
「ふんっ、仕方がない。無知蒙昧たる諸君らに教えてやろう。私はワリウネクルの森の民である。あれはそう、私が小鳥たちに笛の音を聞かせてやろうと木へと登った時だったな」
以上だ、と言わんばかりに髪をかき上げる。
こいつは、髪をかき上げないとしゃべれないのか。
「で、名はなんと申す」
「ふん、貴様らに名乗るような名などはないわ!」
そうエルフはアリバに啖呵を切る!なかなかの勇気だ。
しかし、アリバは気にした風もなく(というか表情が分からない)、チロリと舌を出す。
「ふむ、ではこれからどうするか。種族も、来たところも、共通項もなくここがどこかも分からない。人の子の・・・」
「拓海でいいよ」
「ん、では拓海に、長耳の意見を聞かせてくれ」
「おい、ちょっと待って私のことを長耳というな!」
「と言っても、名もわからんしな。笛とでも呼ぼうか?」
「くっ、ヴィーラスだ!! 分かったか!」
「最初からそう素直に言えばいいのだ。ヴィーラス」
シューシューと蛇のような笑い声?を挙げるアリバに、不愉快そうに髪をかき上げるヴィーラス。
「さて、じゃれ合いもすんだ。モンスターに襲われるとも限らん。どうするかそろそろ決めようではないか」
げっ、モンスターとかいるの?! ってリザードマンやエルフがいる時点でそりゃいるよね。
イチゴの苗を持ったひ弱な男と、高慢なエルフで笛を持った男、リザードマンの戦士を名乗る網を持った男。
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