32 / 74
クザン村
第31話 踏み潰されるために生まれた命
しおりを挟む
~クザン村 クアンタの家~
「ラルバ。バビィは今どこに?」
「近くにはいないよ。ハピネス、場所」
「担い手大堂の近くにいる。村の連中もその近く。暫くは平気だろう」
未だ身を震わせるクアンタを気遣って、ラデックは目を爛々と輝かせるラルバを遮ってクアンタに顔を寄せる。
「そも、生贄は何のためにある?クアンタは何のために死ぬんだ?」
「じゃ、じゃないと……祟りに遭うんです……」
「祟り?」
「はい……お告げのあった年は生贄を捧げないと、毎回人が死ぬんです……それも1人や2人じゃありません……前回の祟りでは、村人の半分が死んでしまいました……」
「お告げとは?」
「はい。“クザンの徒”がクザン様からのお告げを賜るんです。先程担い手大堂の前にいた私の夫……バビィの家系がクザンの徒なんです。お告げが来たら速やかに生贄を捧げなければなりません……」
「……生贄に反対する者もいるだろう。一体どうやって従わせるんだ」
「従うも何も、この村の女性は皆生贄として育てられ、次の“担い手”を産み落としたらクザン様に捧げられる。クザン様のご機嫌を損ねないよう、女性は衣食住から何まで全て男達に制限されて育てられ、生贄に相応しい穢れなき身体を保ちます。特に食事なんか、お酒や煙草は愚かお肉や魚も碌に食べさせて貰えません」
「そうか…そのクザン様と言うのは?この村の守り神か何かか?」
ラデックの問いにクアンタが答えようとすると、ハピネスが態とらしい咳払いで目線を集め割って入る。
「”魔人神話“の派生だろうね」
「魔人神話?」
「ああ。”時の女神が空を塗り、星の魔人が地を埋める。人の魔人が世界を創り、大神様は微笑んだ“――――世界各地に広まる神話は、大体この魔人神話が派生元になっている。地方によっては星の魔人を宇宙の魔人と呼んだり、大神様を全知の魔人と呼んだり、そもそも出さなかったりもする。その他国によって様々だが、一番の共通項は”4人の存在が世界の全てを創った“という部分だ」
「魔人……そのうちの1人がクザン様か」
クアンタは少し考えてから小さく頷く。
「多分……一応、クザン様は”空の神“とも呼ばれています……すみません、詳しくは分からなくて……バビィ達なら知っていると思います……」
「なるほど。村を脅かす魔人に生贄か……」
そこへラルバが狂気に染まった笑みを浮かべて口を挟む。
「それでぇ、生贄はどうやって殺すんだい?」
クアンタはその笑みに圧倒され、声をつっかえさせながらも言葉を繋ぐ。
「ほ、本当は20歳を超えた女性を、が、選ばれてっ、大堂でっ……だけ、ど……ぜん、前回の祟りで……私より年上の女の人はみんな、みんな、死んでしまいました……!だからっだから私がっ選ば、れて……!」
「いや知りたいのは殺し方なんだが」
「ラルバ。やめろ」
「むぅ……」
語りながら堪えきれなかった涙を溢れさせるクアンタの背を、ラデックが優しく摩る。
「……そして、誰かがアナタを庇った」
「はい……妹です……ぜ、前回の祟りから生き残っていたのは、私と、妹のヨルンと幼馴染のリュアンとソーラです……それで、ヨルンが、ヨルンが私を連れ出して、担い手大堂から連れ出して逃げてくれたんです。次の日になれば、リュアンとソーラのどっちかが生贄にされるかもって事は思ってました。でも、2人は保身のために私を軽蔑して……ヨルンにも酷いことを沢山言いました……だから、別に助けようとは思いませんでした……そうして、2人で隠れて、なんとか毎日生きてました……でも、でも……!ある日起きたら、ヨルンが、ヨルンが……起き、なくて……!!」
「ゆっくり話せ、落ち着いて」
「いや、すったか話せ」
「ラルバ」
「わかったよぅ」
急かすラルバをラデックが制止しながら、クアンタの感情の起伏が収まるのを待った。クアンタは何度も目を擦りながら呟くように謝罪を繰り返し、縋るようにラデックの指を震える手で握って心を落ち着かせる。
「すみません……それで、ヨルンが死んでしまって……村の人たちにも見つかって……明後日に生贄を捧げようって時に、皆さんが、来てくれました……あ、あと生贄の殺し方でしたか……えっと……担い手、大堂、で……」
クアンタの生贄役は既にラルバに引き継がれている。にも拘らず、クアンタは自分に起こるはずだった惨劇を想像するだけで過呼吸を起こし、ラデックに背中を摩られながらしゃくり上げる。そして、到底聞き取れないようなツギハギの言葉で語り始めた。
クザンの徒に選ばれた生贄は”担い手“と呼ばれ、担い手大堂に軟禁される。そこで村の存続のために担い手は大堂の中で村中の男と交わり、次の担い手である女の赤ん坊と、生贄を育てる男の赤ん坊を産む。
男女を1人ずつ産み落とす又は3人子を産んだ時点で、衰弱した担い手を湖に突き落とす。担い手は浮き上がることなく湖の底へ沈み、祟りは防がれる。
「これで……全、部……です……すみまっ……すみません……私……」
呼吸を整えようと胸を強く抑えるクアンタ。そこへ、突然頭上から赤い液体が流れ落ちてきた。
「えっ、えっ?ひっ……血……!?」
クアンタが血を振り払って上を見ると、ラルバが大きな切り傷を負った自分の腕を翳して血を滴らせていた。
「何してるラルバ……!?」
「拭くな」
ラルバはラデックの言葉を無視して、クアンタが血を拭こうと持ち上げた腕を掴む。
「ラルバ、どうして血をかけるんだ」
「だってラデック、クアンタを殴ったりしないだろう」
「どういう意味だ?」
「はいラデック。どーじょ」
またしてもラデックと会話をせず、一方的に話を進めるラルバ。手渡された包丁は真っ赤な鮮血に塗れており、ラデックは一瞬受け取るのを躊躇った。
「これで腕を切ったのか」
「うんにゃ?腕裂いたのは爪だよ。それは凶器代わり」
「さっきから何を言ってる?」
「いや普通こうなるだろう。気のいい村人に歓迎されたと思ったら毒を盛られて死にかけて、それでラデックは腹いせに妻のクアンタを殺害。その後主犯格のバビィを殺そうと家の外に飛び出す。騙された側の人間としては当然の反応だ」
狂人的な蛮行から一転してマトモな想定を語るラルバ。ラデックは暫し俯いて、小さく「なるほど」と呟く。
「と言うわけで、ラデックはクアンタ担いで村を走り回ってこい。狂気の沙汰に染まった殺人鬼を演じるんだぞ。ぶっ殺す!とか、出てこいクソ野郎!とか叫びながらな」
「とても嫌なんだが」
「村を回るときは時計回りで、担い手大堂の手前まで来たら逆回りな。そうすればバビィ達がここで眠ってる私を誘拐しやすい。あ、バリアとラプーはその辺で死んだふりでもしていろ」
「クアンタを担いで行く意味は?」
「バビィ達が今クアンタも同時に連れ去ることは考えにくいからな。殺されないようにだ。ハピネス!ラデックがバビィ達と鉢合わせないようについて行ってやれ。ついでに狂人も演じるんだぞ」
~クザン村 集会所前~
「オラ出てこいクソ野郎ッ!!!ぶっ殺してやるッ!!!」
血塗れのクアンタを担いだラデックは、包丁片手に村を走り回って手当たり次第に扉を蹴破る。その顔はいつも刻み込まれているかの如く変化しない無表情とは正反対に、悪意を煮詰めた怒張が激っている。
その後ろから鉈を片手に持ったハピネスが近寄り、狂人のフリをして木製の窓を叩き割る。
「コソコソ隠れてんじゃーねーぞビチグソジジイ共ッッッ!!!テメェの臭っせぇイチモツ輪切りにしてやっからションベン撒き散らして土舐めろゴルァア!!!」
この上なく汚い暴言を吐きながら鬼の形相で鉈を振り回すハピネス。いつもの妖艶な淑女は見る影もなく、一切躊躇わずに他人の財を破壊する。その姿を見てラデックは少し唖然とした。
「ハマリ役だな。ハピネス」
「ああ!大声で罵詈雑言を叫ぶのは存外気分がいいな!結構楽しい!」
「……それは良かった」
「ほら、ラデック君も急に冷静にならないの。狂って狂って」
「ぶっ殺すぞクソ野郎がぁッ!!!」
「ふふ、君さっきからそれしか言ってないね」
悪鬼羅刹の如く破壊と暴走を続ける2人。ラデックに担がれているクアンタは、もうとっくに思考を放棄していた。
~クザン村 担い手大堂~
真っ暗な大堂の中は埃とカビ、そしてたんぱく質由来の悪臭が立ち込めており、小さく揺れる蝋燭の火だけが神聖さを辛うじて保っている。
「ゆっくり降ろせ……!ゆっくりだぞ……!」
「こっち降りたぞ……」
「マジで胸デカいな……最高……」
「おい……涎落とすな……!汚ねぇだろ……!」
ラデック達に見つからぬよう、眠っているラルバを誘拐することに成功した村人達。ラルバを乗せた担架をゆっくりと床に下ろし、艶かしい眠り姫の身体を舐めるように見つめる。
「だ、誰からいく?」
「そりゃあ勿論クザンの徒であるバビィからじゃて」
「いっつもバビィからじゃん……」
「ふふふ……すみませんねぇ、いやあ役得役得」
バビィはラルバの両手両足を鎖で拘束して、自分の服を脱ぎ始める。
「そういやバビィさん。クアンタちゃん本当に逃すんですか?」
「えー……俺こういうムッチムチのお姉さんよりも、ああいうギリ大人って感じの子の方が好みなんだけど……バビィ要らないなら俺貰っていい?」
「あ!ずりーぞ!俺にもヤらせろ!」
全裸になったバビィは、ラルバのシャツのボタンに手をかけたところで村人達へと振り返る。
「逃すわけないでしょう。この方をクザン様に捧げたら、クアンタには次のお告げまでに産めるだけ産んでもらわないと……」
バビィがラルバに視線を戻すと、蛇のように鋭く淀んだラルバの双眸がこちらを睨んでいた。
「嘘つき」
「ラルバ。バビィは今どこに?」
「近くにはいないよ。ハピネス、場所」
「担い手大堂の近くにいる。村の連中もその近く。暫くは平気だろう」
未だ身を震わせるクアンタを気遣って、ラデックは目を爛々と輝かせるラルバを遮ってクアンタに顔を寄せる。
「そも、生贄は何のためにある?クアンタは何のために死ぬんだ?」
「じゃ、じゃないと……祟りに遭うんです……」
「祟り?」
「はい……お告げのあった年は生贄を捧げないと、毎回人が死ぬんです……それも1人や2人じゃありません……前回の祟りでは、村人の半分が死んでしまいました……」
「お告げとは?」
「はい。“クザンの徒”がクザン様からのお告げを賜るんです。先程担い手大堂の前にいた私の夫……バビィの家系がクザンの徒なんです。お告げが来たら速やかに生贄を捧げなければなりません……」
「……生贄に反対する者もいるだろう。一体どうやって従わせるんだ」
「従うも何も、この村の女性は皆生贄として育てられ、次の“担い手”を産み落としたらクザン様に捧げられる。クザン様のご機嫌を損ねないよう、女性は衣食住から何まで全て男達に制限されて育てられ、生贄に相応しい穢れなき身体を保ちます。特に食事なんか、お酒や煙草は愚かお肉や魚も碌に食べさせて貰えません」
「そうか…そのクザン様と言うのは?この村の守り神か何かか?」
ラデックの問いにクアンタが答えようとすると、ハピネスが態とらしい咳払いで目線を集め割って入る。
「”魔人神話“の派生だろうね」
「魔人神話?」
「ああ。”時の女神が空を塗り、星の魔人が地を埋める。人の魔人が世界を創り、大神様は微笑んだ“――――世界各地に広まる神話は、大体この魔人神話が派生元になっている。地方によっては星の魔人を宇宙の魔人と呼んだり、大神様を全知の魔人と呼んだり、そもそも出さなかったりもする。その他国によって様々だが、一番の共通項は”4人の存在が世界の全てを創った“という部分だ」
「魔人……そのうちの1人がクザン様か」
クアンタは少し考えてから小さく頷く。
「多分……一応、クザン様は”空の神“とも呼ばれています……すみません、詳しくは分からなくて……バビィ達なら知っていると思います……」
「なるほど。村を脅かす魔人に生贄か……」
そこへラルバが狂気に染まった笑みを浮かべて口を挟む。
「それでぇ、生贄はどうやって殺すんだい?」
クアンタはその笑みに圧倒され、声をつっかえさせながらも言葉を繋ぐ。
「ほ、本当は20歳を超えた女性を、が、選ばれてっ、大堂でっ……だけ、ど……ぜん、前回の祟りで……私より年上の女の人はみんな、みんな、死んでしまいました……!だからっだから私がっ選ば、れて……!」
「いや知りたいのは殺し方なんだが」
「ラルバ。やめろ」
「むぅ……」
語りながら堪えきれなかった涙を溢れさせるクアンタの背を、ラデックが優しく摩る。
「……そして、誰かがアナタを庇った」
「はい……妹です……ぜ、前回の祟りから生き残っていたのは、私と、妹のヨルンと幼馴染のリュアンとソーラです……それで、ヨルンが、ヨルンが私を連れ出して、担い手大堂から連れ出して逃げてくれたんです。次の日になれば、リュアンとソーラのどっちかが生贄にされるかもって事は思ってました。でも、2人は保身のために私を軽蔑して……ヨルンにも酷いことを沢山言いました……だから、別に助けようとは思いませんでした……そうして、2人で隠れて、なんとか毎日生きてました……でも、でも……!ある日起きたら、ヨルンが、ヨルンが……起き、なくて……!!」
「ゆっくり話せ、落ち着いて」
「いや、すったか話せ」
「ラルバ」
「わかったよぅ」
急かすラルバをラデックが制止しながら、クアンタの感情の起伏が収まるのを待った。クアンタは何度も目を擦りながら呟くように謝罪を繰り返し、縋るようにラデックの指を震える手で握って心を落ち着かせる。
「すみません……それで、ヨルンが死んでしまって……村の人たちにも見つかって……明後日に生贄を捧げようって時に、皆さんが、来てくれました……あ、あと生贄の殺し方でしたか……えっと……担い手、大堂、で……」
クアンタの生贄役は既にラルバに引き継がれている。にも拘らず、クアンタは自分に起こるはずだった惨劇を想像するだけで過呼吸を起こし、ラデックに背中を摩られながらしゃくり上げる。そして、到底聞き取れないようなツギハギの言葉で語り始めた。
クザンの徒に選ばれた生贄は”担い手“と呼ばれ、担い手大堂に軟禁される。そこで村の存続のために担い手は大堂の中で村中の男と交わり、次の担い手である女の赤ん坊と、生贄を育てる男の赤ん坊を産む。
男女を1人ずつ産み落とす又は3人子を産んだ時点で、衰弱した担い手を湖に突き落とす。担い手は浮き上がることなく湖の底へ沈み、祟りは防がれる。
「これで……全、部……です……すみまっ……すみません……私……」
呼吸を整えようと胸を強く抑えるクアンタ。そこへ、突然頭上から赤い液体が流れ落ちてきた。
「えっ、えっ?ひっ……血……!?」
クアンタが血を振り払って上を見ると、ラルバが大きな切り傷を負った自分の腕を翳して血を滴らせていた。
「何してるラルバ……!?」
「拭くな」
ラルバはラデックの言葉を無視して、クアンタが血を拭こうと持ち上げた腕を掴む。
「ラルバ、どうして血をかけるんだ」
「だってラデック、クアンタを殴ったりしないだろう」
「どういう意味だ?」
「はいラデック。どーじょ」
またしてもラデックと会話をせず、一方的に話を進めるラルバ。手渡された包丁は真っ赤な鮮血に塗れており、ラデックは一瞬受け取るのを躊躇った。
「これで腕を切ったのか」
「うんにゃ?腕裂いたのは爪だよ。それは凶器代わり」
「さっきから何を言ってる?」
「いや普通こうなるだろう。気のいい村人に歓迎されたと思ったら毒を盛られて死にかけて、それでラデックは腹いせに妻のクアンタを殺害。その後主犯格のバビィを殺そうと家の外に飛び出す。騙された側の人間としては当然の反応だ」
狂人的な蛮行から一転してマトモな想定を語るラルバ。ラデックは暫し俯いて、小さく「なるほど」と呟く。
「と言うわけで、ラデックはクアンタ担いで村を走り回ってこい。狂気の沙汰に染まった殺人鬼を演じるんだぞ。ぶっ殺す!とか、出てこいクソ野郎!とか叫びながらな」
「とても嫌なんだが」
「村を回るときは時計回りで、担い手大堂の手前まで来たら逆回りな。そうすればバビィ達がここで眠ってる私を誘拐しやすい。あ、バリアとラプーはその辺で死んだふりでもしていろ」
「クアンタを担いで行く意味は?」
「バビィ達が今クアンタも同時に連れ去ることは考えにくいからな。殺されないようにだ。ハピネス!ラデックがバビィ達と鉢合わせないようについて行ってやれ。ついでに狂人も演じるんだぞ」
~クザン村 集会所前~
「オラ出てこいクソ野郎ッ!!!ぶっ殺してやるッ!!!」
血塗れのクアンタを担いだラデックは、包丁片手に村を走り回って手当たり次第に扉を蹴破る。その顔はいつも刻み込まれているかの如く変化しない無表情とは正反対に、悪意を煮詰めた怒張が激っている。
その後ろから鉈を片手に持ったハピネスが近寄り、狂人のフリをして木製の窓を叩き割る。
「コソコソ隠れてんじゃーねーぞビチグソジジイ共ッッッ!!!テメェの臭っせぇイチモツ輪切りにしてやっからションベン撒き散らして土舐めろゴルァア!!!」
この上なく汚い暴言を吐きながら鬼の形相で鉈を振り回すハピネス。いつもの妖艶な淑女は見る影もなく、一切躊躇わずに他人の財を破壊する。その姿を見てラデックは少し唖然とした。
「ハマリ役だな。ハピネス」
「ああ!大声で罵詈雑言を叫ぶのは存外気分がいいな!結構楽しい!」
「……それは良かった」
「ほら、ラデック君も急に冷静にならないの。狂って狂って」
「ぶっ殺すぞクソ野郎がぁッ!!!」
「ふふ、君さっきからそれしか言ってないね」
悪鬼羅刹の如く破壊と暴走を続ける2人。ラデックに担がれているクアンタは、もうとっくに思考を放棄していた。
~クザン村 担い手大堂~
真っ暗な大堂の中は埃とカビ、そしてたんぱく質由来の悪臭が立ち込めており、小さく揺れる蝋燭の火だけが神聖さを辛うじて保っている。
「ゆっくり降ろせ……!ゆっくりだぞ……!」
「こっち降りたぞ……」
「マジで胸デカいな……最高……」
「おい……涎落とすな……!汚ねぇだろ……!」
ラデック達に見つからぬよう、眠っているラルバを誘拐することに成功した村人達。ラルバを乗せた担架をゆっくりと床に下ろし、艶かしい眠り姫の身体を舐めるように見つめる。
「だ、誰からいく?」
「そりゃあ勿論クザンの徒であるバビィからじゃて」
「いっつもバビィからじゃん……」
「ふふふ……すみませんねぇ、いやあ役得役得」
バビィはラルバの両手両足を鎖で拘束して、自分の服を脱ぎ始める。
「そういやバビィさん。クアンタちゃん本当に逃すんですか?」
「えー……俺こういうムッチムチのお姉さんよりも、ああいうギリ大人って感じの子の方が好みなんだけど……バビィ要らないなら俺貰っていい?」
「あ!ずりーぞ!俺にもヤらせろ!」
全裸になったバビィは、ラルバのシャツのボタンに手をかけたところで村人達へと振り返る。
「逃すわけないでしょう。この方をクザン様に捧げたら、クアンタには次のお告げまでに産めるだけ産んでもらわないと……」
バビィがラルバに視線を戻すと、蛇のように鋭く淀んだラルバの双眸がこちらを睨んでいた。
「嘘つき」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる