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閑話 ステラ・ルシェ・ミナルチークの狂気
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閑話 ステラ・ルシェ・ミナルチークの狂気
何なのよ!
何をしても上手くいかないし、誰も彼も私の事を蔑ろにする!
攻略したはずの三人だって初めは優しかったのに、今ではダグラスは全然姿を見せないし、マーティンも来なくなった。ルーイ様は仕事が忙しくて殆ど会う事すら出来ない。やっと香水が手に入ったのに会えなかったら意味ないじゃない!
ようやく会えたと思ったリンゼヒースは冷たいし、ドラゴンに乗った奴等が襲ってきたから追い払ってあげようとしたらめちゃくちゃ怒られた。その上、お城に来てもいっつも一室に閉じ込められて、帰るまで誰も助けに来てくれない!
どんどん状況が悪くなるばかりだわ!
「私はヒロインなのに!!」
一度椅子を投げてドアを壊して脱走したせいで家具もまともにない部屋の中、どんなに泣き叫んでも召し使いすらご飯の時以外は来てくれない。外に出てルーイ様を探していたらあの時襲って来た青い髪をしたドラゴン男がいたからちょっと喧嘩売っただけなのに!
ゲームの中だったらこんな事にはならなかったわ!ゲームのステラは相手から愛されて甘やかされてたのに、私がここで目覚めてかっこいいイケメンに囲まれてチヤホヤされてたのなんか本当に一瞬だけ。何でなのよ、理不尽だわ!
せっかくヒロインに生まれ変わって、今度こそ誰からも愛されると思った。生まれ変わる前の惨めで一人きりな寂しい人生なんて送らないと思っていたのに!
叫ぶのにも暴れるのにも疲れて唯一置かれた質素なソファーに座り込んで溜息を零す。どうしてこんな事になっているんだろう。視界に入るドレスはもう何度も着て少し形が崩れてきたし、暴れたせいでほつれている部分もある。
独りきりの部屋で嫌でも思い出すのは前世で死ぬ前のことだ。
小さい頃からずっと憧れていた仕事に就けたけれど、就職先で心を病んで以来周りの人と上手く付き合えなくて。誰かと接するのが嫌になって何年も働かずに家に引き篭もっていた。
毎日の楽しみはネットサーフィンと恋愛ゲームで、この世界は最期にハマって遊んだゲームだった。
ゲームの世界ならば、誰も彼も私を愛してくれる。罵倒する事も陰口を囁く事もない。ただ、キラキラしてドキドキするような恋が待っていた。
のめり込む程に現実から目を逸らし続けた。ゴミだらけの狭くてテレビしかついていない薄暗い部屋。親にすら見放されていたあの暗い場所で私はずっと独りきりで……。
どんどん沈んでいく頭を振って考えを切り替える。ダメダメ、今の私は「ステラ」なんだから! 前の自分を思い出して落ち込んでる暇なんてないわ。
これまでの事を思い返してみれば、セイアッドを断罪する所までは全部順調だった。それなのに、あの男は高笑いして颯爽と去っていったわ。
あんな骸骨みたいな不気味な男を視界に入れるのも嫌だったから大して話もしなかったし、ゲームでも惨めなちょい役だから気にした事はなかった。でも、あの男の行動から全部がおかしくなっているのは確かだ。
こういうのをゲームとか漫画だと特異点って言うんだっけ。だとしたらセイアッドが変な事をしておかしくなっている世界ならアイツがいなくなれば元に戻るんじゃないかな。
そうだわ!なんかのゲームでは特異点は修正しなきゃいけないって言ってたもの!そうやって私は何度も世界を救ってきたんだから!私ってば冴えてる!
問題はどうやってアイツを消すかよね。今は領地にいるんだっけ。誰か話していたけど、馬車で一週間も掛かるって話だからそんな田舎に私が直接行くのは現実的じゃないわね。
そうだ、ヤロミールがいるわ!アイツはセイアッドの事が好きだし、私がちょっと手紙で焚き付けてやったらすぐに会いに行ったみたい。ついでにあの香水を見つけてきてくれたのは助かったわ。
顔見知りならセイアッドも油断するよね。ヤロミールには媚薬とか嘘を付いて毒でも飲ませればいいわ!
それで、セイアッドが死ねばきっと全部元通りになる。そうに違いない。
私は聖女として祭り上げられて、大好きなイケメン達と幸せに暮らすの。これ以上邪魔はさせないんだから!
そうと決まったら部屋に閉じ込められている時間が勿体無いわ。明日からは此処には来ずにまずは毒薬をどうにかして手に入れなきゃ。お父様にお願いしたら用意してくれるかしら。
大人しく家で反省しているフリをしていれば、王様達も怒るのやめて許してくれるかもしれないし…私はまだ諦めないわ!
だって、この世界は私の為にあるんだから!!
何なのよ!
何をしても上手くいかないし、誰も彼も私の事を蔑ろにする!
攻略したはずの三人だって初めは優しかったのに、今ではダグラスは全然姿を見せないし、マーティンも来なくなった。ルーイ様は仕事が忙しくて殆ど会う事すら出来ない。やっと香水が手に入ったのに会えなかったら意味ないじゃない!
ようやく会えたと思ったリンゼヒースは冷たいし、ドラゴンに乗った奴等が襲ってきたから追い払ってあげようとしたらめちゃくちゃ怒られた。その上、お城に来てもいっつも一室に閉じ込められて、帰るまで誰も助けに来てくれない!
どんどん状況が悪くなるばかりだわ!
「私はヒロインなのに!!」
一度椅子を投げてドアを壊して脱走したせいで家具もまともにない部屋の中、どんなに泣き叫んでも召し使いすらご飯の時以外は来てくれない。外に出てルーイ様を探していたらあの時襲って来た青い髪をしたドラゴン男がいたからちょっと喧嘩売っただけなのに!
ゲームの中だったらこんな事にはならなかったわ!ゲームのステラは相手から愛されて甘やかされてたのに、私がここで目覚めてかっこいいイケメンに囲まれてチヤホヤされてたのなんか本当に一瞬だけ。何でなのよ、理不尽だわ!
せっかくヒロインに生まれ変わって、今度こそ誰からも愛されると思った。生まれ変わる前の惨めで一人きりな寂しい人生なんて送らないと思っていたのに!
叫ぶのにも暴れるのにも疲れて唯一置かれた質素なソファーに座り込んで溜息を零す。どうしてこんな事になっているんだろう。視界に入るドレスはもう何度も着て少し形が崩れてきたし、暴れたせいでほつれている部分もある。
独りきりの部屋で嫌でも思い出すのは前世で死ぬ前のことだ。
小さい頃からずっと憧れていた仕事に就けたけれど、就職先で心を病んで以来周りの人と上手く付き合えなくて。誰かと接するのが嫌になって何年も働かずに家に引き篭もっていた。
毎日の楽しみはネットサーフィンと恋愛ゲームで、この世界は最期にハマって遊んだゲームだった。
ゲームの世界ならば、誰も彼も私を愛してくれる。罵倒する事も陰口を囁く事もない。ただ、キラキラしてドキドキするような恋が待っていた。
のめり込む程に現実から目を逸らし続けた。ゴミだらけの狭くてテレビしかついていない薄暗い部屋。親にすら見放されていたあの暗い場所で私はずっと独りきりで……。
どんどん沈んでいく頭を振って考えを切り替える。ダメダメ、今の私は「ステラ」なんだから! 前の自分を思い出して落ち込んでる暇なんてないわ。
これまでの事を思い返してみれば、セイアッドを断罪する所までは全部順調だった。それなのに、あの男は高笑いして颯爽と去っていったわ。
あんな骸骨みたいな不気味な男を視界に入れるのも嫌だったから大して話もしなかったし、ゲームでも惨めなちょい役だから気にした事はなかった。でも、あの男の行動から全部がおかしくなっているのは確かだ。
こういうのをゲームとか漫画だと特異点って言うんだっけ。だとしたらセイアッドが変な事をしておかしくなっている世界ならアイツがいなくなれば元に戻るんじゃないかな。
そうだわ!なんかのゲームでは特異点は修正しなきゃいけないって言ってたもの!そうやって私は何度も世界を救ってきたんだから!私ってば冴えてる!
問題はどうやってアイツを消すかよね。今は領地にいるんだっけ。誰か話していたけど、馬車で一週間も掛かるって話だからそんな田舎に私が直接行くのは現実的じゃないわね。
そうだ、ヤロミールがいるわ!アイツはセイアッドの事が好きだし、私がちょっと手紙で焚き付けてやったらすぐに会いに行ったみたい。ついでにあの香水を見つけてきてくれたのは助かったわ。
顔見知りならセイアッドも油断するよね。ヤロミールには媚薬とか嘘を付いて毒でも飲ませればいいわ!
それで、セイアッドが死ねばきっと全部元通りになる。そうに違いない。
私は聖女として祭り上げられて、大好きなイケメン達と幸せに暮らすの。これ以上邪魔はさせないんだから!
そうと決まったら部屋に閉じ込められている時間が勿体無いわ。明日からは此処には来ずにまずは毒薬をどうにかして手に入れなきゃ。お父様にお願いしたら用意してくれるかしら。
大人しく家で反省しているフリをしていれば、王様達も怒るのやめて許してくれるかもしれないし…私はまだ諦めないわ!
だって、この世界は私の為にあるんだから!!
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