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偶然3 side作之助
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たぶんあいつらは学内までは入ってこない。
入ってきたら叩き出すしかないんだけど、さっさと学校入って出入りが確認出来る辺りに隠れて見張っていよう。
今日は、昨日の水都さんの暴走が変な噂にならないように対策しようと早めに出てきたから生徒は少ない。
とはいえ部活生はもう校内だろうという時間。
俺が校門に駆け込むときも視線を感じた。
今更俺のヘンな噂が一つ増えたところでなんともない。
「だーっ! クソいねえ!」
「なあ、コガサク本当にヤンキーやめたんじゃね? 普通逃げねえだろ」
お前らの普通は普通の人には非常識なんだよ。語るな。
「あの噂がホントだってのか? 女に負けたってやつ」
え、何それ、初耳。
「ああ。負けた女に惚れこんで昨日なんかはお姫様抱っこで爆走してたって話も聞いた」
おい待てこら。俺は負けてないし惚れてないしやったのは俵担ぎだ。
……と頭の中で反論したところで、その相手と思われている人に……心当たり……ある……。
水都さんがきっかけで喧嘩やめたのも本当だしな。
色々と異論はあるけど、それを信じて俺に呆れてくれたらいいんだけど。
三人は少しだけキョロキョロしていたけど、登校してくる生徒の目を気にしてか、それとも俺は逃げ切ったと思ったのか去って行った。
実に情けないけど、今の俺にはこれが正解。
俺が続けたいのは喧嘩じゃなくて水都さんの友達だから、
「コガサク? 何してんの」
ん? 今度は女子の声で呼ばれて振り返ると、今登校してきたらしい山手露季さんが、木の影にコソコソしている俺を平坦な目で見ていた。
あの、水都さんの友達には呆れられたくない……。
「ごめん、ちょっと……」
適当に誤魔化して木陰から出る。
そのままなんとなく山手さんと並んで歩いてしまった。
……山手さんの不利にならないといいけど……。
「そういやコガサク。あんた姫抱きくらいできない?」
斜めに睨みあげて来る山手さん。そのネタいつまで引っ張るの……。
「昨日はその選択肢が思いつかなかった。次はそうする」
「いや次があっても困るんだけど」
確かに。心の中で同意していると、山手さんが軽く息を吐いた。
「……昨日は私も悪ノリしちゃったしコガサクにどうこう言えた立場じゃないんだけどね」
こちらも自覚アリでしたか。
「なら次からは山手さんたちが止めておいて」
俺が言うと、山手さんは少し驚いたような顔で俺を見て来た。何言ってんだ、みたいなその反応はなに。
「何言ってんの。私たちが止めても聞かないよ」
「……なんで?」
脳内のそのままの言葉を言われた。なんとも言えない気持ちになる。
「水都ちゃんの中での優先順位、コガサクのが上だから。親友って呼ぶ羽咲ちゃんと同じくらいにいるんじゃないかな」
「………」
どういう意味?
「どうしてそんなことわかるの?」
「女のカン」
「……そうですか」
これは何と返したらいいやつだ。山手さんは軽く息をついた。
「今のツッコミどころだよ。って言っても半分は本当。中学んとき女子の間でちょっともめ事があったんだ。私と快理ちゃんは小学校の頃から二人でいることが多くてその件には関わってなかったんだけど……巻き込まれて、少し快理ちゃんと、お互い喋りたくても喋れない期間があったんだ。女がたくさん集まるとロクなことないわーって感じのこと」
「……水都さんは女性だけど、いいの?」
「いいよ。水都ちゃんも女だけど、ハッキリ裏表がないから一緒にいられる。この人は裏切らない人だって。裏表がない分、昨日みたいに手のかかる子みたいだけど」
「……山手さん、水都さんの保護者みたいだね」
水都さんは何と言うんだろう……末っ子気質なところがあるかもしれない。
「コガサクのが保護者やってると思うよ? 水都ちゃんが暴走したらコガサク呼べって言われてるし」
「………」
それは保護者かな。保護者だな。俺はいつの間にそんな位置に……。
「……山手さんたちは、俺のこと嫌じゃないの?」
山手さんたちだって水都さんの友達だ。なのにそんなランク付けみたいなこと……。
「全然。水都ちゃんと友達になるきっかけくれたのだってコガサクだしね。人の中で他人の優劣があるのは仕方ないよ。でも私は、胸を張って水都ちゃんの友達だって言えるよ? それくらいの態度を、水都ちゃんは見せてくれている。十分でしょ?」
十分……なのかな。友達一年生の俺にはそこまでわからないけど、山手さんが納得しているならそれでいいか。
「んで、コガサクも私らの友達だろ?」
入ってきたら叩き出すしかないんだけど、さっさと学校入って出入りが確認出来る辺りに隠れて見張っていよう。
今日は、昨日の水都さんの暴走が変な噂にならないように対策しようと早めに出てきたから生徒は少ない。
とはいえ部活生はもう校内だろうという時間。
俺が校門に駆け込むときも視線を感じた。
今更俺のヘンな噂が一つ増えたところでなんともない。
「だーっ! クソいねえ!」
「なあ、コガサク本当にヤンキーやめたんじゃね? 普通逃げねえだろ」
お前らの普通は普通の人には非常識なんだよ。語るな。
「あの噂がホントだってのか? 女に負けたってやつ」
え、何それ、初耳。
「ああ。負けた女に惚れこんで昨日なんかはお姫様抱っこで爆走してたって話も聞いた」
おい待てこら。俺は負けてないし惚れてないしやったのは俵担ぎだ。
……と頭の中で反論したところで、その相手と思われている人に……心当たり……ある……。
水都さんがきっかけで喧嘩やめたのも本当だしな。
色々と異論はあるけど、それを信じて俺に呆れてくれたらいいんだけど。
三人は少しだけキョロキョロしていたけど、登校してくる生徒の目を気にしてか、それとも俺は逃げ切ったと思ったのか去って行った。
実に情けないけど、今の俺にはこれが正解。
俺が続けたいのは喧嘩じゃなくて水都さんの友達だから、
「コガサク? 何してんの」
ん? 今度は女子の声で呼ばれて振り返ると、今登校してきたらしい山手露季さんが、木の影にコソコソしている俺を平坦な目で見ていた。
あの、水都さんの友達には呆れられたくない……。
「ごめん、ちょっと……」
適当に誤魔化して木陰から出る。
そのままなんとなく山手さんと並んで歩いてしまった。
……山手さんの不利にならないといいけど……。
「そういやコガサク。あんた姫抱きくらいできない?」
斜めに睨みあげて来る山手さん。そのネタいつまで引っ張るの……。
「昨日はその選択肢が思いつかなかった。次はそうする」
「いや次があっても困るんだけど」
確かに。心の中で同意していると、山手さんが軽く息を吐いた。
「……昨日は私も悪ノリしちゃったしコガサクにどうこう言えた立場じゃないんだけどね」
こちらも自覚アリでしたか。
「なら次からは山手さんたちが止めておいて」
俺が言うと、山手さんは少し驚いたような顔で俺を見て来た。何言ってんだ、みたいなその反応はなに。
「何言ってんの。私たちが止めても聞かないよ」
「……なんで?」
脳内のそのままの言葉を言われた。なんとも言えない気持ちになる。
「水都ちゃんの中での優先順位、コガサクのが上だから。親友って呼ぶ羽咲ちゃんと同じくらいにいるんじゃないかな」
「………」
どういう意味?
「どうしてそんなことわかるの?」
「女のカン」
「……そうですか」
これは何と返したらいいやつだ。山手さんは軽く息をついた。
「今のツッコミどころだよ。って言っても半分は本当。中学んとき女子の間でちょっともめ事があったんだ。私と快理ちゃんは小学校の頃から二人でいることが多くてその件には関わってなかったんだけど……巻き込まれて、少し快理ちゃんと、お互い喋りたくても喋れない期間があったんだ。女がたくさん集まるとロクなことないわーって感じのこと」
「……水都さんは女性だけど、いいの?」
「いいよ。水都ちゃんも女だけど、ハッキリ裏表がないから一緒にいられる。この人は裏切らない人だって。裏表がない分、昨日みたいに手のかかる子みたいだけど」
「……山手さん、水都さんの保護者みたいだね」
水都さんは何と言うんだろう……末っ子気質なところがあるかもしれない。
「コガサクのが保護者やってると思うよ? 水都ちゃんが暴走したらコガサク呼べって言われてるし」
「………」
それは保護者かな。保護者だな。俺はいつの間にそんな位置に……。
「……山手さんたちは、俺のこと嫌じゃないの?」
山手さんたちだって水都さんの友達だ。なのにそんなランク付けみたいなこと……。
「全然。水都ちゃんと友達になるきっかけくれたのだってコガサクだしね。人の中で他人の優劣があるのは仕方ないよ。でも私は、胸を張って水都ちゃんの友達だって言えるよ? それくらいの態度を、水都ちゃんは見せてくれている。十分でしょ?」
十分……なのかな。友達一年生の俺にはそこまでわからないけど、山手さんが納得しているならそれでいいか。
「んで、コガサクも私らの友達だろ?」
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