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嫉妬7 side水都

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恥じらいを求めるような……恥じらい?

「え、なにそれ」

突拍子のない作之助の言葉に、半眼になってしまった。

「恥ずかしいって思うことくらいあるだろ?」

「あるけど……作之助に俵担ぎされたとき恥ずかしかった」

「……それは俺が悪かった。けど、同性ならともかく――いや、水都さんの場合は同性であっても異性であっても、簡単にす……すきとか言わない。誤解されるから」

「はあ……」

誤解? わたしが羽咲ちゃんや作之助を大好きなのは本当だから、誤解されるなら「嫌い」って思われる方だけど……。

って、同性も駄目なの? 女子同士って割と普通に「すきー」とか言うけど……。

羽咲ちゃんに何万回言ったかわからないよ。

作之助に食って掛かってもいいんだけど、なんとなくここは大人しく言うことを聞いておいた方がいいような気がする。

作之助と喧嘩したいわけじゃないし、むしろ喧嘩とかせずに仲良くしていたい。

「わかりました。簡単に言わないようにします」

「うん」

「だから理由を教えてください。わたしが納得出来る理由だったら、作之助の言うことききます」

そう続けると、作之助はうっと息を詰まらせた。

わたしが作之助を見たままでいると、少しため息をついてから話し出した。

「今の時世、同性愛も珍しくない。だから、簡単に他人にす……「すき」とか言ってると、言われた方は水都さんに恋愛対象に見られているかもって期待するだろうし、それを聞いた周りも水都さんはこの人が恋愛対象としてすきなんだって誤解するかもしれない。水都さんが本当にすきになった人ならいいんだけど……友達に軽々しく言わない方がいいってこと。俺の考えでしかないけど」

「………」

なるほど。わたしの『大好き』が恋愛対象へ向けた『好き』だと誤解されるってことか。

面倒だったろうに、ちゃんと言葉にして教えてくれた作之助はやっぱり紳士だ。

「そういう理由ならわかった。付き合いたいって思った人以外には言わないようにする」

「そうして。……じゃあ帰るよ。総真に、水都さん送ってって言われてるから」

「あ、ありがとう……あ! 露季ちゃんと快理ちゃん置いてきちゃったのどうしようっ」

帰れなくなってたらどうしようと慌てていると作之助が、「総真が、山手さんと常盤さんは帰ったって言ってたよ」と教えてくれた。

そっか……よかった。今日グループメッセージで謝っておこう。謝り倒しておこう。


+++


「………」

「………」

そしてわたしの家までの帰り道ですが……会話がない! 作之助と一緒で会話がないなんて今までにあった? 何か喋らなくちゃと思うんだけど、口がうまく動かない……。

「水都さん」

「はっ、はい!?」

呼ばれて隣を見上げると、作之助は前を向いたまま話していた。

「俺今まで友達いなくて玲哉も友達って言うより古なじみって感じだし、友達をうまくやれるかはわからないけど、護衛ならやれると思うんだ」

「あ……うん?」

ごえい? って、……護衛? なにかを護ってるのかな?

「だから、安心していいからね」

「あ……うん」

なんだろう、わたしが関わるものを護っているのかな。

「えーと……作之助、」

「あ、着いたね。じゃあ俺はこれで」

「あ、うん。ありがとう」

作之助に何を安心していいのって訊いていいのかな……? って迷っていたらうちについてしまった。

もう一度言っておかないとと思って、門の前で作之助に頭を下げた。

「あの、今日は本当にごめんなさい」

「本当だよ」

う……作之助だんだん容赦なくなってきている……。下げた頭をあげにくい……。

「ちゃんと謝っておくんだよ。方々(ほうぼう)に」

「はい……」

わたしはどれだけの方向に迷惑かけたんだ……。ごめんなさい。

「また明日」

「は、はいっ。また」

その声を聞いてやっと顔をあげられると、作之助は怒った顔ではなかった。

むしろ微笑んでくれていて……本当に優しいなあ。

遠ざかる作之助の後ろ姿を見ながら、頭の中で謝る人をピックアップしていた。

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