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五 羽咲の名前をつけたの俺らしいけど……憶えてないな。

side那也11

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由羽くんが死ぬの!? え、え!? なんで!? 頭の上から振って来た声に困惑する。

「那也ちゃん大丈夫―?」

のんびりした声は菜雪ちゃんだった。私は唯一由羽くんから逃れた右腕を必死にばたつかせる。

「菜雪ちゃん! ど、どうすればいいの!? ってか由羽くんどうしたの!?」

由羽くんは黙って私を抱きしめ続ける。ほんとどうしたの!?

「あのねー、由羽、心労死するとこだったんだよ」

「心労死!?」

何がそんな負担をかけただと!?

「那也ちゃんが事件に巻き込まれたって話が流れて来て、由羽ってば心配で那也ちゃんのこと探し回ってたの。その結果ボロボロでヨレてるの」

私のせい!?

「ゆ、由羽くん……? ご覧の通り私は無傷ですよ……?」

元気だし怪我もないし。私がそう続けると、やっと腕の力がゆるんだ。

「………」

見上げる私と、見下ろす由羽くんの視線が交わる。

唇を噛んで目元は泣きだしそうで、そう言えば由羽くんって泣き上戸なんだっけ、とこんなときだけど思い出していた。

「心配、かけてしまったみたいでごめん。でも、あのとき犯人を見逃すことは出来なくて――ってか、咄嗟に竹刀握ってて――」

反射的にひったくり犯を捕まえる算段を頭の中で立てていて、それを実行に移すことを邪魔する考えは欠片もなかった。

「……那也の正義感を否定しないし、悪いことだとも思わない。でも、那也は女の子なんだよ!? 怪我したらどうする! いや怪我しても俺の嫁になればいいけど!」

………はい?

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