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3 動き出す当主
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しおりを挟む桜苑の推測がすべて的を射ているわけではないだろう。
だが、はなっから否定するには白桜には根拠もなければ説得力もない。桜苑の方が近い気もする。
「そうさな。わたしもそれは否定できぬ。だがな、主殿。だからどうする?」
だからどうする。
桜苑は白桜に甘いほかのふたりの式と違って、容赦がない。
ここで尻尾を巻いて逃げ出すなど、それは白桜ではない。
桜苑がただひとりと認めた主殿ではない。
白桜は考える。
涙雨が倒れていたこと、そして霊力がなくなっていたこと。
冬湖が倒れていたこと、その記憶の曖昧さ。
そして二度も涙雨が倒れていたこと。
「……涙雨殿が霊力欲しさに襲われたとしたら、なぜうちの前に置かれた?」
――涙雨は空を飛ぶことが出来る、鳥の姿の妖異だ。
だから、空から落ちて倒れていてもおかしい可能性は低いと考えた。
だが、冬湖は人間だ。
そして御門別邸は何も人通りのない山の中にあるわけではない。
住宅街とは言えないが、人通りもある道に面していて、そこに倒れていた。
――倒れていたわけではなく、誰かが置いた可能性。
「置かれた……な。そうして何か得をすると考えるのが普通か……」
桜苑は返す。
(得をする……)
白桜も頭の中で反復する。
冬湖を御門と接触させて得をする、というのが一番考えやすい線だろうか。
御門――しかも、当主である白桜と。
(……いかん、そっちしか考えがいかない……タイミング悪)
折しも、許嫁の話が宙に浮かんだ状態の白桜では、御門との縁続きを狙う可能性を簡単に考えてしまう。
冬湖を――月御門に次ぐ格である作夜見から、御門が当主の花嫁を出すこと。
(……それにしては冬湖がびくつきすぎな気もするけど、強いられていたのならそうなるだろうか……)
「まあ、冬湖のことは置いておくか」
「……それでよろしいのか? 主殿」
桜苑の声が渋っているように聞こえる。
「いいよ。俺には『拒否』って手がある。じい様の命令で結婚を強いられても、俺は受け入れない」
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