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3 動き出す当主

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白桜もそう考える。

涙雨が二度、そして人間が一度、意識を失って同じ場所に倒れていた……。

しかもそこは、御門邸の前。

「……補足すると、冬湖の最後の記憶にあるのは、どこかは定かではないが繁華街を歩いていて、黒い小鳥が降ってきたそうだ。涙雨殿に最後の記憶を聞いたら、人の姿をしたものたちがたくさんいてその上空を飛んでいたそうだ」

「それがどこだか調べる」

「俺も、俺なりに調べようと思う。――以上が涙雨殿に関わる報告だ」

「うん、ありがとう。それから、何度も面倒をかけてすまない」

黒藤が白桜に向かって、深く頭を下げた。

「気にするな。もう起こらないようにすればいいだけだ」

白桜の言葉に、黒藤は顔をあげた。その顔はさっぱりしている。

「ああ」


+++


作夜見秋生からの詳細な返事は、直接訪れる形ではなく式文で来た。

取り急ぎ状況報告をという白桜が送った最初の式文の返事で、直接謝罪に行きたいという秋生を、冬湖がまだ邸内にいるからという理由で白桜が断った。

冬湖自身から家出の理由は聞いていないから、冬湖はまだそれを言えない――それに触れることはきついだろうと思って、秋生の訪問はやめてもらったのだ。

二度目にやってきた白い小鳥は白桜の手にとまって一枚の紙に変わる。

作夜見秋生は、決して権威欲にまみれた高慢ちきな男ではない。

御門と小路に次ぐ高位の陰陽師一族の長らしく、厳格ではあるが。

経緯を並べるならまず、白桜が、冬湖嬢を御門邸に保護している、と式文と送った。

すぐさま返ってきた返事には、冬湖の家出が本当であることと、すぐに迎えに行くと記されていた。

それを読んだ白桜はちょうど来ていた黒藤に話してから、二度目の式文を飛ばした。

冬湖の状態から考えて、しばらくうちに逗留(とうりゅう)させた方がいいだろうと判断した。

連絡は訪問ではなく式文で、と。

そして、冬湖の家出の詳細を尋ねた。

二度目の返事も、式文でやってきた。

そこには、秋生の想いがつづられていた。

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