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2 御門の朝
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しおりを挟む御門流当主となってしまえば、白桜自身が当主失格の問題を起こさない限り、月御門家の当主・白桜として生きていく以外の道はなくなる。
白里はその道を白桜に残して、引退する道を選んだ。
白里も孫可愛いはあるだろう。しかもたった一人の愛娘が遺した子だ。
その愛ゆえ。
白桜は、生きる道を決められている。
黒藤は、自分で選んでここへ来た。
黒藤は一応、小路流の次代とされている。それなりの教育も受けてきた。
小路流の現当主・逆仁が老齢になっても黒藤が当主を襲名しないのは、黒藤の意思だ。
当主になんかならない、と、黒藤は言い張ることが出来る。
黒藤と白桜では性格もまったく違うが、性格の問題……というより、黒藤と白桜の場合は生まれの問題だろう。
白桜は背負っているものが多すぎる。そして捨てることもできない、白桜の優しく弱い性格。
黒藤は生まれが忌避されている。腫物扱いされても気にしない、黒藤の投げやりな性格。
黒藤は白桜に惚れている。男とか女とかどうでもいいから、白桜がすきだ。
母は黒藤が一歳の頃に眠った。小さな頃は逆仁が面倒を見てくれていて、白里と逢う用事があるときは黒藤も連れて行ってくれていた。
白桜と出逢う前の黒藤は白里には嫌われておらず、当時の当主同士、白里と育ての親の逆仁の仲は良好だった。
白里の孫、御門流の後継者として、幼い白桜と出逢った。
白里は白桜の性別を完璧に隠し、生まれたときから男(お)の子として白桜は知られていた。
黒藤が、白桜は女の子だ、と白里の目の前で言ってしまったものだから、白の性別を隠したい白里にとって黒藤は敵になってしまった。以来嫌われている。
白桜をすきになったのは、なにも出逢ってすぐではない。一目惚れではなく、きっかけがあった。
白桜が三歳のとき、逆仁は相も変わらず黒藤を連れて御門邸を訪ねていた。
白里が黒藤を嫌っていても、普段人を好き嫌いしない白里のその反応が逆仁には愉快だったらしく、わざと黒藤を連れて行っていた。
そういうところが性悪な小路の性格出ていると思う黒藤だ。
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