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side龍生3
しおりを挟む在義に目をかけていた上層部はブチ切れ。それこそ自分の娘との縁組を考えている奴もいたくらいだ。結局在義は、警視庁は辞め、隣の県警に移った。
若干――かなり無理矢理だったが、在義も納得したことで配属が決定された。同時期に退職した俺にも同じように声はかかっていたが、俺は警視庁でやること、ではなく、警察でやることを終えたと感じていたので誘いには乗らなかった。
代わりに、在義の家から一番近く、都会と田舎が入り混じって勝手のいい上総警察署の近くに店を持った。同業者である探偵たちが使える場所として。
在義が娘に店を訪れるのをゆるさなかったのは、ただの喫茶店ではないからだ。下手をしたら、事件に巻き込まれてしまうかもしれないと危惧していた。そこを流夜が連れてきてしまった。知った在義は「まじかー」と頭を抱えていたが、流夜が娘ちゃんを危険から護ると宣言したので、出入り禁止は解除した。
現在、俺に伴侶はない。好いた人がいないわけではないが。
在義の一つ空けた隣に腰かけて、睨みつけてやる。
「なんで愛子来るのにここにすんだよ」
「龍生のところだって言えば飛んでくるだろう。仕事も片付けて」
「ざけんな! 俺があいつ苦手なの知ってんだろ!」
思わず声を荒らげても、店内には同業者しかいないので気に留めない。俺らの喧嘩は日常茶飯事だ。
「お前のところぐらい言わなきゃあれこれ言って逃げるからな」
「くっそ性悪……! おめえ娘ちゃんにその性格ばらすぞ」
「咲桜はお前より俺を信じるよ」
「……今は流夜のが信じるような気がするけどなー」
「………………」
あ、効いた。在義が六秒ほど固まった。適当に言ったのに、まさか本当にあの偽婚約者の仲が進展しているのだろうか。在義は、元部下という体面上『春芽くん』と呼んでいるが、普段は『愛子』と呼んでいる。娘ちゃんは、その呼び方は聞いたことはないはずだ。
「おい? なんだ、流夜に掻っ攫われそうなのか?」
「………………」
おお、どうやらガチのようだ。更に落ち込んだ。余計なことは言うくせに、肝心なことはあまり言わない在義だ。
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