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六 私今ものすごくドキドキしてます。
side流夜20
しおりを挟む「………」
「どうして……母さんがそこまで、追い詰められていたのか、わからないんです……」
「………」
「……あのとき、私も死んでればよかったんです」
「………」
「私も一緒に死んでいれば、父さんに余計な面倒はかけずに済んだんです……」
「………」
「……ねえ、先生――わたし、父さんにどう謝ればいいんですかね……。わからないんです。…………がんばるしか、わからなかったんです………」
「……咲桜が謝る必要はない」
俺の言葉に、咲桜が上を向く。
少し距離を開けて、咲桜の顔を覗き込んだ。
あふれていた涙は、まだ残っている。
「咲桜が在義さんに謝ることなんて一つもない。あるとすれば、俺の方だ」
「……先生が?」
なんでですか? と咲桜の瞳が大きく見開かれる。
「在義さんの大事な娘をこんな至近距離で抱き寄せたって知られたら、俺は射撃の的にされる」
「どんな状態ですか⁉」
さっきみたいに、咲桜が大きく叫んだ。いつもの咲桜の反応。それを見た俺は、くすりと笑う。
「咲桜は自覚ないかもしれないけど、在義さんの娘バカは警察内部では有名なんだ。いつも愛娘の写真を持ち歩いているけど、見せて惚れられたら嫌だって言って、男の職員には見せたことがないとか」
「え……ほんとですか?」
在義父さん、そんなことしてんの? と、咲桜は、たぶん今度は違う意味で頬を引きつらせた。そして、ちゃんとそう呼んだ。
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