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六 私今ものすごくドキドキしてます。

side流夜18

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「っ、―――っ」

「華取? どうしたっ?」

華取がみせたそれは、過呼吸の症状だ。胸元を両手で絞めつけるように抑えて、呼吸がまともに出来ていない。見開いた瞳は涙で潤んで、口からは咳とも嗚咽ともとれない苦しい呼吸ばかりが出てくる。

「華取、――華取っ」

慌てて対処しようとするが、いきなりのことに頭が追いつかなかった。対処知識なんていくらでも詰め込んであるはずなのに―――

「――咲桜!」

どうすればいいか、知識としては知っているはずなのに、華取を抱きしめていた。大きく背中に手を廻して、息が出来るように胸は空間を作っておく。

「大丈夫だ、咲桜。落ち着いて。大丈夫、呼吸、俺に合わせて」

ポンポンと、リズムを作るように背中を叩く。

咲桜、大丈夫、苦しくない。その言葉を繰り返していると、華取の呼吸は落ち着いてきた。

長く息を吐いて、吸って、また吐き出す。それを何度かして、華取はこちらを見上げた。涙でボロボロになった表情。唇を噛みしめていて、なにか言いたげな顔だ。

呼吸は落ち着いている。近づいた所為でわかる心音も、安定している。

「ごめん、また、まずいことを言ってしまったか?」

近づきたいと思ってしまった。そして問いかけてしまった。その直後のことだから、邪な心を見透かされようで。

華取は、唇を噛んだ。けれど離れようともしないから、俺はそのまま抱きしめた腕を離さないでいた。何がそんなにつらいんだ。苦しそうにしているんだ? ……大丈夫か? お前は……俺が傍にいても、大丈夫か?

「……くび、だめなんです、わたし」
 
華取は小さな声で言って、腕の中で再び俯いた。

「くび?」

「首に、なにか触るの、だめ、なんです……」

「……なにか、いやなことでも?」

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