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六 私今ものすごくドキドキしてます。
side流夜1
しおりを挟む「ん?」
ふと気づくと、通路に華取がいた。
松生も一緒で、更にもう一人、体育科の弥栄旭葵(やさか あさき)の許へ駆けていくところだった。
今俺がいるのは本校舎の歴史科の教員室。
教員が共同で使うものはここに置いてあるので、それを取りに来たところだ。
室には一人先客がいて、窓が開け放たれていた。その向こう側、中庭を通る通路で華取たちが楽しそうに話している。
弥栄は俺と同い年で、はっきり言って見た目がいい。
日本人が好む均整の取れた顔立ちというやつだ。
生徒からも人気はあるし、教師間での受けもいい。やたら楽しそうに話しているからか、俺の意識はそちらへ向かってしまった。
「おー、咲桜、笑満」
爽やかな笑顔で受け入れた弥栄。俺は一瞬固まった。今……名前で?
「旭葵くん、次なんだっけ?」
「女子はバレー、男子はバスケ」
「えー、うちらもバスケもしたいー」
口をとがらせる松生に、弥栄は苦笑した。
「バスケもってなんだよ。両方やんのか? なあ、咲桜」
「両方出来るように旭葵くんがプログラム考えてくれたら、出来るよ」
「無茶言うなよ」
そんな会話が聞こえてくる。こちらは完璧に硬直してしまった。気合いで打破したけど。……華取と弥栄って、あんなに仲良かったのか……。
弥栄が生徒に対してフレンドリーなのは知っている。けれど、華取が弥栄に懐いている様子が……どうにも。
気分が悪い。
あ、今度は脳と口が連動しそうだった。いや待て。今のはむしろ言っちゃ駄目だろう、立場的に。
仕事場にこんな私情を持ち込むなと首を横に振った。
振り切るように視線を室内に向けた。まだ、華取の楽しそうな声は聞こえてくる。
……切り替えは出来たけど、納得は出来なかった。
どこか頭の奥が熱い。視界も若干ぼやけるように感じるし――とにかく、弥栄に懐く華取を見て、どことなく調子が悪かった。
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