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五 じゃあ、もらおうか。
side流夜6
しおりを挟む「はあっ? 婚約? 在義さんの娘って――あの子? 確か……さおとかいう……」
吹雪は(偽)婚約の件は知らなかったのか? もう半日もあれば吹雪にも調べられていただろうけれど――こいつの悪い癖が出ていなければ。
「娘さんも可哀想に。血の繋がりもないのにやっぱり巻き込まれちゃうんだねー」
吹雪は、欠片も華取に同情している様子もなくそんなことを言った。
その発言に、俺と降渡も行動が一瞬停止した。
同じ言葉に引っ掛かっているな……。血の繋がりってどういうことだ?
「なんだ、お前は知ってたか」
龍さんの声が吹雪に向く。
「うん? まあね。知ったのは警察入ってからだよ。内部に入れば公然の秘密って言うか、有名な話みたいだし」
吹雪は立ち上がり、勝手にカウンターの中に入った。
そして棚を漁ってお茶を作りはじめる。
龍さんはそれを横目に黙認してから、カウンターに額をつけた俺と、吹雪の言ったことを噛み砕いているためか黙っている降渡に目を遣る。
「で、お前らは知らなかった、と」
問われて、口をもごもごさせるのは降渡だ。
「いや、知らなかったっていうか……うん、知らなかった」
「降渡、減点三。知った仲だから慢心してたな」
「うっ……」
突きつけられた評価に、降渡は苦虫を噛んだ。
龍さんは警察を辞めたあとは探偵業をしていた時期がある。
そのため、私立探偵の降渡は『二宮龍生の後継』と目されることが多い。
俺が黙っていると、龍さんがぼやき半分の響きで言った。
「俺んとこで愚痴ってったってのは、話せってことだからな。訊くか? 流夜」
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