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四 偽モノの、婚約者ができました。
side咲桜7
しおりを挟む「ひみつ」
「えー、私は全部話したのにー?」
「今はね。恥ずかしいもん。いつかは話すよー」
「……絶対だよ?」
「うん。約束する」
目が合って、三秒ほど見つめ合った。そのあと、同時に吹き出す。
初めて逢ったときに手を引いた親友。私のことを知って、友達で居続けてくれる。
「取りあえず、頼には先生のこととか、色々秘密にしておきたいんだけど」
「どんな騒ぎ方するかわかんないもんね。あたしには話しちゃってよかったの?」
「そこは先生とも話した。私の方では、笑満だけには話しておきますって」
「仲いいねえ。妬けるなー」
「……そういうんじゃないって」
「あとさ、今度あたしも先生と話してみたいんだけど」
「じゃあ明日一緒に行く? またお弁当届けに行くから」
「わーい。先生の素顔見てやろー」
「びっくりするよー。見せてくれるかわからないけど」
「咲桜の秘密と取引で見せてもらうから」
笑満がめっちゃいい顔で言うので、私は軽く笑った。
「なに言ってんの」
「あ、夜々さんは? マナさんの紹介なら知ってるんでしょ?」
「それが、ねー……」
笑満が出した名前に、咲桜の顔色が一気に曇った。
「どした?」
「マナさんから、夜々さんのことは一個も聞いてないんだ。そんで、先生に夜々さんのことを話していいかも、一人じゃ判断つかなくて……」
「聞いてないんだ。うーん……咲桜、夜々さんのこと学校の誰にも話してないんでしょ?」
「うん……小学校のときは、お隣の家だからみんな当然のように知ってたけど、高校にもなると範囲広いし。もし夜々さんが隠していたかったら神宮先生には話せないじゃん? その逆もあるし」
「だよねぇ。そこは悩むね……」
板挟みだ。
うーんと二人して唸りつつも、いつしか馬鹿らしくなる。
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