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二 優しさをもらった気がした。
side流夜6
しおりを挟む「明日の昼休みは出てくること出来るか?」
「大丈夫ですよ。話つけにいきますか?」
「お前が言うと時々物騒だな」
「たぶん父さんの影響かと」
「そうなのか」
華取は真面目な顔で肯いた。
そして、在義さんの名が出ると俺も素直に肯いてしまう。
「少し詳細を調整したい。昼休み、旧館の歴史科の資料室に来てくれないか?」
「旧館? に、先生いるんですか?」
「一人で作業するときに使わせてもらっている。今は誰も使っていないから都合がいいんだ」
「わかりました。それ以外に気を付けることとかありますか?」
「学校では今までと変わらない態度でいてくれるとありがたい。急変するとどこから疑われるかもしれないから」
「了解です。では、おやすみなさい」
「ああ。……遅くまですまなかった。しっかり寝ろよ」
「はい」
そう言って華取が見せたのは、華がほころんだような幼い笑顔だった。
普段が大人っぽいから、余計愛らしく見える。
……愛らしい? なにがだ?
また自分の思考回路にツッコんでいると、俺が黙り込んだのを不審に思ったのか、華取が首を傾げた。
「? 先生? ――わっ?」
今度は華取が、驚いたように小さな悲鳴をあげた。
俺の手が頭に乗ったのだ。なんとはなしに動いてしまった。
……本格的に大丈夫だろうか、俺。
そんなことを考えつつも、華取の頭を撫でている。
華取は困ったように見上げてくる。
「どうしたんですか? 先生も眠いんですか?」
「いや――」
さっきから自分の言動に疑問符がいっぱいで、むしろ解決してほしいくらいなのだが。
……でも、せっかく、今、華取のこの距離にいるのは、俺だ。
「……お前は大丈夫だ。愛子が言っていたことで不安になったり、俺との関係で心配することはない。お前は俺が、絶対に大丈夫にするから」
「………」
やっと、手を離すことができた。
「じゃあ、またな」
あったかくして寝ろよ、最後にそう残して階段を下りた。
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