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二 優しさをもらった気がした。

side流夜3

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「早くに母親を亡くしていて、私もあまり家にいられなかった。育児はお隣に任せてしまった時期もある。それなのに、帰ってきたら新しい料理を覚えているし、掃除もしようとがんばっている。……あの子の叶えられる幸せだけは、私は譲れない」


「………はい」
 

これはたぶん、在義さんの審査だ。


仮とはいえ、対警察内部用に結ばれた婚約。密約。


俺をはかっている。
 

在義さんが、箸を置いた。俺も同じように姿勢を正す。


「流夜くん、素直に聞かせてほしい。咲桜のことをどう思った?」
 

どう思った。思う、ではなく、その形で在義さんは訊いた。
 

問われて、考える。


この場ではどう答えるのかが最善か――ではなく、確かに自分は、華取をどう思ったかを。
 

そちらで答えるべき気がして、考えた。


「……教師の立場ではなく、でいいですか?」


「ああ」
 

在義さんは静かに肯いた。


「たまに言動が物騒だけど、愛らしいと思います。なんというか……在義さんの娘、ですね」
 

俺の言葉はそこで途切れた。
 

在義さんのまとう雰囲気が怖くなっていた。


やば……言い過ぎたか。危険人物認定でもされたら終わりだ。


せっかく見つけたのに。


……ん? 見つけた? なにをだ? 


脳内で、自分の思ったことに疑問符を浮かべた。


俺も疲れているのだろうか。
 

ふう、と在義さんからため息がもれた。


「……咲桜は、反抗期がなかったんだ……」


「……反抗期? ですか?」
 

今度はなんの話だろう。


俺は一つ安堵しながら、オウム返しに問う。


どうやら睨まれてはいないようだ。

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