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一 俺は何をしたんですか。
side咲桜12
しおりを挟むあまりに私が苦悩しているからか、神宮先生はそう提案してきた。
どういう意味だろうと顔をあげた私が見たのは、神宮先生だったけど、纏う雰囲気が学校の『神宮先生』だった。
「――急なこと言ってすみません。でもそうしてもらえると俺も助かるし、華取さんの被害も少なくてすむかと」
華取さん――学校では、『神宮先生』には確かにそう呼ばれている。
だから、素の神宮先生が受け入れられないのであれば、学校と同じように対応してもらえれば確かにいいのかもしれない――と思ったのに、なぜか感じたのは痛みだった。
それがどこへ繋がる痛みなのかはわからなかったけど、息が詰まるような痛みを感じた。
……なんだこれ。
「……華取さん?」
また顔を覗き込まれた。変らない衝撃の美形。
……でも、なんでか、その顔が『神宮先生』なのが嫌だった。
「……わかりました。言う通りにするから、その……話し方、戻してください」
……そう言葉にするのは難しかった。
なぜかとても恥ずかしいことを要求している気になるから。
先生は二度、瞬いた。
「……どっちへ?」
その声がさっきまでの神宮先生のもので、何故か安心する私がいた。
続ける言葉を必死に考える。
頭を動かすより身体を動かす方がすきな私だけど、頑張って頭を回転させた。
「えっと、なんかこんなだけど私生活で関わっちゃったから、これっきりにしてもおかしい気がして、って言うかこれでもう先生扱いしちゃったらマナさんに疑われる気がして……ええと……」
回転しなかった。
要領を得ない説明に、神宮先生は何度も瞬いている。
続きを待たれていたらどうしよう……。
どんどん困っていく。
「……学校と同じにしなくていいのか?」
助け舟のような神宮先生の問いかけに、私はがばりと顔をあげた。
そして大きく何度も肯いた。
やっぱり考えるより動く方が先だった。単純だな。あはは。
「華取がそれでいいならいいんだけど」
「大丈夫ですっ」
勢い込んで答えると、神宮先生は少しだけ苦笑した。
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