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一 俺は何をしたんですか。

side咲桜3

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「咲桜、頼むから落ち着いて……」


「で、私は誰をぶっ飛ばせばいいんだ? 片腕くらいいただいてもいいかな?」
 

私は心の底から恨みの瞳で在義父さんを見た。


在義父さんはびくっと大きく肩を振るわせる。


こういう、意外と動揺が表に出るのは、私は在義父さんに似ていると言われる。


「ご、ごめん咲桜……私も春芽くんにはめられて……」
 

項垂れる在義父さん。


その名前が出れば、何故在義父さんがこのような場所に私を連れて来たかを納得するしかない。
 
この場というのは、旧い(たぶん)お茶屋さんの、庭に面した一室で、更に私は着物を着せられているという状況。
 

私は今朝在義父さんに、「咲桜に逢ってもらいたい人がいる」と言われて、いつもなら肯くところだが、今回はどこか嫌な感じがしたので渋っていると、どこからともなく私の師匠(せんせい)であるお隣のおばあさんが現れて、一突きで気絶させられたのだ。


そして気づいたら、長い髪まで綺麗に結われて着物を着つけられて、ここにいたのだ。


目を覚ました私がまず見たのは、土下座する在義父さんだった。


土下座するくらいならいい加減マナさんに厳しくすればいいものを。


私はマナさんの味方をするけどな。


「マナさん発信なら父さんが逆らえないのも仕方ないけど、なに? これ、本当に見合いでもさせる気なの?」
 

私は着物姿が落ち着かなくて、手をパタパタさせながら在義父さんを問い詰める。


「それが私も何も聞いてないんだ……」


「帰っていい?」


「ごめん、一目逢うくらいはして。春芽くんの私や龍生(りゅうせい)への爆弾投下がひどくなるから……」
 

最早顔もあげない在義父さん。


龍生さんとは、二宮龍生(にのみや りゅうせい)さん。


在義父さんの幼馴染で、ホンモノの相棒だ。


うちにもよく来てくれる。


ただ、龍生さんがやっているお店へはまだ出入り禁止されているけど。
 

うーん、在義父さんも龍生さんもすきだから、今以上に二人に迷惑かけるのは嫌だなあ。


でもマナさんもすきだからマナさんの言うことも叶えてあげたいけど、見合いとか本気でめんどくさいなあ。
 

少し、目をつむってうなった。


マナさんは歩く地雷原と言われるように爆弾投下がお好きな優秀な刑事だが(今日のコレも爆弾だろう)、幼い頃に桃子母さんを亡くしている私にとっては、母代りのうちの一人だ。

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