上 下
205 / 293
五 あの、人……だれ……?

side斎月3

しおりを挟む

「流夜さんから連絡あった。さくのこと、呼んだって」

「あ――。うん」

連絡済みだったようだ。

主咲くんは変わらず無表情で私の髪を撫でる。

――主咲くんは、唯一私のことを「さく」と呼ぶ。

「――で。この怪我はどうした?」

「え?」

手が滑り落ち、人差し指を頬の真ん中に置いた。

「中、切っているだろう」

その指摘に、私は目線を逸らせた。

事実、口の中には新しい傷があった。

「うえ……えーと、その……ちょーっと、格闘しちゃったかなー? って……」

「また現場か」

「……はい」

「犯人相手にして歯を食いしばり過ぎて切ったか」

「……ごめんなさい。もうしません……」

しゅんとすると、今度は両手で頬を包んだ。ぶに、とつねられる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある日、引き籠もり少年がフロンティア・トラベラーになった件について

神永 遙麦
ライト文芸
――どこだ、ここ?―― ――再び目を開くと、少年が凌弥の顔を覗き込んでいた―― イジメが原因で1年間不登校になった中学2年生の凌弥。ある日、激しい胸の痛みに襲われ、気がつくと見知らぬ地で倒れていた。 突然現れた少年から介抱を受け、同居生活が始まった。 「アル」と名乗った少年は謎が多いが、実直で誠実。凌弥はアルに好感を懐き、友情を育む。 だが、ある少女の一言でアルの存在に疑問を抱くようになる。 そんな中、凌弥は別な世界にトリップした。飢える者は奪われ、満ちる者は奪い続ける世界だった。 凌弥は英雄となることを志すが、凌弥の使命はまた別にあった。 そして、かつてのクラスメートである美桜と再会。

明日もいい天気 〈GANA. 短編集〉

GANA.
ライト文芸
◇短編集◇

冥界区役所事務官の理不尽研修は回避不可能 〜甘んじて受けたら五つの傷を負わされた〜

田古みゆう
ライト文芸
不慮の事故に巻き込まれた僕。 目覚めた場所は、黄泉の国への入り口だった。 このままでは、地獄行き決定!! 目の前にいる小鬼と事務官は楽しそうにそう言い放つ。 あんまりだ! 何も悪いことなんてしていないのに、そんなのってないだろう〜!!

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

わけありのイケメン捜査官は英国名家の御曹司、潜入先のロンドンで絶縁していた家族が事件に

川喜多アンヌ
ミステリー
あのイケメンが捜査官? 話せば長~いわけありで。 もしあなたの同僚が、潜入捜査官だったら? こんな人がいるんです。 ホークは十四歳で家出した。名門の家も学校も捨てた。以来ずっと偽名で生きている。だから他人に化ける演技は超一流。証券会社に潜入するのは問題ない……のはずだったんだけど――。 なりきり過ぎる捜査官の、どっちが本業かわからない潜入捜査。怒涛のような業務と客に振り回されて、任務を遂行できるのか? そんな中、家族を巻き込む事件に遭遇し……。 リアルなオフィスのあるあるに笑ってください。 主人公は4話目から登場します。表紙は自作です。 主な登場人物 ホーク……米国歳入庁(IRS)特別捜査官である主人公の暗号名。今回潜入中の名前はアラン・キャンベル。恋人の前ではデイヴィッド・コリンズ。 トニー・リナルディ……米国歳入庁の主任特別捜査官。ホークの上司。 メイリード・コリンズ……ワシントンでホークが同棲する恋人。 カルロ・バルディーニ……米国歳入庁捜査局ロンドン支部のリーダー。ホークのロンドンでの上司。 アダム・グリーンバーグ……LB証券でのホークの同僚。欧州株式営業部。 イーサン、ライアン、ルパート、ジョルジオ……同。 パメラ……同。営業アシスタント。 レイチェル・ハリー……同。審査部次長。 エディ・ミケルソン……同。株式部COO。 ハル・タキガワ……同。人事部スタッフ。東京支店のリストラでロンドンに転勤中。 ジェイミー・トールマン……LB証券でのホークの上司。株式営業本部長。 トマシュ・レコフ……ロマネスク海運の社長。ホークの客。 アンドレ・ブルラク……ロマネスク海運の財務担当者。 マリー・ラクロワ……トマシュ・レコフの愛人。ホークの客。 マーク・スチュアート……資産運用会社『セブンオークス』の社長。ホークの叔父。 グレン・スチュアート……マークの息子。

キッカイ町立図書館フシギ分室・怪奇現象対策課 〜キッカイ町の奇怪な日常〜

牧田紗矢乃
ライト文芸
幼い頃からのあこがれだった図書館での勤務が決まり、大喜びしていた私の目の前に現れたのは今にも崩れそうなボロボロの公民館でした。 しかもそこにあったのは図書館の名を借りた「怪奇現象対策室」なんて名前の怪しげな組織。 平穏なようでどこか奇妙なここキッカイ町で起こる不思議現象たちの真相を暴くため、日々奮闘しているらしいのですが……。 一日も早くちゃんとした図書館で働かせてもらえるよう、徹底的に抗議しつつ真面目に働きます!? 他の小説投稿サイトでも公開中。 不定期更新となります。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

幼なじみと転校生ヒロイン、どちらにコーディネートされたいですか?

もちお
ライト文芸
父親が営むインテリアショップで働く萩原翔太は大阪の高校に通う二年生。 そんな彼のクラスにある日、白峰華煉という転校生の女の子がやってきた。 容姿端麗で学力も優秀、けれども超がつくほどの塩対応な彼女は早くもクラスでは孤高の美少女というポジションを確立してしまうことに。 そんな転校生と自分は関わることはないと思っていた翔太だったが、偶然にも白峰が翔太の働くお店にやってきたことがきっかけで二人は一緒に働くようになってしまう!?

処理中です...