上 下
160 / 293
五 あの、人……だれ……?

side咲桜6

しおりを挟む

そのとき、ドアチャイムが鳴った。

お客さん? 足は反射的に動いて、出迎えてしまった。

長年の癖だろうか。

夜々さんの教え通り、勿論チェーンロックはかけたままだ。

「あ、咲桜帰ってたのか」

「! りゅっ」

うやくん……と、語尾は力なく霞む。

「入ってもいいか?」

「あ、うん……」

断る真っ当な理由がないので、一度閉めてからチェーンを外す。

ありがとう、と言って流夜くんは入って来た。

ドアが閉まった直後、当然のように抱きしめられた。

「あー。生き返るー」

温泉にでもつかったみたいな台詞だ。小さく身じろぎする。

「さっき電話したんだけど……帰ってきたばかりだったか?」

流夜くんが首を廻らす。

陽も落ちかけているのに、リビングに明かりもついていない。

本当に今帰って来たばかりのような感じ、だと察したんだろう。

「どうした? 何か考えごとでも?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】目覚めたら異世界で国境警備隊の隊員になっていた件。

みやこ嬢
ファンタジー
【2024年9月9日完結、全40話、ブロマンスファンタジー】 才智正哉(さいち・まさちか)は社会人一年生の会社員。ある日、真っ暗な闇の中で嘆く赤髪の青年の夢を見てから目を覚ますと異世界にいた。しかも、夢で見た赤髪の青年ゼノンの体に意識を宿した状態で。 仲間に事情を訴えてもまともに取り合ってもらえず、仕方なく『ゼノン』として過ごすことに。国境警備隊の任務について教わるうちに仲間たちと次第に打ち解けていく。 時折見る闇の夢で少しずつゼノンと交流し、入れ替わる前の記憶が欠落していることに気付く。元の体に戻るためには、まず記憶を取り戻さねばならない。 人情に厚く涙もろい隊長、隊長至上主義の班長、無愛想で油断ならない同僚、重い過去を持つ人懐こい同室の同僚、世話焼きな家政夫、心配性の優しい軍医、ワケあり腹ペコ魔術師に囲まれ、慣れない異世界で悪戦苦闘する青年のお話。 ★1話と39話に挿し絵追加 ★カクヨム掲載作品を加筆修正 ★2024/09/06〜ホトラン入り感謝!

余命3ヶ月、、たけどあなたに出逢ってしまった

山本未来
ライト文芸
乳がんで余命3ヶ月と宣告された だけど明るく生きる決意をする 命ある限り好きな事をしよう、、 そして出逢ってしまった 大切な人と、、

光のもとで1

葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。 小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。 自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。 そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。 初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする―― (全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます) 10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。

この夢が醒めるまで──図書室から始まる恋の物語

蒼村 咲
恋愛
読書好きの高校一年生、富永香乃。香乃はある日の放課後、いつものように訪れた図書室で見かけた男子生徒にひとめぼれしてしまう。その正体は図書委員長である三年生、佐伯和斗だった。思い切って話しかけてみる香乃。けれどどうやら彼には何か事情があるようで──…。 ※更新は不定期です。 ※『この夢が醒めるまで──図書室から始まる恋の物語』は仮題です。

佰肆拾字のお話

紀之介
ライト文芸
「アルファポリス」への投稿は、945話で停止します。もし続きに興味がある方は、お手数ですが「ノベルアップ+」で御覧ください。m(_ _)m ---------- 140文字以内なお話。(主に会話劇) Twitterコンテンツ用に作ったお話です。 せっかく作ったのに、Twitterだと短期間で誰の目にも触れなくなってしまい 何か勿体ないので、ここに投稿しています。(^_^; 全て 独立した個別のお話なので、何処から読んで頂いても大丈夫!(笑)

羊の夢で恋をする

うたた寝
ライト文芸
羊(よう)には美月(みづき)という好きな女の子が居た。 しかし、告白された経験が0の羊に対し、美月は入学以来告白されない日が無いというほどのおモテっぷり。 高嶺の花過ぎて告白なんて以ての外。アピールだってロクにできやしない。名前や顔を認知してもらえているのかも怪しい羊にできることなんて、精々告白が成功しないようにと呪いながら美月が男子生徒に告白されている風景を遠くから双眼鏡で眺めるだけであった(こーわっ、というクレームは今現在受け付けない。論点はそこではないのだ)。 告白しないの? と疑問に思うかもしれない。逆に聞こう。フラれると分かっていて告白なんてできるだろうか? いや、ケジメのためにする人も居るだろうが羊はそういうタイプではない。 フラれて傷付きたくない、というのもあるが、それ以上に、フラれることによってこの恋を終わらせたくない。美月のことを好きで居られ、ひょっとしたら付き合えるかもね、という希望がゼロにはならない、この楽しい片想いを続けていたいと思っている。 もちろん、羊が告白して玉砕されずとも、美月が誰かの告白をOKして交際を始めてしまっても羊の片想いは自動的に終わるわけだが、幸か不幸か、美月は今のところ全ての告白を断ってくれているおかげで羊の恋は終わらないでいられる。 寂しいと言うべきか、楽しいと言うべきか、叶わずとも終わらない恋を羊は続けていた。 そんな恋が今、望む望まないに関わらず、少しずつ動き出そうとしていた。 きっかけは、商店街で出会った謎のフードの人物。 この人物と出会ってしまったのが運の尽き。 この人物と出会ってしまったがためによく分からない方向へと話が巻き込まれていく。 ただ片想いを楽しんでいただけなのに。何でどうしてこうなった? これは片想いを楽しんでいたハズの少年が巻き込まれたちょっと特殊な物語。

世界はスキッピー

misuka
ライト文芸
しょーもないけど笑える毎日に生きている

さつきの花が咲く夜に

橘 弥久莉
ライト文芸
国立大学の教務課で働く桜井満留は、病床 に臥す母親を抱えながらひとり、鬱々とした 日々を過ごしていた。余命幾ばくもない母の ため、大学と同一敷地内に隣接する国立病院 に泊まり込みで看病をしていた満留は、ある 夜、お化けが出ると噂のある中庭で一人の 少年と出会う。半年前に亡くなった祖母を 想いながらこの中庭によく足を運ぶのだと話 をしてくれた少年、満に、自分と同じ孤独を 垣間見た満留はひと時の癒しを求め中庭で会 うように。 一方、大学でタイムマシンの原理を研究し ているという風変わりな准教授、妹崎紫暢 ともある出来事をきっかけに距離が縮まり、 意識するようになって……。 誰とでも仲良くなれるけれど「会いたい」 「寂しい」と、自分から手を伸ばすことが 出来ない満留はいつもゆるい孤独の中を 生きてきた。けれど、母の手紙に背中を 押された満留は大切な人たちとの繋がり を失わぬよう、大きな一歩を踏み出す。 勇気を出して手を伸ばした満留が知る 真実とは?  母娘の絆と別れ。親子のすれ違いと再生。 異なる種類の孤独を胸に抱えながらもそれ を乗り越え、心を通わせてゆくヒューマン・ ラブストーリー。 ※エブリスタ新作セレクション選出作品。 2022.7.28 ※この物語は一部、実話を交えています。 主人公の母、芳子は四十九歳の若さで他界 した作者の祖母の名であり、職業こそ違う ものの祖母の人生を投影しています. ※この物語はフィクションです。 ※表紙の画像はミカスケ様のフリーイラスト からお借りしています。 ※作中の画像はフリー画像サイトpixabayから お借りしています。 ※作中に病気に関する描写がありますが、 あくまで作者の経験と主観によるものです。 ===== 参考文献・参考サイト ・Newtonライト3.0 相対性理論 ゼロからわかる相対性理論入門書 ・タイムマシン、空想じゃない 時空の謎に迫る研究者 https://www.asahi.com/articles/ ASNDS2VNWND2PISC011.html ・日本物理学会 https://www.jps.or.jp/books/gakkaishi/ files/71-09_70fushigi.pdf ・メンタル心理そらくも https://sorakumo.jp/report/archives/125

処理中です...