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2 影の役割
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しおりを挟む「当主名代を引き受けられるとき、お約束しましたよね?」
「………はい」
「絶対に無理はしない。國陽様に心配はかけない。ご両親が心配になられることもしない。そして――」
「自分をないがしろにしない、でしょ? 憶えてるよ」
「ならば相談相手くらいさせてください。これでも優大様より長く生きているのです。年上の言うことも聞いておくといいことありますよ」
……確かに結菜さんは年上だし、実力で当主補佐の地位を手に入れた猛者だけど。
「でも結菜さん、國陽が結婚したら斎月の方に行っちゃうんでしょ?」
俺の返しに、結菜さんは眉をはねあげた。
「それは――」
「斎月が司で一番信頼を寄せているのも結菜さんだってことくらいは、知ってるよ」
斎月は、司の本家に花嫁修業で滞在していたことがある。
そのとき斎月のお世話係を國陽から任されて、二人が結婚したら斎月付きにしてほしいと、結菜さんから願い出たと聞いている。
斎月は倭(やまと)家の姫君。
深窓の令嬢……ではないけど、気品の高さはお墨付きだ。
結菜さんはもともと、分家の分家の立ち位置から、実力で國陽の側近の場所を手に入れた実力者。
これからも当主秘書としてやっていくのだろうと思っていたけど、斎月に間近で接して、その考えは変わったらしい。
國陽だけでなく、二人の役に立ちたい、と。
そんな國陽と斎月を大事にしている結菜さんを、斎月が心から信頼して、國陽からも頼りにされている結菜さんを、俺の私情に巻き込むのは気が引ける。
これは俺が必ず関わっていたことではない。自分から首を突っ込んだことだ――。
「優大様。帰ったらお話しましょう」
「………はい」
結菜さんににっこり微笑まれたのをバックミラー越しに見てしまった。
どうこう理由をあげても結局俺、この人には敵わないんだよなあ……。敗北。
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