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一
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しおりを挟む「ああ。一つ質問をいいか? 櫻さん」
「……櫻でいい。『さん』とかむず痒いわ」
「じゃあ、櫻。俺はまた、桜葉に逢えるのか?」
直球で氷室が訊いてきた。櫻は落ち着いたものだ。淡々と答える。
「逢える、という表現はこの場合成立しないな。お前が桜葉の姿を見ることは出来るし、声を聞くことも出来る。だが、桜葉がお前の姿を見ることや声を聞くことは出来ない。桜葉が認識するのはあくまで人間の体の《冬森氷室》だから、お前は一方的に彼女を見ることしか出来ない。……どうする?」
「…………」
「決定権はお前にある。このまま幽鬼でいることは出来ないから、幽霊となるか鬼として俺のようにこの世に留まり続けるか、意識が回復するかしないかわからない身体に戻るか。それとも、秀才の頭でそれ以外の道を選ぶか……。俺がお前を幽鬼としてここに留めていられるのはせいぜい七日といったところだ。その間に選べよ」
「……櫻」
「何だ?」
「俺が訊くことに、正直に答えてくれるか?」
「ん? まあ……答えられることならな。嘘吐く理由もねえし」
「櫻は……その姿は自分で望んだものなのか? 俺のように人間から鬼になったのか?」
「いや、俺は、元が何かはわからん。開闢(かいびゃく)の瞬間(とき)に生まれた何かだった。ただずっと漂い続けて、いつの間にか人間が俺を鬼と呼んだんだよ。だから、人間だったことはない」
「岬先生は……何者だ?」
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