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6 残滓

side黎10

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「兄貴っ? だから俺はそういうのは――」

「架。黙っていなさい」

誠さんに制されて、架は立ち上がりかけていたのを退いた。

今度は美愛さんが腰を浮かせた。

「レイ……桜城の名を、マコとおそろいのものを捨ててしまうの?」

美愛さんは、正式に誠さんの妻ではない。

桜城内部では長男の母で当主妻として認められているけど、対外的にはその位置は弥生さんのものだ。

『桜城美愛』という名も、戸籍上は名乗れない。

まだ、『ミーア・ウォルフシュタイン』が、美愛さんの正式な名前だ。

美愛さんは誠さんのことを、愛称で『マコ』と呼んでいる。

その呼び方を聞いてドキッとした。

今の今まで失念していたけど、真紅と同じだった。

真紅……。

俺には、その子だけ。

「……恋い得る(こいうる)人がいます。その子の傍にいてやりたいんです」

自分と真紅は、多分出逢ってはいけない者同士だったのかもしれない。

でも出逢ってしまったし、触れてしまった。

逢いたいと、思ってしまった。

今は、逢いに行きたい。

「そのために桜城であることは邪魔である、と?」

「……はい」

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